藤田こういちのベルギービール新書 3 -「BXL Beer festレビュー」新たな一歩-
TRANSPORTER BEER MAGAZINE No.17(2018)
今回は8月に2日間にわたってブリュッセルで行われた 「BXL Beer Fest」に参加してきましたのでそのレビュー をお届けします。今年から始まったこのフェスティバル。 Good、Honest Beersをコンセプトにベ ルギーのみならず世界中から50のブリュワリーが集まりました。ビールは350種。 まずはざっとブリュワリーのご紹介を。
【ベルギー】BRASSERIE CANTILLON / BRASSERIE DE LA SENNE / EN STOEMELINGS / BRASSERIE DE L’ERMITAGE / NO SCIENCE / BRUSSELS BEER PROJECT / 3 FONTEINEN / GUEUZERIE TILQUIN / GEUZESTEKERIJ DE CAM / BRASSERIE DE BLAUGIES / BROUWERIJ ALVINNE / BROUWERIJ DE DOCHTER VAN DE KORENAAR / BRASSERIE DE BASTOGNE / BROUWERIJ T’VERZET / BRASSERIE DE LA LIENNE / BRASSERIE DU BRABANT / BROUWERIJ DE RANKE / HOF TEN DORMAAL / BOKKEREYDER / BRASSERIE ARTISANALE DE RULLES 【アメリカ】THE VEIL BREWING COMPANY / BLUE JACKET / OCELOT BREWING COMPANY / LORD HOBO BREWING COMPANY / MELVIN BREWING / CROOKED STAVE ARTISAN BEER PROJECT 【カナダ】MICROBRASSERIE PIT CARIBOU / MICRO BRASSERIE TÊTE D’ALLUMETTE / BRASSERIE DUNHAM / LE TROU DU DIABLE 【イタリア】CANEDIGUERRA / HILLTOP BREWERY / LAMBRATE / CA’ DEL BRADO 【イギリス】MOOR BEER COMPANY / TIME & TIDE / ANSPACH & HOBDAY 【ポルトガル】MEAN SARDINE BREWERY / CERVEJA LETRA / DOIS CORVOS 【スペイン】NAPARBIER / MASIA AGULLONS 【フランス】BRASSERIE THIRIEZ / LA BRASSERIE DU MONT SALÈVE 【ドイツ】FREIGEIST BIERKULTUR / GÄNSTALLER BRÄU 【オランダ】TOMMIE SJEF WILD ALES 【ウクライナ】PRAVDA BEER THEATRE 【デンマーク】ROCKET BREWING
会場はブリュッセルの中心から徒歩で20分程歩いたTour & Taxis。外観は赤レ ンガの建物が並ぶ倉庫のような場所で、 コンサートや展示会なども行われたりする そう。会場内には4~5醸造所がひとかたまりになったブースが10ほど。またこのフェスはガスト ロノミーにも焦点を当てていて、ビールブースとは別の場 所にPOPUPのレストランが あり、そこでは着席して食事 ができました。さらにその食 事にビールを合わせるといっ た試みがされていて、非常に 興味深かったです。外には キッチンカーもありピザやハ ンバーガー、チーズなどでし たがどれも非常にレベルが高く、クラフ ト感のあるもの(ベ ルギーではよくアル ティザナル、職人の という言葉を使います)でした。どれも おしゃれなんですよ ね!会場内にはボトルショップも併設されていて、飲んで 気に入ったビールは買うこと ができました。またこのフェ スだけのスペシャルブリュー もいくつか。在庫管理をして いた友人のブノワくんは本当 に大変そうでしたが、お客さ んにとっては嬉しいですね。 ありがたいことに招待制の前夜祭にVIPとして入ること ができましたが、何ともベルギーっぽいなと思ったのは、 出展者の半分くらいしかいなかったこと(笑)ただそこに 招待されたメンバーはインポーターはじめ、世界各国から のクラフトビール関係者、飲んで話しているだけで刺激に なりました。ティルカンのピエールがいたので新作のフルー ツバージョンを試飲させてもらいながらしばし談笑。その 日は他にもいるブースの方々や一緒に行ったブラッセルズ ビアプロジェクトのメンバーと飲み、話し、終了。
