大晦日

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今年最後の更新です。

 

本年も皆様には大変お世話になりました。

COEDOにとっても私にとっても良い一年でありました。

なんとなく平和に過ごせたかなとは思いますが、仕込みの記録などを見返してみると夏は壮絶だったようです。

来年はますます忙しくなりそうな予感。

どうぞ来年もCOEDOを宜しくお願い致します。

良いお年を。

 

2013年12月31日

COEDO BREWERY

醸造主任 植竹大海

December 31st, 2013 雑記

2013年を総括その2

今年で一番大きな出来ごとと言えば、やはりサンディエゴへ行けたことでしょう。

 

DSC_3089

 

 

ビールを目的に海外に行ったのは初めてでした。

醸造技術に関してもBallast Pointとのコラボレーション以降、明らかに向上したと思っています。特にホップの使い方に関しては。恐らくこの先もずっとBallast Pointは”師”であり続けるブルワリーだと思います。

またサンディエゴ滞在がきっかけでCoronado Brewingとのコラボレーションも実現でき、それ以降も色々な話が連鎖的に進み、この先ますます面白くなりそうです。

 

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サンディエゴに滞在してから、自分の中でもクラフトビールに対する考え方というか目標が変わりました。

渡米前は単に「美味しいビールを造りたい」ということばかり考えていましたが

サンディエゴのクラフトビールの盛り上がりを肌で感じてからは単に美味しいビールを造るだけでなく

クラフトビールという文化を日本に根付かせたいと強く思う様になりました。

クラフトビールが特別なものではなく、生活に自然に溶け込んでいる。どんなレストランに入ってもクラフトビールが置いてある。そんな状況のサンディエゴが羨ましくて仕方なかったです。

日本サンディエゴ化計画の第一歩は美味しいビールを造る事ですよね。

来年も精進します。

 

 

続いて限定ビールのお話。

今年は結構造りましたね。

サンディエゴやノースアイランドさんで造ったものを含めると・・・

Hoppy Wind、East to West IPA、The 1st Imperial Pilsner、Imperial IPA、Belgian White、COEDONADO

これだけ造りました。

これらのうちBelgian Whiteだけは植竹レシピではありません。後輩が頑張ってレシピを書き、COEDOビール祭り限定ビールとしてリリースされました。お疲れさん。

で、残りの植竹レシピのビールを見てみると見事に全部ホッピーなビールばかりですねぇ。

来年もこのままホップをぶち込むスタイルでやっていきたいと思います。どうぞよろしく。

 

今のところのスケジュールでは、来年も今年と同様に春と秋のけやき用に限定ビールを造る予定です。

それからもちろんCOEDOビール祭り用にも。

あとはタンクの余裕を見てもういくつか仕込めればなと思っております。思っているだけで確定ではないですが。

挑戦したいスタイルもあるのでなんとか頑張りたいなー。

 

 

最後に来年の目標。

これはあまり今年と変わらないです。

しっかりと品質を安定させること。これが一番の目標です。

それから「面白いこと」を継続していくこと。イベント、限定ビール、ブログなどなど。

続けていればいい事あるさ。

 

それからビール造りとは関係ないですが、お世話になった方々に挨拶に行くこと。

挨拶出来るうちにしておかないと、一生出来なくなるということを身にしみて感じた1年でもありました。

来年はそういう後悔が無いように、思い立ったらすぐ実行を心がけようと思います。

 

さて、このブログの更新も今年は残すところ31日の1回のみです。

31日の内容はそれほど大したものじゃないと思いますが。

また来年もマニアックにやっていこうと思いますので、どうぞ読んでやってください。

御感想もお待ちしております。

December 27th, 2013 雑記

2013年を総括その1

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師走ですね。というかクリスマス・イヴですね。

クリスマスらしい写真ないかなーとiPhone内を探してみましたが、唯一見つけたのがこの写真でした。

なんと3年前の写真です。それ以降、クリスマスらしい写真がなし。

どうも例年「クリスマス?なにそれ?」というような生活をしているようです。

 

