An era where even popular breweries go under: Electric Brewing reveals the "beginning of the end" for American craft beer.

その知らせは、あまりにも突然だった。

2014年にスタートし、南カリフォルニアのクラフトビールシーンを支えてきたブルワリー。決して「誰も知らない小さな醸造所」ではない。

それでも、終わった。

ここで考えたいのは、「Electric Brewingは、なぜ潰れたのか?」という単純な問いではない。

むしろ、「なぜ、12年間続いたブルワリーでさえ、突然終わらなければならないのか?」という問いだ。

そして、この問いはアメリカだけの話ではない。日本のブルワリーにも、かなり近い未来の話として考える必要がある。

Electric Brewing

アメリカのクラフトビール市場は、長い間、成長を続けてきた。

新しいブルワリーができる。

タップルームができる。IPAが売れる。缶を作る。ディストリビューターに乗せる。販売エリアを広げる。そして、さらに設備を大きくする。

そんな「成長の方程式」が、かつては成立していた。しかし、そのゲームは終わった。

Brewers Associationによれば、2025年のアメリカのクラフトビール生産量は前年比4%減少。

稼働するクラフトブルワリー数も9,578軒まで減り、前年比2.9%減少した。

さらに、2025年は新規開業が300軒だったのに対し、閉鎖は481軒。   

これは一時的な不況というより、市場そのものが成熟期に入ったことを意味している。

ここを間違えてはいけない。現在の問題は、「ビールが売れなくなった」だけではない。

もっと厄介なのは、ビールを作るためのコストが上がり続けているのに、販売価格を同じスピードで上げられないことだ。

サンディエゴのブルワリーでは、原料、家賃、光熱費、人件費、包装、物流、アルミ缶 など、ほぼすべてのコストが上昇している。

Karl Straussでは、2020年以降、ビールの製造原価が40〜45%上昇したという。

©2026 Karl Strauss Brewing Company

ところが販売価格の上昇は、そのすべてを吸収できるほどではない。

つまり、「売上はある」。「お客さんもいる」。「ビールも売れている」。それでも、利益が残らない。

これが現在のクラフトビール経営の怖さだ。 

そしてIPAにも「賞味期限」が来た

もう一つ大きな変化がある。クラフトビールを牽引してきた「IPA中心主義」が限界に近づいていることだ。

特にHazy IPAのような、ホップを大量に使用するビールは原材料コストも高い。

さらに、 「もっと濃く」「もっとホップを」「もっと新しい品種を」という競争を続けても、それだけで新しい消費者を獲得できる市場ではなくなった。

一方で、低アルコール、Lager、ノンアルコール、RTD、カクテルなど、消費者の選択肢は増えている。

若い世代ほど「とにかくビールを飲む」という行動から離れている。

「醸造所」から「体験」へ

では、これから何が強いのか。   

Brewers Associationの2025年データを見ると、興味深い傾向がある。

生産量の落ち込みは、

  • Microbrewery:−8.9%
  • Taproom:−3.9%
  • Brewpub:−1.7%

となっている。 

つまり、比較的強いのは、その場所で飲む理由を持っているビジネスだ。

タップルーム。

レストラン。

イベント。

音楽。

スポーツ。

コミュニティ。   

そして「この街に来たら、この店に行きたい」と思わせる場所。

ビールだけを売るのではない。

時間を売る。

体験を売る。

コミュニティを売る。

これが重要になっている。

クラフトビールの歴史を振り返ると、かつては、「もっと作れるようにする」ことが成長だった。

10KL▶50KL▶100KL▶500KL▶1,000KL▶

設備を増やし、販売エリアを広げる。

しかし現在は違う。「作れる量」と「売れる量」の差が、経営を殺す。 

設備が空いているタンクが埋まらない▶缶が余る▶在庫が積み上がる▶ディストリビューターからの入金を待つ。

一方で、

家賃は払わなければならない▶人件費も払う▶原料代も払う▶税金も払う▶借入金も返す。

だから、売上よりキャッシュフローの方が重要になる。

クラフトビールは「製造業」であると同時に、非常にキャッシュフローの厳しいビジネスなのだ。

Electric Brewingが実際にどのような財務事情を抱えていたのか、現時点で詳細な一次資料は公開されていない。

だから、「赤字だったから」「借金があったから」「売上が落ちたから」と一つの理由に決めつけるべきではない。

しかし、2026年8月22日に12年間の営業を終えたという事実は、現在のアメリカ市場を考える上で象徴的だ。

そして重要なのは、Electric Brewingだけが特別なケースではないということだ。

2025年だけで、アメリカでは481のクラフトブルワリーが閉鎖した。

これは「クラフトビールが終わった」という意味ではない。むしろ、クラフトビールの第2章が始まったと考えるべきだろう。

日本のブルワリーはどうする?ここからが、日本にとって一番重要だ。

日本でも、これから同じ問題が起こる可能性がある。

「とりあえず設備を大きくする」▶「販売エリアを全国にする」▶「卸を増やす」▶「SKUを増やす」▶「缶をたくさん作る」

という成長モデルは、必ずしも正解ではない。むしろこれからは、「何KL作れるかではなく、何KLなら利益を残して売り切れるか。」ここが重要になる。   

例えば100KLのブルワリーが、100KL作って80KL売るより、70KL作って70KLを高い粗利で売る方が強い。

さらに、その70KLのうち、▶どれだけを自社タップルームで売れるか▶どれだけを飲食店で売るか▶どれだけを小売で売るか▶どれだけをECで売るか。 

そして、「誰が、なぜ、そのビールを買うのか」まで設計できるか。

ビールはもちろん重要だ。でも、それだけでは足りない。

料理。

音楽。

カルチャー。

イベント。

観光。

コミュニティ。

地域。 

そして人。

それらを全部ひっくるめて、「このブルワリーだから行きたい」を作れるか。

そこに価値がある。

Electric Brewingから日本のブルワリーが学ぶこと

「12年間続いたブルワリーが突然閉じる」。それは恐ろしいニュースだ。

でも、そのニュースを、「アメリカのブルワリーがまた一軒潰れた」で終わらせてはいけない。

Electric Brewingが突きつけているのは、「クラフトビールという産業そのものが、成長期から成熟期へ移った」という現実だ。

▶▶▶これからは、大きいブルワリーが勝つとは限らない。

▶▶▶たくさん作るブルワリーが勝つとも限らない。

▶▶▶有名なブルワリーが勝つとも限らない。

勝つのは、「なぜ、このビールをここで飲むのか?」を作れるブルワリーだ。 

そして、「なぜ、この会社を10年後も残したいのか?」という答えを持っている会社だ。

クラフトビールの「成長の時代」は終わった。

これから始まるのは、生き残るためのクラフトビール。

そして、その先にあるのは、もう一度、クラフトビールを面白くするための競争なのかもしれない。

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