
11July 2026 vol.158
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サッポロが1000億円を投じてカールスバーグを選んだ理由
「国内では限界」──サッポロが1000億円を投じてカールスバーグを選んだ理由
日本のビール業界にとって、大きなニュースが飛び込んできた。
サッポロビールは約1000億円を投じ、世界4位のビールメーカーであるデンマークのカールスバーグとアジア事業の合弁会社を設立すると発表した。
一見すると海外進出のニュースに見えるが、本質はもっと深い。
これはサッポロが「日本で売る会社」から「世界でブランドを育てる会社」へ舵を切った瞬間でもある。
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なぜ今なのか?
答えは非常にシンプルだ。
日本のビール市場が縮小し続けているからである。

1994年には国内ビール類市場は約7億kl近い規模があったと言われる。
しかし現在は人口減少、高齢化、若者のアルコール離れ、健康志向の高まりによって市場は長期的な縮小局面に入っている。
もちろんプレミアムビールは伸びている。
しかし市場全体を見ると、「パイの奪い合い」になっている。
黒ラベルやヱビスが好調でも、それだけでは会社全体が大きく成長することは難しい。
つまり、「国内では勝てても、国内だけでは成長できない。」これがサッポロの現実だった。
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いまさら聞けないCarlsberg
1847年、デンマーク人醸造家であるJ.C.ヤコブセンにより創業され、170年近い歴史を持つカールスバーグ。王室御用達のビールは40か国に醸造所を持つ世界第4位のビールメーカーです。「カールスバーグ」という名前は、彼の息子カールにちなんで醸造所を「カールの山(丘)」と名付けたことが由来しているそうです。しかし そんな名前を付けたにも関わらず、その後なんと親子喧嘩をして息子カールは別会社ニュー・カールスバーグ(社名)を立ち上げます。両社は激しい競争を繰り広げるも、父親が亡くなったあとの1906年に合併します。なんとも 大きな親子喧嘩ですね。
一方、アジアでは真逆の現象が起きている。
ベトナム(ベトナム社会主義共和国/Cộng hòa Xã hội chủ nghĩa Việt Nam /首都ハノイ/人口 約1億人)
シンガポール(シンガポール共和国/Republic of Singapore/首都シンガポール/人口5800万人)
香港(Hong Kong/香港特別行政区/人口750万人)
カンボジア(カンボジア王国/首都プノンペン/人口1,700万人)
ラオス(Lao People's Democratic Republic/ラオス人民民主共和国/首都ヴィエンチャン/人口760万人)
これらの国では中間所得層が増え、「少し高くても美味しいビールを飲みたい」という需要が急激に増えている。

日本は成熟市場(Mature Market) VS アジアは成長市場(Growing Market)
特に日本ブランドは
・品質が高い
・安心
・プレミアム
というイメージが非常に強い。
つまり、
日本では成熟市場。
アジアでは成長市場。
サッポロはその波に本格的に乗ろうとしている。
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海外進出で難しいのは、「ビールを造ることではなく、ビールを売ること」
なぜカールスバーグなのか?
海外進出で最も難しいのは、「ビールを造ることではなく売ること」である。
スーパーに並べる
飲食店に入れる
物流を作る
営業マンを育てる
販売代理店を探す
これには何十年という時間がかかる。
一方カールスバーグは、東南アジアで圧倒的な販売網を持っている。
つまりサッポロは販売網をゼロから作る代わりに、「1000億円で時間を買った。」と言ってもいい。
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実はすでに成功体験がある
2024年から始まった両社の提携では、
香港
シンガポール
マレーシア
この3地域だけでSPB(Sapporo Premium Beer)の販売量は約3倍になった。
この数字が、「もっと大きくやろう」という今回の合弁会社につながった。
つまり今回の提携は、実験ではなく成功モデルの拡大版なのである。
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サッポロブランドをアジアで育てる

サッポロの本当の狙い
記事を見ると「SPBを2035年までに10倍」という数字が目立つ。
しかし本当の狙いはそこではない。
狙いは「サッポロブランドそのものをアジアで育てること。」