まぁ、そんなことはどうでもいいんです。

身の回りで飛び交いまくっている言葉ですが、1年早いもんですね。

1年ももうすぐ終わりということで、2013年を自分なりに総括してみます。

 

まず今年最大の目標としていた「製品の安定性」について。

忙しくなるにつれて、どうしても出てきてしまう製品のブレ。これを如何にして最小限に抑えるかというのを1年かけて、というよりは昨年の秋以降から試行錯誤してきました。

自分で言うのもナンですが、なかなか良かったのではないでしょうか。

夏の繁忙期にも常に合格ラインを越えるレベルで安定させられていたのではないかと思っています。

製品を安定させるということは、裏を返せば「どの部分でブレが出ているのか?」を探っていく作業でした。

テイスティングをする時も常に粗探し。ちょっと気になるところが見つかると、全てのビールでその粗が見えてしまって、一時期ノイローゼになるかと思うほど悩んだりもしました。

しかし定石も固定概念も捨て去り色々な事を試してみましたので、経験値が非常に増えましたよ。

もちろん改善の余地は常にありますので、これからも安定化に向けた試行錯誤は続けて行きます。

 

今まで日本のクラフトビールにおいては、あまり安定性ということが重要視されていなかったように思います。

しかしクラフトビールを飲んでいる方々はもう気づいているはず。「あれ?」が増えている事を。

クラフトビールブームと言われている昨今ですが、もし雑誌などを見てクラフトビールに興味を持った方が初めて飲んだ1杯が「あれ?」だったら。きっともうその人は2杯目を飲む事はないでしょう。

クラフトビールは決して安くないものです。

1パイント1200円ならば、1200円以上の満足を提供しなければあっというまにブームは終わり「そいういえば一時期クラフトビールって流行ってたよね」状態になってしまいます。

ですからまず提供の第一歩、しっかりとしたものを造るという大前提をもう一度突き詰めた一年でした。

 

年明け早々に、さらなる安定化のための動きもあります。

今年より来年、さらに再来年とつねに進歩を続けたいものです。

 

その2へ続く

December 24th, 2013 雑記

マニアック過ぎる原料解説 Malt Vol.1 Sour Malt

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ホップの解説ばかり続いたのでモルトの解説もいたしましょう。

今回のテーマはSour Maltです。

 

Acid Malt、Acidulated Maltなんていう呼ばれ方もしますが、同じようなモルトを指しています。

実はこのサワーモルトは他のモルトとは使用する目的は大きく異なるのです。

 

当然のことながら麦汁の味というのは、モルトの配合によって大きく変わります。

カラメルモルトのように甘味をつけるモルトもあれば、ミューニックのようにモルト感を増す為に使用するものなどなど、様々な種類のモルトがあり、ブルワーはそれらを配合することによって狙った通りの味わいに仕上げて行きます。

サワーモルトはAcidやSourという語が示す通り、酸を、具体的には乳酸を含んだモルトで非常に酸っぱいものです。

しかし使用する主な目的はマッシュのpHを下げるため。酸味をつける為ではありません。

つまり直接的にビールの味に関わるモルトではないのです。

 

アルカリ度やpHの高い水を使用すると、粉砕したモルトとお湯を混ぜただけでは最適なpHにはなりません。

マッシングの時の至適pHは5.1~5.5と言われていますが、これは各種酵素の働きを考慮した数値です。

この値から外れてしまうと酵素が上手く働かず、糖化不良をおこしてしまうことがあるのです。

また煮沸時などにも最適なpHがあり、各工程でもっとも好ましいpHへ調整するため、マッシュのpHを最適な値へ調整することはビール醸造において非常に重要なことなのです。

 

乳酸を含むと前述いたしましたが、これはモルトを乳酸菌で醗酵させて造られるからです。

なぜそんなことをするのかというと、実はこれにはドイツのビール純粋例が関わっています。

ビール純粋例はビールは麦芽、ホップ、水、酵母以外の原料を使用してはいけない、というドイツの有名な法律ですが、サワーモルトはこの法を掻い潜るために生まれたものです。

