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Ryo’s EYE -From issue 14-

TRANSPORTER BEER MAGAZINE No.14(2017)

2022年 11月 14日 10時 02分 投稿 50 Views

先日、5度目のアメリカを訪問してきた。4年前から コンスタントにアメリカ訪問を重ね、ポートランド&デ ンバー、シカゴ&ミシガン、サンフランシスコ、ニュー イングランドといったクラフトビールの有名な地域をし らみつぶしに回っている。クラフトビールを飲むことが とにかく好きだった初めてのアメリカ旅行から比べると、 段々と〝ビール旅行″に対する考え方は変わっていきビー ルを楽しく飲むところから(味覚)、自分の探求心をとこ とん追求する造り方(醸造)の旅へ。

今回訪れたのは、ロサンゼルスとサンディエゴ。サ ンディエゴは日本でも有名なIPAのメッカ。ここだけで 150近いブルワリーがひしめき合う場所。ロサンゼルス は、数年前こそクラフトビール不毛の地なんて揶揄され ていたが、ここ数年で登場したブルワリーの活躍が目覚 ましく、世界的に有名なコンペティションで多数メダル を獲得している。そんなホットな場所で、約2週間ビー ル漬けの日々を過ごしたわけです。

結果から言うと、訪問したブルワリーは51か所、2回 目以降の訪問やパブ、ボトルショップなどを合わせると 80か所にのぼることが判明しまして。1日あたり平均す ると6軒くらい。よく飲み、よく学びました。

こんなクレイジーなことをやっている人間も少ないだ ろうと、こうして旅行記をつづっているわけなのではあ るが、さすがに80か所を紹介するわけにもいかず。私 の視点を通してみた今回の旅行について、独断と偏見を もってご紹介させていただこうと思う。

まずは語っておかなければならないのが南カリフォル ニアの水について。ブルーイングにおいて水質を調整す るということはとても重要なこと。日本の水は軟水で、 どんなスタイルのビールを造るにも調整がしやすいとい うメリットがあります。ビールのスタイルと水質という のは歴史的にもとても結びつきの強いもの。例えば、軟 水地域のピルゼンで造られたピルスナーとか、超硬水地 域のバートン・アポン・トレントで生まれたIPAとか。ビー ルのスタイルの歴史にはその土地の風土が必要不可欠な 要素であったわけです。

さて、そこでこの地域の水はというと、硬水なんです ね。その地の水に合ったある種のビールを造るだけであ れば、調整する必要はないのかもしれないけれど、アメ リカ人のビールへの情熱・探究心はそんなことにはとど まらず、よりたくさんの種類のビールを造るために、彼 らは水をフィルターにかけて軟水化するのです。もちろ ん全部ではないけれど、90%以上のブルワリーがそうし ています。IPAなんかを造るときは、もともと硬水なのをあえて軟水にし、その後結局硬水に戻すなんていう工 程になるのでなんだかもったいない気がしますがそこは 完璧な配合へもっていくためのこだわり。ちなみにデビ ルクラフトでは、多いときで8種類くらいの水質調整剤 を使用しています。

細かい話はさておき、最近のビール事情はと言いま すと、やっぱり多いのはIPA。圧倒的ですね。次にサワー。 ベルリーナ・ヴァイスのような即醸サワーにフルーツを 入れたものなんかは人気があります。またバレルエイジ のものも多くあります。

サワー以外のビールへの汚染の懸念から、別の場所に 保管したりすることが多いので、小さなブルワリーでは 思いきってサワーしか作らない、なんてところもあった り。バレルエイジといえば、ハイアルコールのビールを バレルで寝かせたものも多く存在します。バーボンのバ レルエイジは割とありがちですが、ジン、テキーラ、ラ ムなどのバレルでビールを寝かせることで驚くほど味に 変化が出ることもあり、さらにはそれをブレンドするこ とでより複雑な味わいにする、なんてこともあります。 意外かもしれませんが、ピルスナーも最近多くの醸造所 で造られるようになってきています。その勢いはアメリ カ某大手のライトラガーに対抗して、ピルスナーという ビールの味わい深さ、奥深さを表現しているかのように 感じます。シンプルであるがゆえに非常に繊細な、造る のが難しいスタイル。私はピルスナーを見つけるといの 一番に注文します。これがうまければそのブルワリーは 何を飲んでもうまいというのが私の定説です(笑)いや、 ただピルスナーが好きなだけかもしれません。

