今更ですが逆説的IPAの解説

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ずいぶん久しぶりの更新となってしまいました。

ごめんなさい。

おかげさまで忙しい日々を送っております。

発売から少し時間が経過してしまいましたが、Paradoxical IPAのブルワー視点での解説をさせていただこうと思います。

ビールのスペックは毎度のことですが、公式のリリースをご参照いただくとして

植竹が何を考えてこのビールを造ったのかを解説していきます。

 

社内でも「パラちゃん」と呼ばれ大人気だったビールなのですが、Paradoxical IPAの特徴は何と言っても徹底的に”ドライ”でクリーンなこと。

ドライという表現、ビールではよくつかわれる表現ですがどのような意味かご存知でしょうか?

端的に言えば味わいが後にひかない、キレるビールのことをドライと表現します。

ではどのように造ればドライになるかというと、これは様々な要因があるので一概には言えないのですが

ドライさに関わる大きな要因として残糖度が挙げられます。

これはビール中にどれくらい糖分が残っているかを示す数値なのですが、これが低ければ低いほど甘みの少ないキレる味わいとなり、結果「スープゥアァドラーイ」となるわけです。

 

最初に載せた写真はビールの糖度を測っているところです。

1を指していますが、これは1%を意味します。この時点ではビールの残糖度が1%だったということですね。

実はこれ、まだ発酵中の写真でして、最終的には0.5%まで切れました。

この数値、実はかなり驚異的な数字です。

 

残糖度は酵母、初期糖度、仕込みによって変わります。

酵母は種類によってどれくらいの割合の糖分を食べられるか、能力が違うのです。

おおむね65%から高いもので85%くらいの糖分を食べることができます。この数値を発酵度と呼びます。

 

そして、もう一つ重要なのが初期糖度。

例えば初期糖度10%の麦汁を70%糖分を食べる酵母で醗酵させた場合、3%が残糖となるわけです。

酵母の発酵度は食べる”割合”ですので、極端な話同じ発酵度70%の酵母で初期糖度20%の麦汁を発酵させると、残糖は6%になります。つまり、初期糖度は高ければ高いほど、残糖も高くなるんです。

 

そして酵母には食べられる糖と食べられない糖があります。

仕込みの糖化工程で食べられる等をたくさん作ってあげれば発酵度の高いビールが

食べられない糖をたくさん作ってあげれば発酵度の低いビールとなるわけです。

このあたりは糖化の温度や時間でコントロールします。

これは簡略化したお話で、実際はもうちょい複雑だったり、実情と違ったりするのですが・・・。

 

さて、ではParadoxical IPAのスペックを見てみると・・・

初期糖度 14.5%

残糖度   0.5%

発酵度  96.5%

アメリカの中でも西海岸で作られるWest Coast StyleさらにSan Diego Styleはドライなことが特徴ですが、多くの場合2~3%程度は糖分が残っています。Paradoxicalがいかにドライかご理解いただけると思います。

 

さて、ではなんでこんなにドライなビールを造ったかをご説明しましょう。

そもそもIPAに限らずですが「苦みの強いビールは甘みも強くしてバランスを取る」という定石があります。

甘みと苦みは打ち消しあいますから、まぁ、その定石は一応正しいといえば正しいのですが

そもそもIPAなんて苦いものですら、わざわざその苦みを打ち消さなくても・・・という思いがありました。

そしてもう一つ重要なのは、高い残糖度はドリンカビリティを著しく下げるという特徴があるのです。

がぶがぶ飲めることだけがビールの良さではありませんが、植竹は「ドリンカビリティの高さ」というものを非常に重要視してビールを造っています。これは定番のビールも限定のビールもです。

 

徹底的にドライでクリーンに仕上げ、極限までドリンカビリティを高めたIPAを造ろう!というのがParadoxical IPAの設計思想そしてParadoxical = 逆説的という名前の由来です。

実はもうひとつ「Japanese Style IPAとはなにか?という問いに対する回答」という裏テーマがありました。

日本で好まれるビールの特徴はドライなこと。大手が造っているビールは、基本的にみんなドライな仕上がりです。

米やスターチを使用してボディを軽く仕上げるのがある意味で日本のビールの特徴ともいえます。

これは高温多湿の日本においては非常に自然な流れなはずです。

しかしクラフトビール業界においてはやや状況が違い、あまりドライという概念を取り入れたビールは多くありません。

 

American Style IPAやEnglish Style IPAの特徴はそれぞれの国のホップを使用することですが、日本原産のホップを使えばJapanse Style IPAかというと、ちょっと違和感を感じます。

色々考えてみたのですが、たどり着いたひとつの結論は”ドライ”でした。

どんなIPAがJapanese Styleになるのか、誰が決めるのか分かりませんが、植竹からの一つの提案ということで受け止めていただければ幸いです。

 

ホップはオールドスタイルなものを多く選択しました。

Cascade、Centennial、Chinookなど、ちょっと時代遅れな感じもしてしまうホップたちです。

実際のところ、新しい品種のホップはすごいのです。圧倒的なアロマ、インパクト。

もちろん植竹はこういったホップが大好きなのですが、逆にどうしてもホップの力に頼りがち。

それを断ち切って、ホップのポテンシャルを引き出すというのが今回自身に課した課題でした。

Simcoe、Amarilloも使っていますが、あくまでメインは時代遅れC3兄弟です。

ご感想はどんなもんでしょうか?

 

オフフレーバーをきっちり切る、雑味を拾わないというのは、もはや解説する必要もない植竹イズム。

いつもの通りです。

表記はアルコール度数7%なのですが、実際は7.7%ほどあります。

大人の事情で7%になっているのですが・・・。

それを感じさせずぐいぐい飲めるちょっと危険なIPA。

まだ在庫がございます。どうぞお店でお楽しみください。

 

October 2nd, 2014 リミテッドビール

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