Why hasn't honey beer taken off in Japan? Moving from "sweet beer" to "beer that captures the essence of the land."

25 September 2026 vol.319
蜂蜜を使ったビールは、珍しくない

日本でも、すでに蜂蜜を使ったクラフトビールはいくつも存在する。群馬では栗蜂蜜を使った「Beeear」、福岡では「かぼす ハニー」、東京には蜂蜜を専門的に使うブルワリーもある。2026年にはオリオンビールも、首里城周辺の花々から採れた「首里王朝蜂蜜」を使ったアンバーエールを発売した。

つまり、蜂蜜ビールそのものは、すでに日本にある。なのに、なぜ「IPA」「Hazy IPA」「サワー」のような大きなカテゴリーにならないのか。
僕は、その理由は「蜂蜜」にあるのではなく、蜂蜜ビールの設計思想にあると思っている。
「蜂蜜を入れれば、蜂蜜の味がする」。これは、半分正しくて、半分間違っている。
蜂蜜は非常に発酵性が高い。つまり、ビールに入れた蜂蜜の糖分は酵母によってどんどんアルコールと二酸化炭素に変わっていく。
だから、「蜂蜜をたくさん入れれば、甘いビールになる」わけではない。むしろ逆。蜂蜜を使うことで、ビールはよりドライになり、ボディが軽くなることがある。
Craft Beer & Brewingも、蜂蜜は非常に発酵しやすいため、ビールに加えるとボディが軽く、フィニッシュがドライになりやすいと説明している。
だから蜂蜜ビールで最初に考えるべきなのは、「どれだけ蜂蜜を入れるか?」ではない。蜂蜜を何のために入れるのか?」だ。
「甘くするため」ではなく「香りを持ってくる」
ここが重要だ。例えば、蜂蜜を砂糖として考えるなら、もっと安い糖はいくらでもある。
砂糖、ブドウ糖、コーンシュガーなど。
それなのに、わざわざ高価な蜂蜜を使う。なぜか?答えは、糖ではなく、蜂蜜が持っている香りと土地の情報を使うためだ。
同じ「蜂蜜」でも、アカシアと、そば蜂蜜と、栗蜂蜜と、みかん蜂蜜では、香りがまるで違う。
だから蜂蜜は、単なる副原料ではない。
ホップと同じように、選ぶ理由がある原料になり得る。
では、日本で何を作る?ここからが面白い。
例えば、福岡みかん蜂蜜 × Blonde Ale
長野そば蜂蜜 × English Bitter
熊本百花蜜 × Amber Ale
和歌山柑橘系蜂蜜 × Saison
北海道クローバー系蜂蜜 × Helles
という設計だ。これなら、「蜂蜜ビール」ではなく、「その土地の蜂蜜を使った、その土地のビール」になる。
日本の蜂蜜は「Terroir」になれる。
ワインにはテロワール(Terroir)という言葉がある。土地、気候、土壌、品種。それらがワインの味を作る。
クラフトビールでも、同じことができる。麦芽やホップだけではない。蜂蜜も土地を表現できる。
例えば、「長野のビール」と言われても、それだけでは味が想像できない。しかし、「長野のそば蜂蜜を使ったEnglish Bitter」と言われたら、急にストーリーが生まれる。
そば畑。山。蜂。養蜂家。そして、その蜂蜜をビールにするブルワー。
ここまで来ると、ビールは単なる飲料ではなく、「地域を飲ませるメディア」になる。
「蜂蜜×ホップ〜Honey&Hop」を考えてみる

もう一段踏み込むなら、蜂蜜とホップの香りをペアリングする。
例えば、みかん蜂蜜 × Mandarina Bavaria ※柑橘系の香りが特徴のドイツ産アロマホップです。
そば蜂蜜 × Fuggle ※Fuggle:19世紀にイギリスで発見された伝統的なビールの香りづけ用ホップ
栗蜂蜜 × East Kent Goldings ※EKG:1790年から栽培が続く非常に歴史あるホップ品種です
百花蜜 × Cascade
という具合だ。
ここでは、「蜂蜜を入れたから蜂蜜味」ではない。蜂蜜の香りとホップの香りが重なって、第三の香りを作る。
これがクラフトビールとして面白い。
「蜂蜜をいつ入れるか?」という問題。ここに“ブルワーの腕”が出る。