New England Style IPA って聞いたことありますか? 東海岸で近年盛んに作られるようになってきた濁った IPAのことです。実際行ってみて驚いたのですが、LAと サンディエゴでも非常に多くのブルワリーがこのスタイ ルに挑戦していました。私も気になっていたのでいろい ろと話を聞いてみると、どうやら本場ニューイングラン ドのそれとは少し様子が違うようでした。彼らはニュー イングランドスタイルのいいところだけをピックアップ し、あくまで西海岸のIPA、というアイデンティティは 崩していなかったのです。とはいえ、そもそもがまだ新 しいスタイルのビールゆえに、なにが正しいのかはわか りませんが。

ではお待ちかね、鈴木的TOP3のブルワリーを紹介し たいと思います。さすがに50も紹介できないので、3つ 程度で勘弁してください。

Bagby Beer Company

元Pizza PortのJeff Bagbyが独立したこのブルワリーは、まだ開業してから3年。サンディエゴクラフトビールシーンのパイオニアの一人である彼の造るビールは、ベルギーやドイツに最大限の敬意を払ったビール。もともとの経歴からも、彼のIPAは多くのファンを擁していたが、現在は“IPA”というビールは製造していない。もちろんホッピーなビールはあるけれども。どのビールも一口飲んだだけでそのクオリティの高さがうかがいしれた。残念ながら旅の途中で寄っただけだったので小さいサイズで何杯かしか飲めなかったが、1日中ここでゆっくり飲んでいたい、そんな気分にさせるところだった。ロケーションも素晴らしく、2階のテラス席からは海を眺めながら飲むことができる。

Societe

Bagbyとはまたちょっと違い、IPA,サワー、バレルエイジ系のものを得意としているサンディエゴっぽいブルワリー。とはいえ、ここのIPAは群を抜いている。雑味の全くない美しいそのIPAは、ホップの香り自体はしつこくないし、サンディエゴにしては控えめと言ってもいいくらい。でも、何かが違う。いつまでもそこに佇んでいる。主張しているのだ。なんだろうこれ??といった具合に頭が混乱しているうちに、もう一口、もう一口と、気づいた時にはそこに空のグラスがおかれている状態。嘘だと思うかもしれないが、私自身本当に驚いた。これが最後に行きつくところなのかもしれないと感じた。

Modern Times

日本でも大人気のモダンタイムス。今回は醸造所の近くに宿を取っていたこともあり、3,4回訪問してし

まった(笑)。サンディエゴに移ってきた初日にここを訪れたのだが、いろいろと話を聞いているうちにここはとんでもない場所だということに確信を抱いていくことに。醸造長を筆頭に、いい意味で変態が集まる場所。彼のビール造りに対する独特な理念や探求心、知識の深さは尊敬の念を抱かずにはいられない。そしてこの会社自体も、デザイナーを3人も雇い、店舗の内装からビールのラベル、イベント運営などで幅広く活用。さらにはコーヒーのロースターも併設し、バレルエイジングのコーヒー豆を販売していたり。もはややりたい放題なのである。それにもかかわらず、細部にまで目が行き届いており、綿密に考えられていることが垣間見られたり。ある種ブルワリーの理想的な形なのかもしれないと思う。あ、ご存知かと思いますがビールは何を飲んでも驚くほどおいしかったです。

さて、今回はこのくらいにしておきたいと思います。また機会があれば書ききれなかったことを書いてみたいななんて。長文、駄文にも関わらずお付き合いいただきありがとうございました。 DevilCraft Brewery 鈴木 諒

鈴木 諒 suzuki ryo
DevilCraft brewery brewer
http://www.devilcraft.jp/
     

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