要するにドイツのブルワー達もpHを調整する為にマッシュに酸を加えたかったのですが、そのまま単純に乳酸などを加えてしまうとビール純粋例に抵触してしまうので、わざわざモルトを乳酸発酵させて使用したのです。

 

つまり、ある意味では直接乳酸やリン酸を添加してpHを調整するのと効果は変わらないとも言えます。

ではなぜCOEDOではわざわざサワーモルトを使用しているのかというと・・・ドイツへのリスペクトですかね。

COEDOはドイツ人のブラウマイスターに醸造を教わった歴史がありますので、そのころからサワーモルトを使用していました。その伝統が今でも続いているだけです。

サワーモルトを使用して良好な結果が出続けているので、わざわざこれを変える必要もないと思っています。

 

さて話がやや逸れましたので元に戻しましょう。

サワーモルトの使用方法は単純で、他のモルトと同じように粉砕してマッシュに加えるだけです。

元々がモルトですから、糖化すればやや糖分なども得ることができます。

使用量はトータルモルト量の5%までが適切と言われています。

ドイツのモルトメーカーWeyermannによると1%使用するとpHを約0.1下げられるそうですが、これは水質や他のモルトによって変わると思うので大体の目安にしかなりません。

何度か実験して最適な量を見つけ出すことが重要です。

 

さて、そんなサワーモルトですが、実は近年少し変わった使い方をされるようになりました。

それはサワービールへの使用です。

先ほど「直接的にビールの味わいに関わるモルトではない」と書いたのですが、はい、それは嘘です。

乳酸発酵させたモルトですから当然とても酸っぱいのですが、この酸味を利用して酸っぱいビールを造る為に使用されはじめたのです。

 

アメリカで大流行のサワービールですが、作り方は様々です。

今回は詳しい解説はしませんが、麦汁に乳酸菌を加えて醗酵させる方法や、マッシュ自体を乳酸発酵させるサワーマッシングなどなど、色々な方法で造られます。

サワーモルトを使用してサワービールを造る利点は、なにより作業が簡単なことです。

乳酸菌は通常ビールにとって大敵ですから、ブルワリー内で乳酸発酵をさせることはとてもリスキーなことなのです。

またサワーマッシングには単純に長い時間がかかります。

 

対してSour Maltは乳酸発酵させているものの、高い温度で乾燥させているので乳酸菌はすべて死んでいます。

ですから乳酸菌汚染の心配はありません。

使用方法も他の麦芽と混ぜて仕込むだけと、とても簡単。

その為、割と多用されるようになっているようです。

 

Sour Maltを使用して酸っぱいビールを仕込むときは上限10%くらいの使用量を目安にするようです。

恐らくそれ以上使用するとpHが下がり過ぎてしまい、糖化が上手くできないからでしょう。

やはり強い酸味を出す為には乳酸菌での醗酵が不可欠です。

本格的に酸味の強いビールを造る為というよりは、やや酸味を帯びたビールを造るときに使用するほうがより適切な使い方だと思います。

スタイルとしてはベルリーナ・ヴァイセなんかに向くようです。

 

COEDOでは今のところ本来の使用目的、つまりpH調整でのみサワーモルトを使用しています。

これから先、酸っぱいビールを造る機会があればサワーモルトを用いた手法も試してみたいと思います。

 

