September 2026 vol.338(Re-edited)

 2026年6月19日 に公開した記事を再編集し、新たに取材した記事を追記し、続編としてお届けます。

ダイヤモンドブルーイングがコロナ禍で客足大幅減、経営改善せず、しかしコロナ禍はきっかけに過ぎなかった。   

熊本のクラフトブルワリー、株式会社ダイヤモンドブルーイングは2026年6月5日に熊本地裁から破産開始決定を受けました。負債総額は約3億6,600万円、債権者は138人と報じられています。

破綻した主な理由

❶ コロナ禍で飲食事業が大打撃 ダイヤモンドブルーイング(2018年創業)は醸造だけでなく、「BREWERY KAEN」や「World Beer Terminal KAEN」など飲食店事業も積極展開していました。しかし2020年以降のコロナ禍で来店客が激減し、収益構造が大きく崩れました。

❷ 先行投資が重荷になった 同社はクラフトビール製造拡大や飲食店展開のために、 増資 クラウドファンディング 金融機 関からの借入 を活用しながら成長を目指していました。ところが、売上回復が投資スピードに追いつかず、借入負担が重くなりました。

❸ 債務超過から抜け出せなかった 各種給付金やコロナ融資を利用したものの、2021年8月期には債務超過へ転落。その後も赤字が続き、資金繰り改善に至らなかったとされています。

❹  店舗閉鎖でも資金繰り改善せず 2024年にはビアホール3店舗を閉鎖し、EC販売へのシフトを進めましたが、金融債務の負担が大きく、最終的には旗艦店「World Beer Terminal KAEN」も閉鎖。事業継続が困難になりました。

設立時300万円の資本金を1億5678万円まで増資 負債約3億6600万円 <東京商工リサーチ>

2019年にはクラウドファンデイングを実施6,662,000円の資金を集めていました

Transporter的な視点で見ると ダイヤモンドブルーイングは単なる「クラフトビール会社」ではありませんでした。

熊本産農産物の活用 規格外作物のアップサイクル 熊本大学や研究機関との酵母研究 海外輸出 「ビールは農業だ」という理念 など、地方発クラフトビールの新しいモデルを目指していたブルワリーでした。

ただ、近年のクラフトビール業界では 「醸造設備投資」 「飲食店運営」 「コロナ融資返済」 の三重苦が多くのブルワリーを苦しめています。 ダイヤモンドブルーイングも、「ビジョンや商品力の問題」というより、急成長を目指した投資とコロナ後の資金繰り悪化が重なったケースと見るのが実態に近いでしょう。これは1社の倒産ではなく、日本のクラフトビール業界全体が抱える「成長と資金繰り」の課題を象徴する出来事でした。

農業不振等により規格外となった作物が大量に廃棄されていることや、地方で作られた魅力的な作物を廃棄作物を活用した、クラフトビール開発を行なう「ビールラボ」と言うコンセプトがあったが、実際 開業後の展開を見てみると その「ビールラボ」と言うテーマは どの程度 事業に盛り込むことが出来たのだろう。

2016年に 創業した株式会社ダイヤモンドブルーイングは「「熊本から世界を目指す」と言う「志」があり、購入型クラウドファンディング(※)で目標額の222%の資金も集まり、EC販売も強化やビールとテクノロジーを融合させた「ビールテック事業」さらに「クラフトビールからビールテックへ」の構想の元、「産学官連携酵母採取を実施」。地元の大学と連携し、200を超えるサンプルを採取に成功。

6株の酵母分離、10の酵母候補を選抜。また、世界初となる分裂酵母によるビール醸造にもチャレンジ。2度の試験醸造を実施しました。2023年3月の完成を目指すとあり、 「分裂酵母Kumadai株」を使用した吟醸香クラフトビール第2弾を発売します!とリリースがあったのが2023年11月6日。少なくとも実験レベルでの「ビールラボ」は一定の成果があった証でしょう。

※購入型クラウドファンディング(情報は2020年当時のもの)

