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Brewery in Taiwan -Jim & Dad’s Brewing Co.-

TRANSPORTER BEER MAGAZINE No.10(2016)

2022年 11月 14日 10時 02分 投稿 1118 Views

Jim & Dad’s Brewing Co. 吉姆老爹啤酒

台北中心部から車で北へ約60 分のところにある観光地の宜蘭(イーラン)。
ここは台湾でも有数の温泉地で、その他に果樹園や観光名所がいくつもある近年最も熱いリゾート地の一つ。
週末になると多くの家族連れのファミリーカーや観光バスが束の間の安らぎを求めてこの地に押し寄せる。
そんな自然に恵まれた環境のもとで2015 年9 月に本格始動した台湾初のブルーパブ『Jim&Dad’s』。
これからの台湾クラフトビアシーンにひと風吹かせてくれるに違いない。

Q1. ビール作りを始めたきっかけは何ですか?

クラフトビールとの初めての出会いは、大学時代に留学していた アメリカのカリフォルニアです。近所にあるビアパブで飲んだビー ルとその店の雰囲気に衝撃を受け、以降いろんなビアパブに足 を運ぶようになりました。自由な発想から造られたビールはどれも 当時の僕にとって新鮮でクリエイティブでした。おかげで気付い たらビアキークになっていましたね( 笑)。読書が好きなのでビー ル本はいつでも読めるように肌身離さず携帯していました。 大学卒業後、台湾に帰国して地元の企業に就職し、週末は ホームブルワーとしてビール造りに没頭する日々を送っていました。 それまでは、もちろんブルワリーで働いた経験はなく、醸造は全 て独学。試行錯誤の繰り返しでまさにゼロからのスタートでした。 当時の台湾にはクラフトビールに関するあらゆるモノが全くと言っ て良い程なかったので本当に苦労しました。ビジネスとしてやって いこうと考えるきっかけになったのは2013 年に開催された国内コ ンペでローアルコール部門の金賞を受賞したことでした。アメリカ のようなクラフトビールのムーブメントを台湾でも起こしたくて、それ までの仕事を辞め2013 年10月Jim&Dad’sを立ち上げました。 そこから実際に販売できるようになるまでに約2 年かかりましたね。

Q2. イーランを選んだのはなぜですか?

自分が小さい頃からよく父親と休みの日に自宅のある台北からこ こに来て釣りなどして遊んでいました。だからここを選択したのは 僕にとってはとても自然なことなんです。台湾ではブルワリーを台 北市のような商業区域に建設できないので、それを踏まえて何処 にしようか? となった時、最初に思いついたのがここだったんです。 自分のコンセプトにマッチする場所はやっぱりここしかないです。 僕達は廃業して稼働しなくなった採石工場を取り壊し、新たにブ ルーパブを建設しました。ここはブルワーにとってもお客さんにとっ ても本当にベストな環境だと思います。また、周りには沢山の農 園があるので、そこで採れた新鮮な農産物とビールをコラボレート させることで地域全体を盛り上げていきたいです。

 

Q3. 影響を受けたブルワリーなどあったら教えてください。

具体的にあげるのは難しいですね。それぐらい多くのビールに出 会い、ブルワーの方々とお話するチャンスにも恵まれ、その全て が今の自分のテイストを形成していると言えるかもしれません。特 に私はIPA が好きだったので、それを目当てに飲み歩いていまし た。アメリカで知り合った方々から話を聞いたり、本を読んだりすると皆さん始めはホームブルーから始められ、本当に長い時間を掛けて思考錯誤を重ねながら、常に新しいビールを創造する彼らの探究心にとても感銘を受けました。現在はIPA だけではなく、ベルジャンやサワー等にも挑戦しています。クラフトビールは短期間で劇的に進歩するような分野ではないと思っています。台湾のクラフトビールも同様にブルワー同士がお互いインスパイアし合いながら台湾らしいビールが作れたら良いなと考えています。

Q4. 台湾におけるクラフトビールのマーケットについてどう考えていますか?

台湾でのクラフトビールのカルチャーは始まったばかりでとても ニッチなマーケットです。私自身、よくタップルームに立ちお客 さんと会話しますが、クラフトビールを初めて飲まれる方がすご く多いです。カウンター越しでいきなり「生ビール下さい!!」と 言われることはよくあります。私たちはクラフトビールを知っても らうために消費者がアプローチできる環境をもっともっと積極的 に作っていく必要があると考えています。マーケットが日々大きく なっているのは実感としてあります。多くの方々にクラフトビール の素晴らしさを知ってもらいたいです。

Q5. 世界のクラフトビールについてどう考えていますか?

特にヨーロッパでは各国でそれぞれ伝統的なスタイルがあり、ア メリカや日本でもそれぞれのムーブメントの中で文化として根付 いているように感じています。台湾のそれと比べると遥かに歴 史が長い。ブルワリーの数も台湾ではまだ数える程しかないの に対し、他の国には何百、何千ものブルワリーが存在していま す。そしてそれぞれが個性を持ち、お互いをリスペクトし、そこ にレボリューションが生まれる。ワクワクさせてくれる様なエキサ イティングなビールばかりある印象です。

Q6. Jim & Dad’sとしての今後の目標を教えて下さい。

まずは多くの方にクラフトビールを知ってもらって、色々なビール を飲んでもらいたいと思っています。個人的には新しいスタイ ルに挑戦して一つのムーブメントを作っていけたらなと思います。 やっぱり遊び心のスパイスは入れていきたいですね。できれば 日本の方々にも飲んでもらいたいと思っています。台北市内は もちろん素晴らしいところも多いですが、観光コースの一つに イーランが入ってくれるようになれば嬉しいです。

     

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