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藤田こういちのベルギービール新書 8 -ベルギー出張 珍道中? 【後編】-

TRANSPORTER BEER MAGAZINE No.22(2019)

2022年 11月 14日 10時 03分 投稿 468 Views

Day 4

 ベルギー最北の地から2 時間以上かけてランビックのブレンダー、グーズリーティルカンへ。ここは輸入するまでにすごく時間がかかりましたし輸入できて本当に嬉しかったところの一つです。着いた時はお昼休み、目の前のフリッツ屋さんで今日のドライバーさんがフリッツ(フライドポテト)を買うというのでちょっとつまみ食い。フリッツはベルギーの国民食なのでぜひたっぷりのマヨネースで食べてみてくださいね、止まりませんから。ティルカンはランビック業界に新風を巻き起こしたといっても良いでしょう。数十年ぶりのランビックブレンダー、自分で醸造はせずに、購入、熟成させたランビックをブレンドして味を決めます。より本格的なランビックをより多くの人に飲んでもらいたいと、酸味の強いものを造っていますが、洗練されたバランスの良い素晴らしいグーズ、フルーツランビックなどを造っています。生産量を増やすには長い期間が必要なのですが、ようやく増えてきたようです。価値のある飲むべきビールだと思います。是非に。

ティルカンの入り口にあるバレル。あふれるフリッツ&マヨ。
ブレンダーのピエールティルカン。この中から熟成度合いの違うランビックをブレンド。

続いては南東部アルデンヌ地方の小さな街アトにあるブリュワリー、ファントム。その名もお化け醸造所。季節のスパイス、花などを使用したビールはとても個性的。オーナーブリュワーのダニーはビール同様とても個性的。はじめはメールをスルーされたり(笑)人見知りな一面もありますが、仲良くなると突然ビールあるよ!連絡をくれたりします。非常に小さな手作り感のある醸造所ですが、アメリカやヨーロッパからトップブリュワリーが訪れビールを一緒に造っています。他にもコラボのオファーがたくさん来るようです。ビールの味は毎回変化が大きいです、ダニーに聞くと毎回レシピを変えたり設備の不良に悩まされたりしながらも改良をしているとのこと。言い方は極端かもしれませんが、本来ビールとはそういうもの。安定した品質も大切です、しかしバッチごとの違いを楽しむのも面白いですよ。というか、ファントムのビールで毎回の味の違いを楽しめるようになりました(笑)森のトンネルを抜けてたどり着く街の小さな醸造所、最高です。

ファントムの可愛い看板。ブリュワーのダニー、いつも動いてます
いたるところにファントムちゃんが。まつげないものがあるという伝説が、、、

 ブリュッセルに戻る時間が押してしまって、遅めの訪問になってしまったレルミタージュ(隠れ家という意味)。その名の通り入り口のドアから奥まったところに醸造所とタップルームがあり、とても賑わっていました。ビールのクオリティも素晴らしく、ベルギービールの伝統に新たなエッセンスを取り入れたビールを作っています。タップルームはアートギャラリーの様な雰囲気でとてもオシャレ。実はレルミタージュとは妙な縁がありました。2年前のベルギー出張で着いたその日の夜に、知人に連れて行ってもらい、ブリュッセル郊外の大人気のワインバーに行った時のこと、(なんでビール屋じゃないんだというツッコミはなしで)そこでもちろん僕はビールを飲んでいたら、そそくさとサーバーと樽を持ってセッティングをし始める人が一人。タトゥーだし、体格いいし、怖いのかな、、、なんて思っていたのですが、思いきって声をかけてみると、その人がレルミタージュのオーナーブリュワーの一人ナシムでした。ブリュッセルではそのワインバーが初めてレルミタージュのビールをつなぐということで、奇妙な縁を感じつつ翌日のビアフェスティバルで再開、輸入もすることになりました。今回醸造所を見せてもらいつつ、タップルームで飲んでいるとどこかで見たことのある顔が。ランビックで有名なカンティヨンのメンバーが常連だそうで、一緒に飲みながら夜はふけていきました。ナシムがいい感じになってきてエヴァンゲリオンの主題歌をフルコーラス歌ったのには爆笑!たくさん飲みましたね。生産量が少なく、人気もあるので日本への輸出はごくわずかですが、今後も彼等のビールを紹介していきたいと思います。エヴァをネタに日本に来てと誘おうかな。。。

奥まった隠れ家的な雰囲気。カウンター。手作りなかんじもいい。
共同経営者のナシムとヘンリ

Day 5

 今回の大きな目的の一つでもあった、ブラッセルズビアプロジェクト5 周年のお祝い。彼らが主催するビアフェス「ワンダラスト」が開催される日です。WANDERLUST は放浪癖や、旅に対する強い願望を意味する言葉で、ビールを探求する旅に終わりはないといったニュアンスが含まれています。ヨーロッパを中心に厳選された醸造所が集まりました。彼らが主催したビアフェスの初回には日本からは京都醸造が参加して、大きな注目を集めていました。日本のアイデンティティを持ったクラフトビール、もっと輸出を狙うべきだと思います、そんなお手伝いができればなとも最近思っているのですが。今のところベルギーを含むヨーロッパではほとんど出回っていないのが現状でしょうか。朝10 時にBBP のタップルームに集合、ヨーロッパ各地のインポーターが集まっていました。

早速ビールを飲みながら(笑)国を越えたミーティング、ビール飲めばみんな友達です。うちでもこんな風に和やかに、でも言いたいことはしっかり言う、そんなミーティングにしたいなあ。最近輸入を始めたオランダのエディプス醸造所のメンバーに会えたのもとてもよかったです。クラフトビールに関わる人ってとてもオープンな人が多い気がします。こう自分の利益だけだはなくて周りを巻き込んでいこうとする人たちが多い。自分もそうありたいと思います。今回の醸造所一応紹介しておきますので、機会があれば誰か輸入してください!