一度ブランドが定着すれば、
黒ラベル
ヱビス
限定商品
RTD
ノンアル
クラフト
など様々な展開ができる。
つまり、SPBは入口でしかない。
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メリット
圧倒的な販売網
カールスバーグの物流・営業・飲食店ネットワークをそのまま利用できる。
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投資効率が高い
工場をゼロから建設する必要がない。
現地工場も活用できる。
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ブランド価値向上
「日本のプレミアムビール」としてポジションを確立できれば利益率も高くなる。
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成長市場へ進出
人口が増え続ける東南アジアは、今後20〜30年のビール市場を支える地域になる可能性が高い。
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デメリット
もちろんリスクもある。
カールスバーグ依存
販売網を相手に握られる。
戦略変更があれば影響を受ける。
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ブランド主導権
販売方法によっては、サッポロらしさが薄れる可能性もある。
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現地競争
アジアではハイネケン、AB InBev、ハイネケン・ベトナム、タイビバレッジ (Thai Beverage/https://www.thaibev.com/)、チャーン(https://www.nipponbeer.jp/lineup/chang-beer/)、シンハー(https://www.singha-beer.jp/products)など巨大企業との競争になる。

決して簡単ではない。
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なぜサッポロはなぜM&Aではなく提携を選んだのか?
なぜM&Aではなく提携なのか?
サッポロは過去、北米クラフトビールへの大型投資を続けてきた。
しかし期待した成果は出なかった。
買収しても、「文化」「販売」「経営」「人材」「ブランド」は簡単には融合しない。
その経験から、今回は「買う」のではなく「組む」という選択をした。
これは非常に現実的な判断だろう。
世界のビール市場はどうなるのか?
世界のビール市場はどうなるのか
世界全体では、ビール市場は今後も緩やかな成長が見込まれる。
しかし伸びるのは数量ではない。
価値(プレミアム化)である。
消費者は「たくさん飲む」より「良いものを飲む」へ変化している。
そのため世界中の大手メーカーは
プレミアム化
ノンアル
クラフト
RTD へ投資を集中させている。
つまり、
これからは「量を売る時代ではなく、ブランドを売る時代」になる。
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Transporter視点
今回の提携で最も重要なのは、
サッポロがビールを売ろうとしていることではない。
ブランドを輸出しようとしていることだ。
クラフトビール業界でも、「良いビールを造れば売れる」時代は終わりつつある。
クラフトビール業界でも、「良いビールを造れば売れる」時代は終わりつつある。
これから必要なのは、
誰と組み、どこで売り、どうブランドを育てるか。
サッポロとカールスバーグの提携は、その象徴的な一歩と言えるだろう。
日本市場の縮小を悲観するのではなく、成長するアジア市場で日本のビールブランドの価値を高める——。その挑戦が成功すれば、サッポロだけでなく、日本のビール業界全体の海外戦略にも大きな影響を与えるはずだ。
いきなり雑学で恐縮です Beer Trivia
カールスバーグは1992年にリヴァプール(Liverpool Football Club/2022年に創設130周年を迎えた)とのパートナーシップ契約を結んで以来、“YOU’LL NEVER WALK ALONE”の応援歌の通り、長年に渡りスポンサー活動を続けています。カールスバーグがスポンサーとなってから、チームは数々のタイトルを獲得し、2019年マドリードでは European Cup 6度目の優勝を達成しました。「カールスバーグといえばリバプール」と言う方も多いはず。20年に渡りサッカーイングランド代表の公式スポンサーも務めています。

YOU’LL NEVER WALK ALONE”の動画もぜひ。

この「TAJI JARNAL」とマークされているテキストは 本誌編集長田嶋伸浩が執筆しております。

【略歴】
2013年よりクラフトビール専門誌『TRANSPORTER BEER MAGAZINE』発行人となる。
2017年ベルギー発修道院ビール『CHIMAY』と契約、ジャパンマーケテングを担当。その後もクラフトビール業界において幅広く活動、会社顧問商品開発、店舗開発,コンサルティング、ブランドプロデユース、デザイン、広告、関連の仕事を数多く行なっている。
2018年伊勢角屋麦酒顧問就任
2019年FAR YEAST BREWINGアドバイザリー就任
2021年鎌倉ビール顧問就任
FAR YEAST BREWING TOKYO 店舗開発
伊勢角屋麦酒 八重洲店・新宿店・新橋店 店舗開発
株式会社なんつね飲食部門オリジナルビール企画店舗監修
BLACK TIDE BREWING 合同会社 代表社員
株式会社FUKUOKA CRAFT 代表取締役
株式会社ライフコーポレーションでのオリジナルビール企画、デザイン。
スーパーマッケット オオゼキでのオリジナルビール企画
株式会社RETTY でのクラフトビールイベント企画。
株式会社日テレ7でのオリジナルビール企画、アドバイザリー。
※写真や資料の引用についてはその引用先を明確にして、細心の注意を持って情報を取り扱っていますが、不備な点等 ございましたら何なりとご一報ください。訂正、又は削除致します。