蜂蜜を糖源として使うのか?香りを残したいのか?それによって添加タイミングも変わってくる。
Craft Beer & BrewingのHoney Aleでは、蜂蜜の高い発酵性によってボディが薄くなりやすいため、Crystal Maltなどでボディを補う設計が紹介されている。
一方、蜂蜜の香りを強く残そうとして後半に大量投入すると、別の問題も出てくる。
再発酵だ。
特に瓶詰めや缶詰めをするなら、発酵可能な糖を残したままパッケージングすることは危険につながる。つまり、蜂蜜は「入れるだけ」の原料ではない。糖、香り、発酵、ボディ、パッケージングまで含めて設計する必要がある。
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僕なら、3種類を同じ蜂蜜で作る
例えば福岡のブルワリーだったら、
01 Honey Blonde
蜂蜜由来の糖を比較的しっかり使う。
低IBU。軽いボディ。ドライ。「蜂蜜を飲むビール」ではなく「蜂蜜で作った軽快なビール」。
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02 Honey Saison
Pilsner Malt。Wheat。少量のMunich。Saison Yeast。そして地元の蜂蜜。高めの炭酸。ドライフィニッシュ。
蜂蜜のフローラルな香りと酵母由来のスパイスを重ねる。
03 Honey ESB
そして、これが一番やってみたい。 蜂蜜 × English Strong Bitter。Maris Otter。Crystal Malt。Fuggle / East Kent Goldings。
English Ale Yeast。
そして、そば蜂蜜や栗蜂蜜。蜂蜜の土っぽさ、濃厚さをモルトのトースト、カラメル、ビスケット感と重ねる。
Craft Beer & Brewingが紹介するHoney ESBも、蜂蜜によって軽くなるボディをCrystal Maltで補い、Buckwheat Honeyの個性をESBに組み込むという考え方だ。
これは、日本でも十分成立する。
実は、もう始まっている
面白いことに、日本ではすでにその方向へ進んでいる例もある。
2026年には島根ビールが、島根蜂蜜110kgを使った「宍道湖MOON 2026 島根蜂蜜Ver.」を発売している。

また、蜂蜜の採蜜時期による草花の違いをビールの味の違いとして楽しませる商品も登場している。
これは非常に重要なポイントだ。
つまり、「蜂蜜を副原料として使う」から、「蜂蜜そのものをビールの個性として設計する」方向へ、すでに動き始めている。
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それでもカテゴリーにならない理由?最大の理由は、「説明が難しいからだ。」
「IPA」は誰でも知っている。
「Hazy IPA」もイメージできる。「Honey Beer」と言われた瞬間、「甘いの?」となる。
ここが最大の壁だ。だから売り方を変える必要がある。
「Honey Beer」ではなく「Honey Terroir」

例えば、
NAGANO Buckwheat Honey Bitter 長野産そば蜂蜜
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FUKUOKA Citrus Honey Saison 福岡産柑橘蜂蜜
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OKINAWA Shuri Honey Amber Ale 首里王朝蜂蜜
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SHIMANE Wildflower Honey Weizenbock 島根蜂蜜
こうなると、単なる「蜂蜜ビール」ではなくなる。「土地のビールになる」。
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そして、ここに日本のクラフトビールの未来がある
日本のクラフトビールは、これまで、「麦芽 × ホップ」をどう組み合わせるかに多くのエネルギーを使ってきた。
もちろん、それはクラフトビールの基本だ。
でも、これからは違う。「地域 × 原料 × 生産者 × 醸造」までを一つの商品として考える。
蜂蜜は、その入口として非常に面白い。
なぜなら蜂蜜には、花がある。花には、土地がある。そして、季節がある。そこには農家や養蜂家がいる。
つまり一瓶のビールの中に、その土地の農業と季節を入れることができる。
クラフトビールは「土地を飲む」時代へ
クラフトビールの次の競争は、「どのホップを使ったか」だけではないかもしれない。
誰が育てたのか?どこで採れたのか?なぜ、その原料を使ったのか?
そこまで説明できるビールが強くなる。蜂蜜は、その可能性を持っている。
だから僕なら、「日本初のハニービール」を目指さない。
そんなものは、もう存在する。目指すなら、「日本の蜂蜜を、ビールの新しいテロワールにする。」だ。
蜂蜜を甘味料として使うのではない。花を、季節を、土地を、ビールに翻訳する。それができたとき、「蜂蜜ビール」はようやく、“甘い変わり種”から、“日本のクラフトビールの一つの表現”へ変わる。
Transporter’s View
蜂蜜を入れることに価値があるんじゃない。「なぜ、その蜂蜜を、そのビールに入れたのか?」を語れることに価値がある。
これが、日本のHoney Beerが次に進むための一歩だと思う。

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