December 20th, 2013 マニアック過ぎる原料解説, モルト

日々考えていること モルトの粉砕 その2

__     今回ははじめに、いかにして「我儘な粉砕」を実現するかを解説したいと思います。 我儘な粉砕というのは「殻皮は大きく、胚乳は小さく」というある意味矛盾する粉砕です。   まず粉砕方法は大きく3つに分けられます。 乾式粉砕、湿式粉砕、微粉末粉砕の3つです。 正確にいうと湿式粉砕はさらに加湿と湿式に分けられるのですが今回はまとめています。   このうち微粉末粉砕というのは平たいはなし殻皮諸共、粉微塵に粉砕する方法です。 あれ?と思った方、するどい。そう、粉末になるまで粉砕してしまうとロイター方式で麦汁濾過ができないのです。 つまりロイター方式以外での麦汁濾過方法があるということです。これはロイターのお話のときに詳しく。 今回はロイター式での麦汁濾過を前提として話を進めているので、微粉末粉砕のことには触れません。 まぁ、微粉末粉砕だと表面積が最大になりますから、糖化効率が他の粉砕方式よりかなり高く…(以下略)   続いて乾式粉砕です。 これは単純に麦芽をそのまま粉砕する方法です。シンプル。 対して湿式粉砕というのは、麦芽にやや水分を含ませてから粉砕する方法です。 詳しい解説をする前に、まず麦芽の粉砕機(以下モルトミル)の写真をご覧ください。   3       COEDOで実際に使用しているモルトミルの写真です。 中央に見える2つのローラーが回転し、押しつぶすようにモルトを粉砕していきます。 ローラー間の幅は調整でき、隙間の大きさによって粉砕の具合が変わります。   余談ですがこの隙間の調整が高難易度で、目盛なんかないので 隙間の大きさを計る謎の道具と手の感覚で調整していきます。結構職人技だと思います。   話が逸れましたが、乾式粉砕と湿式粉砕を比べてみましょう。 モルトをそのまま粉砕する乾式粉砕では、モルトの殻皮が乾燥していますから脆い状態です。 力が加わると割れてしまい、殻皮が細かくなりやすい粉砕方式と言えます。 これを回避するために、多段ローラー式の粉砕機があります。 先ほどの写真は2ローラー式の粉砕機ですが、4ローラーや6ローラーのものもあります。 上の段から徐々にローラーの隙間を細かくなるように調整し、複数回に分けて粉砕することで殻皮を大きく残し、胚乳を細かく粉砕することが可能となります。なんとなくイメージできますか?   対する湿式ですが、粉砕する前に麦芽に少し水分を含ませ殻皮をしなやかな状態にします。 すると粉砕ローラーを通過するときに、殻皮が砕けず、胚乳のみ押しつぶされるような形で粉砕されます。 ちょうど枝豆をさやからプチっと出すときのようなイメージです。   COEDOでは通常乾式で麦芽の粉砕を行っていますが、試しで湿式に調整したことがあります。 約600キロのモルトに霧吹きで水分を加えながら粉砕するという、苦行としか思えない人力湿式粉砕でしたが、効果は歴然でした。あまりの違いに驚いたことを覚えています。 濾過もスムーズ、収量も申し分なしと良い事づくめでしたが、最大の問題は手間でした。 現実的には霧吹きを粉砕の度にシューシューする訳にもいかず、現在は乾式で粉砕しています。 いつか比較の写真を載せる為にもう一度トライしましょう。   当然のことながら、ちゃんと湿式粉砕ようのモルトミルがあって インラインで水分調整してくれるようになっているんですよ。 人力湿式粉砕なんていうことは普通やりません。   さて、こんな風に書くと2ローラー乾式粉砕がダメダメなように思えてしまうかもしれませんが きちんとモルトミルを調整できていれば、全く問題なく良好な粉砕が行えます。 冒頭の写真をみてください。粉砕された麦芽の写真ですが大きな殻皮(Husk)、中くらいの粗粒(Grits)、そして粉末(Flour)と別れているのが分かるかと思います。 これをそれぞれ適切な割合になるように粉砕機を調整することが重要です。 細かすぎても、粗すぎても良くありません。 どの程度の割合が最適かというのは麦汁濾過の方式や仕込むビールによって異なるので一概には申し上げられないのですが、大体 Hust 15%、Grits 75%、Flour 10% あたりを目安にします。   ちなみにCOEDOでは、標準よりもやや粗めに粉砕を行っています。 その理由は殻皮の表面積を減らすことと、ロイター時間の短縮を狙ってのことです。 前回述べたように、殻皮からはポリフェノールなど雑味の原因となる物質が溶出するのです。 溶出は表面積が大きい、つまり殻皮が細かいほど、また湯に浸かっている時間が長いほど進みます。 例えるならお茶と一緒です。 茶葉を細かく砕き、長時間お湯に晒せば渋味が強いお茶になることが想像できるでしょう。   粗く粉砕することで表面積を少なくし、ロイターも早くなるという二重の効果で 殻皮からの雑味成分の溶出を最小限におさえています。 これも綺麗な味のビールを造るテクニックの一つです。   しかし先に述べたように、粉砕が粗いと収量がどうしても下がってしまうのです。 これはもう如何ともしがたいので、気にしない事にしています。 収量を犠牲にして、そのぶん綺麗な麦汁を得ているのです。ヒュー!贅沢!!   いかがですか?粉砕の重要性を分かっていただけたでしょうか? 実際には使用する麦芽の種類や、ロットの違いによって麦芽の粒の大きさは異なります。 日々微調整をしながら適切な粉砕を行うことが、良い仕込みの第一歩です。   仕込み方や原材料の種類に比べ、触れられる機会の少ない事柄ですが 知っていても特に得はしません。ナンパのネタにも使えません。 でも今までよりちょっとだけ、ビールへの愛着が増すかもしれません。   それではまた次回をお楽しみに。