Amundsen (Norway), Oedipus(Netherlands), Oud Beersel (Belgium), Pressure Drop (UK),Brewdog Overworks (UK), Bakunin Brewery (Russia),Basqueland Brewing Project (Spain), Jolly Pumpkin (USA),D e c k & D o n o h u e( F r a n c e ), Te m p e s tBrewing Co. (Scotland),K a a p s e B r o u w e r s(Netherlands), AlefarmBrewing (Denmark) &Galway Bay Brewery(Ireland)

 イベント自体はもちろん大盛況でした。終わりがけフェスが終わったらBBP にみんなで戻って朝までビアポンするから(笑)おいでよ!と言われたのですが、ここまでの疲れが出てその日は宿に引き返しました。。。ベルギー食にちょっと疲れて実はラーメン食べました。ワイン飲みながら餃子とか、ラーメン食べてる人とかいてすごく不思議な感じ。

Day 6

 ベルギー滞在最終日、日曜日にベルギーにいるときには必ずと言っていいほど訪れるビアカフェ、in de verzekering tegen de grote dorst インドゥヴェルゼケーリングテゲンドゥグロートドルスト、初めて名前を聞いたときには難しすぎてしかもr(アール)は人によっては喉を鳴らすような発音なのでカタカナではうまく表現できないのですが、何度も聞いても覚えられません。直訳すると、喉の渇きに対する保険というような意味です。ここのランビックの品揃えは驚きで、ストレートランビック(自然発酵させたランビックのブレンド前のもの)が4 ~5種類飲めたり、年代ごとにボトルのランビックがオンメニューされていたりします。ヴィンテージものなどもあり、ものすごい品揃えです。某ビール評価サイトでNO1 になってからは、世界中からギークな人々が集まって来る場所なのですが、それにも増して何がいいのかというと、日曜日なので目の教会でミサを終えた方々、特に年配の方が多く来店します。そんなおじいちゃんやおばあちゃんが普通にランビックを飲んでいるのを見ると、今はプレミアがつくほどになってしまったランビックですが、昔はこのカフェでみんなが飲んでいるように、より日常に近いところにあったということを垣間見ることができますし、好きなお店で、好きなビールを思い思いに楽しむ、ビールの、ビアカフェの、原点を見たような気持ちになって初心に帰らせてくれるお店です。

どことなく懐かしい雰囲気の店内

 そんなこんなで飲んでいると、昨日会ったエディプス醸造所のポールとサンダーがひょっこり。二日酔いっぽかったですが、集まるところは同じ。ここではよくあるのですがそこであっ数人で大瓶をシェアしたり、それぞれのビールを味見したりそういうこともとても楽しいです。そのあと思いがけず、エディプスのメンバーとランチをすることになり、日本での販売に関しての意見交換などをして充実したミーティングの時間になりました。もちろんビールを飲みながらですけど。

なかなかレアなランビックをシェア。最高のランビックが揃う。

 ブリュッセルに戻ってビアカフェに。よくやることなのですが、あえて自分が輸入している、もしくは輸入されているビールを注文して、日本で飲むクオリティとを比較します。今回もいくつか飲んでみたのですが、面白いものでボトルの場合、ビールによっては若く、それはそれでありなのですが、やはり瓶内二次熟成が特徴のベルギービールは日本で飲むもののほうが(慣れているのもあってか?)美味しく感じることもあります。日本だとボトルと樽生があると樽生のほうを選ぶ人が圧倒的で、樽生が美味しいというイメージがあると思うのですが、ベルギーでは逆で、瓶内二次熟成されたボトルのほうが美味しくなるという人が多いです。もちろんビールのタイプにもよりますが、熟成もビールの面白さの一つです。

 次の日の朝のフライトだったのですが、こちらも好きなビアカフェMONK へ。飲んでいると突然店内が真っ暗に!でも誰も動じません、笑。しばらくすると店員さんがロウソクに火をつけて各テーブルに運んで来てくれました。しばらく暗いまま飲んでいましたが、気にしないでみんな飲んでいる感じもなんともベルギーっぽい。

 ちょっと大げさかもしれませんが、やはり造り手はアーティストだと僕は思います。ビールを造るのは人、そんな人たちの想いやキャラクターも伝えられたらもっと楽しいものになるし、それぞれ人が違うようにそれぞれ違っていいのがビール。ベルギーに行くと再認識します。日本のクラフトビールシーンも、どんどん楽しくなってきてます、地域や人も全部ひっくるめて応援したくなりますよね。最後に、しじみの味噌汁はマストです、減塩で。

 

 

藤田 孝一
Koichi Fujita
セゾンデュポンなど数多くのベルギー ビールを輸入するブラッセルズ株式会社 取締役
【Facebook】 https://www.facebook.com/brussels.jp/
【Beer Bar BRUSSELS】 http://www.brussels.co.jp/
【輸入部オンラインカタログ】 https://www.brussels-import.com/

     

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