日本クラウドキャピタルが運営する、投資家と事業者のマッチングプラットフォーム『FUNDINNO』
案件番号:138号
発行者:株式会社ダイヤモンドブルーイング
案件内容:廃棄される規格外作物を活用したクラフトビール生産に成功!熊本から世界の喉を潤す「ダイヤモンドブルーイング」

「一気通貫」と言う戦略の曖昧さも気になりました。 この「一気通貫」と言う「美辞麗句」実は私たちもコンサルティングと言う性格上、この「美辞麗句」に自己陶酔してしまう危険があると自負しています。

あるコンサルティング会社の例ですが、「ビール醸造業開業まで」を「フルパッケージプラン」すなわち「一気通貫」プランを用意しています。

フルパッケージプランの主な内容は

・ビール醸造取得までの一式のアドバイス、コンサル
・免許取得に関わる全ての書類作成代行
・ブルワー(醸造家)の育成と研修
・レシピ開発

あくまでも一例ですが 「一気通貫」の期間はほぼ 開業までに限定されており、志が高く。だが資金も集まったダイヤモンドブルーイングでさえ、この立ち上げ後の運営・実務が計画通りに行かなかったことが伺えます。この「一気通貫」を一言で言えば「開業まで」。この「一気通貫」は正しいのでしょうか?「レシピ開発」 一つ取ってみても 「開業までのレシピ開発」なら あっと言う間に事業は行き詰まるはず。

「6次産業化を推進する」これも また「美辞麗句」になる可能性があります。

ビールと相性のいい柚子(ゆず)の実がなるまでの収穫年数は、育て方(接ぎ木か種からか)によって大きく異なりますが、実がなるまで約 10〜15年(または15〜20年)必要です。ビール事業を立ち上げながら 同時に進めることができるようなシロモノではありません。あるブルワーは 創業から15周年を迎えた後、提携した農家と柚子を育て始めましたが、そのコメントも「15年後の柚子収穫を楽しみ」にと残してます。つまり 自社生産の柚子をビールに使用するのは30年プロジェクトと言うことです。 

この「6次産業化」は極端な例ですが、志(こころざし)が「高すぎた」とは言いませんが、事業計画性に難があったと言わざる得ません。

「一気通貫」には疑いを持って、臨みましょう。正直なコンサルは丁寧に「醸造所立ち上げサポート」と「立ち上げ後の運営・実務サポート」をしっかりと分け、料金表示も明確です。ダイヤモンドブルーイングの「一気通貫」モデルが本当なら 結果が出るまで 最低でも30年必要になります。

構想は素晴らしかった

タイトル「志はあった。だが資金が尽きた 」は大きな反響が編集部に届きました。Googleアナリティクスでも 記事公開からしばらく上位にありました。

そのプロジェクトの先にBEERTEC(ビアテック)という概念を掲げ、資金も集まった。

〈BEERTEC = Beer x Technology〉ビールとテクノロジーを掛け合わせて新しいスタイルの事業展開しようとするヴィジョンはとても魅力的だったし、ビールを飛び出して、農畜産業、漁業、医療、創薬、ライフサイエンスなど皆様の生活の中にありふれるものにまで裾野を示唆したものでした。しかし結果だけで、判断すると失敗に終わりました。

ダイヤモンドブルーイングは2016年、資本金300万円で設立し、翌2017年には、熊本市内に工場併設型のマイクロブルワリーを構えています。その設備はあまりにも小規模でした。仕込みは一度に約250リットル。クラフトビールの生産量は、タンクの容量と本数、仕込みにかかる日数によって、物理的な上限が決まっている。単純な数式は〈生産量=(タンク容量+本数)×仕込み日数〉。

事業計画通りにECで全国に売るには規模が圧倒的に不足しているし、そもそも出荷できる在庫が限られる。酒販店へ卸そうにも、自社飲食店「World Beer Terminal KAEN」が繁盛してれば、消費される分だけで生産量がほぼ吸収されてしまう。

