再編集版のアイコ

2026 年3月20日の「TRANSPORTERWEB版リニューアル以降 5月31日に100号を更新することが出来ました。これもひとえにみなさまのお陰です。感謝をお伝えします。心からありがとうございます。そこで2014年の創刊以来過去人気の高かった(アクセス数が多かった)記事を再編集して お届けします。それがこの「再編集編」。今回はゲストコラムニストシリーズから「植竹的視点」です。

Since the renewal of the "TRANSPORTER" website on March 20, 2026, we were able to update issue number 100 yesterday. This is all thanks to you. Thank you very much.

このテキストは「植竹的視点」 wrighting by HIROMI UETAKEを再編集しております

コラボレーション”(Collaboration)という言葉を辞書で引いてみると「協力」「協同」「共同研究」「合作」なんて書いてあるが、クラフトビール業界においては「自分達だけではなく他の誰かと一緒にビールを造る」ことを指す。

コラボレーションの基本はリスペクト

具体的には自家焙煎をしているコーヒー屋や、果物を作っている農家、時にはバンドとのコラボレーションをしているブルワリーもある。中でもクラフトブルワリーならではと言えるのはブルワリー同士でのコラボレーションではないだろうか。

通常、同業者同士というのはライバルであり、時には売り上げやシェアを奪い合うものであるから、普通はあまり仲が良くないものである。しかしクラフトビールの業界はそうではない。ブルワリー同士非常に仲が良いのである。というのも、どのブルワリーも基本的に自分たちの造りたいビールを造るというスタンスであるから、お互いを尊敬こそすれ、あまり敵対するような事はないのである。

また、すでに圧倒的なシェアを誇る大手ビールメーカーがいる為、小さなブルワリー同士で協力するという環境が自然と出来上がったのだろう。

©2026 Ballast Point Brewing Co. All Rights Reserved.




2012 年9 月にサン・ディエゴのブルワリーBallast Point Brewingのブルワーが来日し、初めてのコラボレーションを行ってから、翌2013 年4 月に今度は植竹が渡米し、サン・ディエゴの地で再びBallast Pointとコラボレーション。さらにその時の飲み会がきっかけとなった。

翌年2013 年9 月にはCoronado Brewingとコラボレーション。同年8 月には北海道のノースアイランドビールさんと、12 月には元Dieu du Ciel!のヘッドブルワー、現うしとらブルワリーのブルーマスターLuc Bim Lafontaine とコラボレーションしてビールを造っている。さらに、今年に入ってからは4 月にふたたびCoronado Brewingとサン・ディエゴで一緒にビールを造り、10 月にはシカゴのHalf Acre Beer Companyとビールを造り、コラボレーションを終えて帰国した。

植竹はコラボレーションについて様々な観点から非常に有意義な事であると考えている。

もちろん有力なブルワリーとコラボレーションをすれば非常に大きなコマーシャルとなりうるし、セールスの面から言ってもポジティブである。しかし、もっとも大きな意義は技術やマインドの交換をできる点である。いくら同じビールを造っている人間同士であっても各々の嗜好や考え方には違いがあるし、技術や設備にも差がある。お互いの技術を隠すことなくさらけ出して、より良いものを造れるように高めあう事はブルワーとしての経験値を得るには非常に有効な手段だ。

そしてなにより、違う環境の者同士が集まって一つのものを造り上げるという行為は非常にエキサイティングだし、面白いのだ。

今、植竹がアメリカンスタイルのビールを得意としているのも、間違いなくサン・ディエゴのブルワリー達とコラボレーションした経験があるからだと思っている。ホップの使い方に関しては、アメリカのブルワー達が世界一の技術を持っていると断言できる。

近頃コマーシャル的なコラボレーションが増え過ぎ、クラフトの理念と反するという批判もあるが、日本においてはまだブルワリー同士のコラボレーションは少ないし、技術的な交流という意味でも非常に有意義であると思う。是非もっと積極的にコラボレーションをして欲しいと思う。