初日、私にとってはメインの日、今回ボランティアとし て日本から応募していました。意気込んで集合時間より少 し早めに行ったのですが、ほぼ一番のり、、、(笑)ボランティ アデスクからTシャツを受けとり、荷物はそこに置いて着 替えてね、と言われた場所は体育館級の広さ(笑)更衣室 はないので、そのあたりで着替えるのですが、女の子が ちょっと端に行って、後ろを向いてパッとTシャツに着替えてたのはびっくり。ベルギーの女性って意外と大胆?そ して開店時間の11時!になってもブースには人はまばら。 ある意味ベルギーらしい洗礼を受け、緊張がほぐれました。 とても印象的だったのは始めの全体ミーティング時、ビー ルを一番知っているのはブリュワーやブリュワリーのスタッフ、私たちボランティ アはあくまでサポート、そこを理解して欲しい、彼らの邪魔になるようなことはしないで欲しい、という説明がありました。ビールをしっかり来場者に伝えたい、その想いのこもった説 明に何だか胸が熱くなりま した。
配属されたのはチケットブースとセキュリティーの部門。ベルギーは基本フランス語、オランダ語、英語が話せる人がほとんどです。日本語ができるのは自分だけだったのでそのあたりは重宝されたのかとも思いますが、入場口のあたりへ。チケットブースではお客さんの顔を 見て、適宜French ? Dutch ? English ?の 質問からその人にあった言語で説明、これは難しいです。あたり前にやっているベルギー人はすごい。セキュリュティブースでは、ボスが警察関係のかたで見た目は大きくて屈強なのですが、気は優しくて力持ちタイプで、何かビールもってこようか?とチーム4 ~ 5人でいろいろビールを飲み比べつつそれも楽しかったです。ベルギーはテロ事件が起きてからセキュリティチェックは当たり前に受け入れてくれるのですが、男性はほぼ手ぶら。よって、9割 がた女性のカバンの中身を見ることになるのですが、、、あんなにたくさん見たのはもちろん初めてで、ちょっと罪悪感もありつつ、仕事とだからと割り切りました。ここには書けないような面白話もたくさんありました、笑。
2日目、目当てのビールを飲んだり、取引のあるブリュワリーの人達と話したり。いろいろと書ききれませんが 圧巻はなんといっても、カンティヨン、ティルカン、ドゥ リーフォンテイネン、デカムのランビックブースにそれぞ れブリュワー(ティルカン、デカムはブレンダーですが) がいたことです。私にとっては皆カリスマのような人達ば かりなので、嬉しいのと恐れ多いのと。ベルギーはランビック以外は比較的新しい醸造所が多かったように思います。 BOKKEREYDERは長蛇の列、他の国はCROOKED STAVE 、MELVINあたりが人気でした。他にもたくさんいいビールがありすぎて、数人で来てもっといろいろ飲みたかったです。
ベルギーでこのような国をまたいだボーダーレスなビールイベントは今までほとんど行われていなかったように思います。今、世界中でクラフトビールの需要の拡大ととも に、ベルギービールも輸出が増え、そのお陰で醸造所も拡大し、変化、進化をしているようにここ数年で特に感じます。 そのような状況の中、ベルギーだけではない国のビールを 紹介するこういったフェスティバルを開くことには、おそらく伝統的なビール大国ベルギーでは、賛否両論分かれる ところでしょう。ただベルギーのクラフトビール(とあえ て言いますが)も新たな一歩を踏み出したように思います。 ベルギービールはどちらかというと保守的なイメージがあるかもしれませんが、ビールに関わる人達はとてもオープ ンマインドな人も多く、様々に情報を共有したりしていますし、他国の醸造所とのコラボレーションも多くなってきています。
日本でもベルギービールは何だかとっつきにくいとか、 飲食店さんは扱いにくいと思われているかたも多いのではないでしょうか。伝統的なものを否定するつもりなどさら さらないですし、むしろそのようなものがあってこその「文化」でそれなくしてはユネスコの無形文化遺産に登録されるほどにはならなかったと思います。しかしベルギービー ルは今後その伝統を踏まえつつも、ますますボーダレスに そして面白く進化していくはずです。そこに私たちベルギー ビールを扱う人間は置いていかれてはいけない、そして多くのかたに飲んでもらえるきっかけを作りたい。日本にお けるベルギービールは、まだまだできることがあると思っています。多くの出会いと学びのあったフェスティバルでした。
PS デンマーク、ロケットブリューイングのJoelありがとう! KOICHI’S Cheeryというビール初めて見ました。
藤田 孝一
Koichi Fujita
セゾンデュポンなど数多くのベルギー ビールを輸入するブラッセルズ株式会社 取締役
【Facebook】 https://www.facebook.com/brussels.jp/
【Beer Bar BRUSSELS】 http://www.brussels.co.jp/
【輸入部オンラインカタログ】 http://www.brussels.co.jp/import-c/
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