熊本に寄り添って、地元の原料を使う。地域の物語をブランドにする」も間違ってはいない。

ベアードビールの創業は2000(平成12)年ですが、ベアード夫妻が夢の実現に向け動き始めたのは1997(平成9)年のことでした。

二人はこの年、ビール醸造を学ぶべく、東京からクラフトビールブームの発祥地カリフォルニアへ。本場の技術を修得して沼津へ移ると、「ベアード・タップルーム沼津フィッシュマーケット」をオープンし、翌2001年には醸造免許を取得して、日本で一番小さな醸造所で地ビール造りを始めました。 

当初は容量わずか30リットルのタンクからのスタートでしたが、250リットル、1,000リットルと着実に生産量を増やしていきました。この容量の小さいタンクからビジネスをスタートさせるというのは クラフトビールビジネスをこれから目指す人にとっては ぜひ 真似して欲しい取り組みです。

スモールスタートの主なメリットはなんと言っても、市場ニーズの早期把握: 顧客のフィードバックを素早く得て、製品・サービスを改善するリーンスタートアップ(Lean Start Up)です。

「構築(Build)→計測(Measure)→学習(Learn)」のサイクルを高速で回し、MVP(必要最小限の製品)を顧客に提供してフィードバックを得ながら、無駄なく効率的に事業を成長させるマネージメント手法です。 「MVP」と言えば スポーツの世界では「Most Valuable Player(最優秀選手)」を指しますが、ビジネスでは「Minimum Viable Product(実用最小限の製品)」を指します。そんなタンクのサイズを着実に大きくしながら、2008年には念願のアメリカへの輸出を達成。その後も規模を拡大し続け、2014年にはブルワリーの未来にふさわしい修善寺の地に、農園型の醸造所を新設しました。

BaredBeer:1997年/30リットルのタンクからのスタート▶︎250リットル▶︎1,000リットル▶︎着実に生産量を増産▶︎2008年/中目黒タップルームオープン/アメリカへの輸出 ▶︎2014年/農園型醸造所オープン▶︎ 2020年/コロナ禍 ▶︎ 6次産業化目指す

Diamond Brewing:2016年/200リットルのタンクからのスタート▶︎6次産業化目指す ▶︎2020年/コロナ禍▶︎ 2026年/廃業

代表個人の資質を断じる話ではありません。コロナ禍は、そのタイミングには運不運もあったにせよ、ベアード、ダイヤモンド 両社を襲いました。そして両社とも6次産業化を掲げていました。

クラフトビールのように、一見、地元の農産物を土地を商品に乗せやすいブランディングなら尚更です。

下記のメッセージとヴィジュアルをご覧ください。  

Celebrating Beer(ビールを祝福する) 

https://www.instagram.com/p/DdD18xElBWx/

〈BEERTEC = Beer x Technology〉

共に 農業での物語を謳いましたが、ダイヤモンドは未来の構想を壮大に伝え、ベアードの物語の後追いを伝えました。未来の構想は株式投資型クラウドファンディングに変換され、事業資金を呼び込みました。ベアードの物語はビール好きな顧客を呼び込みました。

写真には「映える写真」があるように 事業計画には「映える物語」があります。今回の「映える物語」の事例では、AI・IoTによる「脱・職人」化、「一気通貫」による6次産業化構想、大学との酵母研究、そして缶ビール工場の新設が「萌え」でした。

前回の記事では、ダイヤモンドブルーイング倒産の事実情報だけをお伝えしました。この続編は 事業計画に内包されていた脆弱性を取り上げています。

実際には すでに会社は解散されているので ここまでに出てる記事の分析になってます。しかし 私たちの目的はクラフトビールの未来を創造すること。ここで終わっては、未来を語る前に 文章を閉じてしまう。背丈の少し上を行く物語も必要です。実際には 金融機関に提出するビジネスプランが 現実よりも明るい未来を描く必要があります。

Part2へ続く

取材に際し 参考にした記事

東京商工リサーチ(報道内で引用)

FUNDINNO 138号案件の事前開示開始(報道内で引用)

ベアードブルーイング(公式サイト内で引用)