編集部

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info@craftbeertransporter.com

さて、ブルワリー同士のコラボレーションの話を進めてきたが、先に述べたようにコラボレーションはブルワリー同士のみならず様々な形がある。

たとえばCOEDO で造っている紅赤というさつまいもを副原料に用いたビールも、地元農家の協力なしには造れないわけで、これもひとつのコラボレーションと言えると思う。また、シカゴにあるDark Matter Coffeeというコーヒー屋は同シカゴのHalf Acre やインディアナのThree Floyds といったクラフトブルワリーと積極的にコラボレーションしている。

© COEDO BREWERY 

単純にコーヒーをビールに使用するだけにとどまらず、バーボンが入っていたバレルで豆を熟成し、その後の樽には自社のコーヒーを使ったコーヒースタウトを入れ、ビールの熟成が済んだ後は、またそのバレルで豆を熟成させるというような、非常にエクストリームな事をやっているのである。

余談ではあるが、現地でバレルエイジングしたコーヒーを飲んできたが、非常に興味深いものであった。最先端の試みであるので荒削りな部分は見られたが、サードウェーブコーヒーが急速に浸透するなか、ビールと同じようにコーヒーにおいてもバレルエイジングという試みは盛んに行われるようになる事は想像に難くない。

話を元に戻そう。先のDark Matter Coffee の例は極端かもしれないが、よくよく考えてみれば意外とコラボレーションの敷居は低いものである。どのブルワリーも少なからずコラボレーションと呼べる事柄があるのではないだろうか。

単純に原料や製法での協力でなくても、例えば画家であったり、音楽家であったり、お互いの感性をぶつけ合い一つのものを造り上げれば立派なコラボレーションである。

他のお酒、料理、映画、小説、なんでもいい。また、別にビールを造ることだけがコラボレーションではない。レストランと共にビールに合う食事を一緒に考えることも立派なコラボレーションであるし、過去には映画に合わせてビールを楽しむという試みもあった。アーティスティックな感性を持つクラフトブルワーならば、きっと様々なことからインスピレーションを受けコラボレーションに発展させられるはずである。なにしろ多様性というのはクラフトビールの基本理念だ。そして多様性を獲得する手っ取り早い手段は、違う遺伝子を持つもの同士が、お互いの遺伝子を交換することである。ブルワーが己の感性を元に自由なビールを創造するように、コラボレーションの形も自由なのだ。

小説とのコラボで誕生したクラフトビール(編集部追記)

小説のストーリーや世界観から着想を得て誕生した、ユニークな「物語のあるクラフトビール」DD4D BREWINGが生み出すクラフトビールのラベルに、ショートショート作家・田丸雅智氏の小説が刻まれた、読みながら味わう、新しい体験です。

クラフトビールの未来において、どのような刺激的で独創的なコラボレーションが産まれるのか、植竹的にも非常に楽しみにしている。もちろん植竹は面白そうなコラボレーションのオファーをいつでもお待ちしています!

小説とクラフトビールコーナーにご登場いただいた田丸雅智さんはショートショート小説の世界では絶対的なスターです。

お好きなクラフトビールを飲みながらチェックしてみてください。

(文中の時系列は公開当時のものです)

【ゲストコラムニストプロフィール】

ビール醸造家/ 植竹 大海

1985年生まれ。埼玉県出身。バイオテクノロジーの専門学校を卒業後、ビール醸造の道に進む。これまで国内外のブルワリーで醸造に従事し、ビールづくりの腕を磨く。コロナ禍をきっかけに日本に帰国後独立し、2022年自身のブルワリーBrasserie Knotを東北海道の鶴居村に設立。「ビールと、つなぐ。ビールで、つなぐ。」をテーマに東北海道の空気に馴染むような、自然と調和するビールを醸造している。自身のビール醸造と平行して、新規ブルワリーの立ち上げ支援、技術提供なども行っている。

https://brasserieknot.jp

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