December 17th, 2013 モルト, 日々考えていること

日々考えていること モルトの粉砕 その1

2

 

 

モルトの粉砕という、超が付くほどニッチな話題に触れてみたいと思います。

この話題、1回で書ききるはずが、あまりにも長くなってしまったので2回に別けたいと思います。

 

改めてご説明する必要もないと思いますが、主なビールの原料は麦です。漢字で書くと麦酒ですしね。

正確に言えば「麦芽化した二条大麦」となります。

小麦や麦芽化していない麦、六条大麦も使われますが、メインは殆ど麦芽化した二条大麦です。

 

さて、この大麦ですがなんと1万年前にはすでに人の手によって栽培されていたそうです。

永らく主食として重宝されてきましたが、現代では小麦にその座を奪われています。

詳しいお話は割愛いたしますが、小麦と違い大麦はグルテンを形成しないので

加工性に乏しく、麺類、パン等に加工しまくれる小麦の方が現代のニーズにマッチしているというわけです。

現代においては、ビールの原料や飼料としての用途がほとんどのようです。

 

大麦は堅い殻皮を持っているのですが、そのまま食べると口当たりが悪く

殻皮を取り除く事が大麦を食する上で重要な工程となります。

これはもちろんビールにも当てはまり、殻皮を取り除くためのロイターという工程があります。

さて、ここからいよいよ本日の本題、粉砕に触れて行きます。

 

仕込みの一番最初の工程、粉砕。

文字に起こせば「麦芽を細かく砕く」という単純なことなのですが、非常に重要な工程なのです。

 

そもそもなぜ粉砕をしなければいけないのでしょうか。

主な理由を簡単に述べると麦汁を造る為です。当たり前ですけどね。

先ほど述べたように大麦は堅い殻皮をもっていますので、そのままお湯に浸しても酵素や澱粉が含まれる肝心の殻皮内部の胚乳部がお湯に触れないので、酵素が働かず、エキス分が抽出されないのです。

ビールの元となる麦汁を造る為に粉砕は必須の工程というわけです。

しかし、ただ粉砕すればいいというものでもないのです。

 

粉砕された麦芽はマッシュタンでお湯と混ぜられ、お粥のような状態(以下マッシュ)になります。

お湯に浸される事によって酵素が働き、麦芽中の各種成分の分解や、澱粉が酵素の作用により糖へと変換されていきます。これらは仕込みの主な目的ですが、今回の話題に関連して重要なのは、粉砕された麦芽は殻皮ごとお湯に放たれるということです。

