Guinness is set to close its Baltimore brewery—which served as a tourist destination featuring a taproom, events, and limited-edition beers—after seven years of operation.

Diageo、ギネスのボルティモア醸造所を7年で閉鎖へ

https://www.guinnessbrewerybaltimore.com/

消費者に醸造所へ来てもらう。タップルームがあり、イベントがあり、限定ビールがあり、観光地としての役割もあった。まさに、「これからのクラフトビール市場は、こうなる」という期待を背負った施設だった。それが、7年で閉じる。一般営業は11月1日まで。年末には操業を停止するという。

Guinness Open Gate Brewery

これは「ギネスがダメになった」という話ではない。ここが今回のニュースで最も重要なところだと思う。ギネスというブランドそのものが売れなくなったわけではない。むしろ、Diageoによればギネスはオーガニック成長率4%を達成している。つまり、ブランドは強い。それでも醸造所は閉じる。なぜなのか。答えは、「ブランドが強いこと」と「その施設を持ち続けること」は別の問題だからだ。

ここに、これからのクラフトビール経営を考える大きなヒントがある。

2018年に9,000万ドルを投じて開設された、1954年以来初のギネス米国醸造所が、Diageoのコスト削減策を受け閉鎖される。

https://nypost.com/2026/10/09/lifestyle/guinness-brewery-that-welcomed-2-million-visitors-closing-its-doors-for-good/

醸造所は「夢」だけでは維持できない。クラフトビールをやっていると、「もっと大きな設備が欲しい」「タップルームを作りたい」「醸造所を観光地にしたい」「イベントをやりたい」「限定ビールを作りたい」そう考える。もちろん、それは大切だ。クラフトビールは、単なる飲料ではない。場所、空間、人、ストーリー、イベント。それらを含めてブランドを作ることができる。だからこそ、醸造所に投資する意味がある。しかし、投資した瞬間から、その施設は「夢」ではなく「事業」になる。家賃が発生する。人件費が発生する。設備の維持費が発生する。電気代、水道代、物流費が発生する。そして最終的には、「この施設は、いくら利益を生み出しているのか?」という数字に戻ってくる。

「売れている」のに、閉める。今回のギネスのニュースで、僕が最も考えさせられたのはここだ。

https://www.diageo.com/en/our-brands/beer

ギネスというブランドは強い。商品も売れている。それでも、ボルティモアの醸造所は閉じる。つまり経営では、「売上があるか」だけでは足りない。その売上を作るために、いくら設備を持ち、いくら人を雇い、いくら物流費を払い、いくら家賃・光熱費を払い、最終的にいくら利益が残るのか。そこまで見なければいけない。クラフトビール会社にとって、この考え方は非常に重要だと思う。

そして、もう一つ大きな変化がある。2018年と2026年では、ビールを取り巻く環境が大きく変わった。2018年頃は、「クラフトビール」「ローカル」「ブルワリー巡り」「限定ビール」「タップルーム」といったものに、まだ大きな成長期待があった。しかし現在は違う。クラフトビール市場の成長は鈍化し、RTDやノンアルコール、スピリッツなど競合するカテゴリーも増えた。消費者も以前ほど簡単には財布を開かない。そして何より、「良いビールを作れば売れる」時代ではなくなっている。

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では、これからのブルワリーは何をするべきなのか。僕は、「作る場所」と「売る場所」を分けて考える必要があると思っている。醸造所は、ビールを作る場所。営業は、ビールを売る場所。マーケティングは、ビールを知ってもらう場所。イベントは、ブランドを体験してもらう場所。そしてSNSは、その世界観を広げる場所。全部を一つの施設、一つの会社、一つの人員で抱える必要はない。むしろ、何を自社で持ち、何を外部と組み、何に投資するのか。これを考える時代になっている。

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「大きくする」ことが正解とは限らない。クラフトビール業界では、どうしても「もっと生産量を増やそう」「もっとタンクを増やそう」「もっと店舗を増やそう」となりがちだ。でも、今回のギネスのニュースを見ると、別の問いが必要になる。「大きくすることで、本当に利益が増えるのか?」設備を増やしたことで売上が増えるのか。人を増やしたことで販売量が増えるのか。店舗を作ったことでブランド価値が上がるのか。イベントを増やしたことでリピーターが増えるのか。ここを数字で検証しなければならない。

クラフトビールの面白さは、大手と同じ戦いをしなくていいことだと思っている

クラフトビールは「小さいから強い」という選択肢もある。僕はクラフトビールの面白さは、大手と同じ戦いをしなくていいことだと思っている。大手には、大手の強さがある。大量生産。巨大な物流網。広告予算。ブランド認知。価格競争力。では、クラフトビールは何で勝つのか。地域性。人。ストーリー。商品開発。コラボレーション。スピード。そして、「ここでしか飲めない」理由。ここを磨くことができる。

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ギネスの閉鎖から学ぶこと。今回のニュースを、「大手企業でも大変なんだな」で終わらせてはいけないと思う。むしろ僕たちのようなクラフトビール会社こそ、考えるべきニュースだ。9,000万ドルを投じた施設でさえ、7年後には「維持するより、閉じた方がいい」という経営判断になる。だったら僕たちは、もっと慎重に、もっと柔軟に、もっと数字を見なければならない。

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ブランドを残すために、施設を捨てる。これも経営だと思う。今回、Diageoはギネスというブランドを捨てるわけではない。むしろ逆だ。利益を生まなくなった施設への投資を止め、その資金を、「これから成長するブランド・カテゴリーへ再投資する」という判断をしている。ここには非常に重要な経営思想がある。「何を残すか」だけではなく、「何をやめるか」を決める。

会社が成長すると、新しいことを始めるのは簡単だ。でも、やめることは難しい。人がいる。思い入れがある。過去の投資がある。ブランドの歴史がある。だからこそ、「今までやってきたから続ける」ではなく、「これからの会社に必要だから続ける」という判断が必要になる。

taji jarnal's view

Photo courtesy of Guinness Open Gate Brewery.

タジジャーナルとして思うこと。クラフトビールは、夢のある仕事だ。僕自身もそう思っている。新しいビールを作る。誰かとコラボする。地域の食材を使う。イベントをする。海外へ出す。お客さんに「このビール、面白いね」と言ってもらう。その瞬間は、本当に楽しい。でも会社を経営する以上、「楽しい」だけでは続かない。ビールを作ること。ビールを売ること。利益を残すこと。人を守ること。ブランドを成長させること。そして、次の投資をすること。この全部が経営だ。今回のギネスのニュースは、「巨大企業のリストラ」の話ではない。僕たちクラフトビール会社にとって、「何にお金を使い、何をやめ、どこで利益を作り、ブランドをどう残すのか」を考えるための教材だと思う。

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ビールを作ることは、ゴールじゃない。ビールを作り続けられる会社を作ること。それが、これからのクラフトビール経営には必要なのかもしれない。

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