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Brewery in Taiwan -23BREWERY-

TRANSPORTER BEER MAGAZINE No.11(2016)

2022年 11月 14日 10時 02分 投稿 802 Views

23BREWERY

世界に誇れるMADE IN TAIWAN のクラフトビールを!!

台湾でしか作れないビールを追い求め続けるアメリカ人のマットとブレット。二人は当時、台湾にあったホームブリュワーのコミュニティーで出会い、そこで意気投合した。バックパッカーで世界中を旅していたマットがこの地でビール造りを決意したのは今から3 年前のこと。現在、国内60 店以上で彼らのビールを楽しむことができるまでに成長している。クラフトビールをこよなく愛し、台湾への感謝とリスペクトから始まる彼らの航海はまさに今、始まったばかりである。気さくで時折アメリカンなジョークを交えながら23Brewery のヘッドブルワーのマットが自身のビール、そして台湾や世界のクラフトビールシーンについて話してくれた。

 もともとはアメリカのカリフォルニアで法律関係の仕事をしていたマット。仕事の合間や休日を利用し、趣味でホームブリューをしていた。地元ではごくごく一般的とも言えるライフスタイルがやがて彼の心をつき動かした。「毎日デスクに向かい、膨大な資料に囲まれた生活を一生送るのはごめんだ。もっとクリエイティブなことがしたい。ビールには無限の可能性がある。」そう考えたマットは当時の仕事を退職し、バックパッカーとして世界中を旅し、最終的に台湾で生活することにした。台湾人の人柄の良さと伝統と異国文化が混在した風土が決め手だった。

 23Brewery、この「23」という数字には彼らの理念が込められている。

 アメリカの BJCP (Beer Judge Certification Program)ではビールのスタイルを大きく23種類にカテゴライズしている。その23番目がスペシャルティという項目だったことからこの数字を選んだ。どのカテゴリーにも属さない、オンリーワンのビールを追及するという思いが込められた数字だ。「僕達はそういうビールを造り続ける使命がある」とマットは言う。ブルワリーの名前だけではない、彼らが作ったビールの中に、まるで王貞治の永久欠番を思わせるかのような「1」を背負ったビールがある。これは彼らが初めて世に送り出したビールであり、また台湾で一番美味しく、どこにも真似できない唯一のペールエールであるという彼の自信と挑戦を表した、言うなれば彼らの魂そのもの。現在「Pale Ale」 、「Natural Blonde」、「IPA」、「Nelson Saison」、「San Diego IPA」 の5種類の定番にサワービールやパイナップルやドラゴンフルーツを使った季節ビールをこの夏のリリースに向けて醸造している。そのどれもに自分の娘の様に愛着を感じているという。

 彼らは品質をとても大切にする。時折、日本人のような職人気質な一面も覗かせる。これまでブランドのプロモーションをほとんどせず、お金と時間のほぼ全てをビールの品質向上と新商品の開発に充ててきた。それが最近少しずつ結果に結びついてきたような気がすると語っていた。

 台湾において、美味しいクラフトビールを一般消費者が気軽に買える価格で提供することはできてはいない。しかし、クラフトビールは決して高級な嗜好品ではない。ローカルで大衆的な飲み物であり、そこに貧富の差は存在しない、色々な意味でフリーダムなお酒である。そこに壁があってはならない。現状、台湾においてクラフトビールとは、スタイリッシュでおしゃれな海外のお酒、流行に敏感で経済的にも恵まれたごく一部の人が飲んでいるに過ぎず、一般向けには伝統的なビールが別にあって、それらが混在していることは稀である。要するに多くの国のクラフトビールがそうであるように、台湾でもクラフトビールがローカルのローカルによるローカルのためのビールとして発展していかなければ、決して海外に認められるような魅力的なビールは造れない。クラフトビールを一時の流行で終わらせてはいけない。

 マットは言った、「僕らの過去のことをみんなよく聞いてくるけど、そんなこと聞いたところで面白いことは何一つないさ、だからこれからのことを話そうじゃないか。その方がよっぽど有意義だ」。とても前向きなこの言葉に好感が持てた。きっとこのマインドこそが23Breweryの原点なのだろう。

 最後に「僕らには目指しているクラフトビールがある。カリフォルニアのAlpine Beer Company、ここのクラフトはどれもアートだ、全てがクリエイティブでパーフェクトなんだ。僕らは到底、足元にも及ばないよ」と、笑いながら話すマットの表情はこの日一番の笑顔だった。一体、次はどんなアートを作り出してくれるのだろう。楽しみで仕方がない。

     

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