ぶっちゃけてしまうと、麦芽の殻皮ってのはビールには不要なのです。

むしろ渋味、酸味などの雑味の原因になり、あまり長時間お湯につけておいてもいい事はありません。

そこで糖化が終わったら速やかに殻皮と麦汁を別ける必要があるのです。この工程がロイターです。

 

 

 

1

 

 

こちらはその麦汁と殻皮を分ける工程で使用するロイタータンの写真です。

見ての通り、底にスリットの入った板が敷いてありますが、これはロイタータンの底から少し浮かせてあり、二重底のような構造になっています。スリットは殻皮が抜けない程度の細かな幅です。

ここへマッシュを入れるとどうなるでしょうか・・・?

ご想像通り、殻が板の上につもり層を形成します。この層を(Grain bed)グレインベッドと呼びます。

麦汁は液体ですからグレイベッドとロイター板のスリットを抜けて下へ落ちて行きます。

その過程でより細かな粒子やタンパク質なども濾過されて、クリアな麦汁が得られるわけです。

なんとなくロイターの原理はご理解いただけましたか?

ロイターにも語る事が山ほどありますので詳細はまた今度書くとして、重要なのはグレインベッドです。

 

なんとなく想像がつくと思うのですが、麦芽を粉砕する際に

殻皮まで粉々になるほど細かく粉砕してしまうと、ロイターの時にどうなるでしょう?

形成されるグレインベッドは非常に密なものとなり、麦汁がスムーズに通り抜けられません。

こうなるとロイターの時間は増大し、麦汁の酸化、殻皮から不要な成分の溶出、収量の低減、ブルワーの帰宅時間が遅くなる、「毎晩毎晩夜中まで仕事して、家族と仕事どっちが大切なの!?」、「もうあなたにはついていけけません。離婚してください。」というようにビールの味に悪影響を及ぼすに留まらず、夫婦間の危機を引き起こすなど、デメリットが沢山です。

また、あまりに細かすぎるとスリットの間を抜けてしまい、そもそもグレインベッドを形成できません。

 

では逆に、殻皮が大きく残るように粗く粉砕したらどうなるでしょう。

先ほど述べたように粉砕の非常に大きな意義はお湯と触れさせ糖化を進行させることなのですが

粉砕が粗すぎると胚乳部分も大きなまま残ってしまい、お湯と触れる表面積が少なくなってしまいます。

そうなると上手く糖化が進行せず、得られる麦汁が少なくなってしまうのです。

また、グレインベッドが粗くなりすぎ、本来濾過したい成分まで麦汁と共に抜けてきてしまい、綺麗な麦汁が得られにくいというデメリットもあります。

 

以上の様な理由からビール醸造においては

「殻皮は大きく、内部の胚乳は細かく」粉砕するのがもっとも都合が良いのです。

そうすれば、糖化効率はバッチリ、ロイターも早く、高収率、家庭円満と良い事づくめです。

「美味い、早い、安い」みたいな。ちょっと違うか。

とにかく家庭の平和の為にもそんな我儘な粉砕をしたいのです。

 

その2へ続く

December 13th, 2013 モルト, 日々考えていること

Brewingのお勉強

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今日は最近よくいただくご質問にお答えしたいと思います。

その質問とは 「どこでビール造りを勉強したのか?」 です。

ブルワーになりたい学生が増えているようで、イベント等でちょいちょい聞かれます。

 

まず結論から申し上げると、どこかでビール造りを勉強した経験はありません。

ビールの造り方を知ったのはCOEDOに入社してからです。

そもそも日本にビールの造り方を教えてくれる学校なんてありません。

醸造に関する勉強ができる学校はありますが、ビールに特化した学部というのはないはずです。

諸外国にはビール造りを学ぶ専門の学部がありますが、日本はまだそいういった学部はありません。

なにしろ小規模醸造が解禁されてから20年も経っていませんし

学部が出来るほどの需要がないってのが本当のところでしょう。

 

少し自分の話をさせて頂きますね。

実は自分のバックグラウンドは生化学、微生物学です。

バイオテクノロジーの専門学校に通い、生化学や微生物の扱いを学びました。

ですから、割と学生時代勉強していたことと直結した仕事をしている訳ですね。

 

ただ決してバリバリと理系の勉強をしてきたわけでもありません。

実は私、高校を1年程で中退しているので(悪い事をして強制退去になったわけではありませんよ!)

本格的な理系の勉強というのは専門学校に入ってからが初めてでした。

最終学歴が専門学校卒ですので、当然大学院へ進学したり、博士号を持っていたり、ということもありません。

基本的な生化学や微生物の知識を専門学校で学んだだけです。

 

とはいえ、学校で学んだ知識は仕事上で非常に役に立っています。

以前、自分のスタイルは「徹底した計算」と書いた気がしますが

それはバックグラウンドが影響しているのだと思います。

生化学の実験なんかは、ビール造りとは比べ物にならないほど丁寧に緻密に行いますからね。

教えていただいた先生方には感謝、感謝なのです。

 

バックグラウンドは以上です。

ここから先が本題ですが、答えはもう冒頭の写真に出ております。

外国から取り寄せた本を読んで自分で勝手に勉強しました。

逆に言えば、写真の本を読めば植竹が持っている程度の知識はつけられるということ。

 

便利なもので、今はネットで簡単に外国の本も購入することができます。

残念ながら英語で書かれていますが、それは仕方ありません。頑張って読みましょう。

今現在日本語で書かれたビール醸造の本で、クラフトビールに特化したものは存在しません。

残念ながらクラフトにはクラフトのノウハウがありますので、観念して英語を読んだ方が早いです。

 

まず1冊目にオススメなのは The Brewer’s Apprenticeです。

Apprentice = 見習い ですから、本当に初歩的なことが丁寧に書いてあります。

ちなみに著者はStone BrewingのCEO Gregです。

有力なブルワリーのブルーマスターへのインタビューが掲載されており、読み物としてもGood。

初歩的な事といっても、日本語では手に入らない知識ばかりですし

しっかり読み込めば、もうそれだけでBrewingの基礎知識はバッチリな程の情報量です。

 

あとはもう、お好きな本を好きなだけ読めばよいと思うのですが

もう1冊、お勧めなのはThe Oxford Companion to Beerですかね。

著者はBrooklyn breweryのGarrett Oliverです。

こちらは本というより辞書と言った方が良いでしょう。

ひたすらに細かい文字でびっしりと情報が書いてあります。

自分は何か疑問を持ったらまずこの本を開きます。そして、大抵の事は解決します。

Kindle版もありますので、大きな重い本を持ち歩きたくない方にはお勧めです。

 

というような感じでBrewingの勉強してきました。

自分がたまにブログで書いているような知識や技術は殆ど本で手に入る物です。

興味のある方は読んでみてください。飲み手としてもレベルが上がりますよ。

 

ちなみに「どこで英語を勉強したのか?」とも良く聞かれますが、まず自分は英語は全然ダメです。

本を読むときは辞書をひきながら読んでます。

話している時は「出来る」風に見えるようですが、ハッタリの適当英語です。

それでも、まぁ、一人でアメリカをブラブラ出来るくらいはなんとかなるようです。

 

幸いなことに日本のクラフトビールシーンには外国の方がたくさんいます。

ビアパブに行けば大抵1人か2人くらいは外国の方がいるのではないでしょうか。

間違えを恥ずかしがらずに、そいういう方々と英語で話していれば自然と身に付くもんです。

冗談ではなく、自分はそうやって英語に慣れました。

 

という訳で、本日の結論は

Brewingの知識を得る為には英語が必要で、英語の勉強をする為には外国の人と話すのが手っ取り早くて

その為にはビアパブに行ってビールをじゃんじゃん飲めば良いということですね。

酔っぱらえば恥も忘れてどんどん喋れます。

飲めば良いじゃん!それではまた次回!

December 10th, 2013 雑記

ひとえにシングルホップと申しましても

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写真はおなじみMikkellerのシングルホップシリーズ。ちょっと古い写真ですけどね。

さて、シングルホップと聞いて何を思い浮かべますか?

 

シングルホップというのは早い話1種類だけのホップを使って造られたビールです。

ビールのスタイルはなんでもよくて、IPAだろうがペールエールだろうが1種類のホップで作られていればシングルホップIPAやシングルホップペールエールという具合です。

 

クラフトビールが浸透するにつれ「より複雑に」「より斬新なものを」とやや過熱傾向にあり

そういった風潮へのカウンターとして、流行とまでは行きませんが割と造られるようになっていると思います。

 

さらに進化してSmaShなんていうジャンルも出て来ています。

SmaShはSingle malt、Single hopの略で、つまり1種類の麦芽と1種類のホップで造られるビールです。

シンプルな原料でいかに複雑な味わいを醸し出せるか、という新しいアプローチですね。

SmaShについては、またの機会に詳しく取り上げる事にします。

 

さて、このシングルホップのビール。実は大きく2つに分けられるのをご存知ですか?

シングルホップなんだから分けられるもなにも・・・とお思いになるかもしれませんがはっきりと違います。

 

たとえばAnchor BrewingのLiberty AleとMikkellerのシングルホップシリーズ、Cascade。

実はどちらもCascadeというホップだけで造られているのです。

同じシングルホップですが、この2つのビールの大きな違いはなんでしょう?

 

答えはMikkellerは「ホップの違いを楽しむため」、Anchorは「味わいを追求した結果」のシングルホップという点です。

Mikkllerはシングルホップシリーズを沢山出している事からも分かる通り

シンプルにホップを使って、そのホップの個性を分かりやすく楽しむ、というコンセプトで造っています。

さらに言えば数種類並べて飲み比べすることも想定しているでしょう。

対してAnchorは味わいを追求していたら、結果的にシングルホップになったという雰囲気です。

 

設計の段階でコンセプトが違う訳ですから、当然楽しみ方も異なるはずです。

ホップの違いを楽しむためのシングルホップなら、ホップの香りや味わいの違いがしっかりと感じられる事が重要であって、ビールの完成度そのものはあまり問わないはずです。

(とはいえ、ビールとしての完成度が低いなんていうのは問題外ですが)

対して、結果的にシングルホップになっているビールは、ずばりそのまま美味しいかどうかが重要です。

 

余談ですが、私はMikkellerのシングルホップシリーズは良く飲んでいます。

使った事が無いホップのアロマを確認するのには、シングルホップを飲むのが一番手っ取り早いです。

様々な要因がありますがホップをそのまま嗅いだ匂いと、ビールに使った時の香りは異なるのが普通です。

ホップの個性をよりリアルに感じる為には、当然のことならがビールになった状態の方が都合が良い訳で

自分でやらなくてもMikkeller師匠が造ってくれているので、ありがたく勉強させていただいているのです。

Thank you Mikkeller!!

 

というように、シングルホップも捉え方によって楽しみ方が全くことなるわけです。

本来意図された楽しみ方と違う捉えられ方をしてしますと「なんかイマイチだね」という事になりかねません。

飲む前に「これはどんなビールなのかな?」とちょっと考えてみると、もっと楽しくビールが飲めるはず。

 

実はCOEDOの定番ビールの内、2種類はシングルホップで造っています。

シングルホップの意図としてはAnchorと同じスタンスで、一番良い結果が出ているからです。

さて、どのビールがシングルホップで造られていて、どんなホップが使われているのでしょうね。

正解が知りたい方はビアパブで1パイントご馳走してください!

酔っぱらってポロっと教えてしまうかも。

December 3rd, 2013 0 comments 雑記

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