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「国内では限界」──サッポロが1000億円を投じてカールスバーグを選んだ理由

日本のビール業界にとって、大きなニュースが飛び込んできた。

サッポロビールは約1000億円を投じ、世界4位のビールメーカーであるデンマークのカールスバーグとアジア事業の合弁会社を設立すると発表した。

一見すると海外進出のニュースに見えるが、本質はもっと深い。

これはサッポロが「日本で売る会社」から「世界でブランドを育てる会社」へ舵を切った瞬間でもある。

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なぜ今なのか?

答えは非常にシンプルだ。

日本のビール市場が縮小し続けているからである。

ビール類のメーカー出荷数量は1994年をピークに縮小し、日経推計で2024年はピークから約4割減った 引用:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO89324650S5A610C2TB2000/

1994年には国内ビール類市場は約7億kl近い規模があったと言われる。

しかし現在は人口減少、高齢化、若者のアルコール離れ、健康志向の高まりによって市場は長期的な縮小局面に入っている。

もちろんプレミアムビールは伸びている。

しかし市場全体を見ると、「パイの奪い合い」になっている。

黒ラベルやヱビスが好調でも、それだけでは会社全体が大きく成長することは難しい。

つまり、「国内では勝てても、国内だけでは成長できない。」これがサッポロの現実だった。

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いまさら聞けないCarlsberg

1847年、デンマーク人醸造家であるJ.C.ヤコブセンにより創業され、170年近い歴史を持つカールスバーグ。王室御用達のビールは40か国に醸造所を持つ世界第4位のビールメーカーです。「カールスバーグ」という名前は、彼の息子カールにちなんで醸造所を「カールの山(丘)」と名付けたことが由来しているそうです。しかし そんな名前を付けたにも関わらず、その後なんと親子喧嘩をして息子カールは別会社ニュー・カールスバーグ(社名)を立ち上げます。両社は激しい競争を繰り広げるも、父親が亡くなったあとの1906年に合併します。なんとも 大きな親子喧嘩ですね。

公式URL:http://www.carlsberg-japan.com/top.html

一方、アジアでは真逆の現象が起きている。

ベトナム(ベトナム社会主義共和国/Cộng hòa Xã hội chủ nghĩa Việt Nam /首都ハノイ/人口 約1億人)

シンガポール(シンガポール共和国/Republic of Singapore/首都シンガポール/人口5800万人)

香港(Hong Kong/香港特別行政区/人口750万人)

カンボジア(カンボジア王国/首都プノンペン/人口1,700万人)

ラオス(Lao People's Democratic Republic/ラオス人民民主共和国/首都ヴィエンチャン/人口760万人)

これらの国では中間所得層が増え、「少し高くても美味しいビールを飲みたい」という需要が急激に増えている。

333(バーバーバー)/Tiger Beer/藍妹啤酒 / Blue Girl/Angkor Beer/Beer Lao Lager 

特に日本ブランドは

・品質が高い

・安心

・プレミアム

というイメージが非常に強い。

つまり、

日本では成熟市場。

アジアでは成長市場。

サッポロはその波に本格的に乗ろうとしている。

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なぜカールスバーグなのか?

海外進出で最も難しいのは、「ビールを造ることではなく売ること」である。

スーパーに並べる

飲食店に入れる

物流を作る

営業マンを育てる

販売代理店を探す

これには何十年という時間がかかる。

一方カールスバーグは、東南アジアで圧倒的な販売網を持っている。

つまりサッポロは販売網をゼロから作る代わりに、「1000億円で時間を買った。」と言ってもいい。

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実はすでに成功体験がある

2024年から始まった両社の提携では、

香港

シンガポール

マレーシア

この3地域だけでSPB(Sapporo Premium Beer)の販売量は約3倍になった。

この数字が、「もっと大きくやろう」という今回の合弁会社につながった。

つまり今回の提携は、実験ではなく成功モデルの拡大版なのである。

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サッポロの本当の狙い

記事を見ると「SPBを2035年までに10倍」という数字が目立つ。

しかし本当の狙いはそこではない。

狙いは「サッポロブランドそのものをアジアで育てること。」

©SAPPORO BREWERIES LTD. All rights reserved.

一度ブランドが定着すれば、

黒ラベル

ヱビス

限定商品

RTD

ノンアル

クラフト

など様々な展開ができる。

つまり、SPBは入口でしかない。

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メリット

圧倒的な販売網

カールスバーグの物流・営業・飲食店ネットワークをそのまま利用できる。

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投資効率が高い

工場をゼロから建設する必要がない。

現地工場も活用できる。

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ブランド価値向上

「日本のプレミアムビール」としてポジションを確立できれば利益率も高くなる。

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成長市場へ進出

人口が増え続ける東南アジアは、今後20〜30年のビール市場を支える地域になる可能性が高い。

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デメリット

もちろんリスクもある。

カールスバーグ依存

販売網を相手に握られる。

戦略変更があれば影響を受ける。

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ブランド主導権

販売方法によっては、サッポロらしさが薄れる可能性もある。

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現地競争

アジアではハイネケン、AB InBev、ハイネケン・ベトナム、タイビバレッジ (Thai Beverage/https://www.thaibev.com/)、チャーン(https://www.nipponbeer.jp/lineup/chang-beer/)、シンハー(https://www.singha-beer.jp/products)など巨大企業との競争になる。

https://www.ikemitsu.co.jp/product/chang/

決して簡単ではない。

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なぜM&Aではなく提携なのか?

サッポロは過去、北米クラフトビールへの大型投資を続けてきた。

しかし期待した成果は出なかった。

買収しても、「文化」「販売」「経営」「人材」「ブランド」は簡単には融合しない。

その経験から、今回は「買う」のではなく「組む」という選択をした。

これは非常に現実的な判断だろう。

世界のビール市場はどうなるのか

世界全体では、ビール市場は今後も緩やかな成長が見込まれる。

しかし伸びるのは数量ではない。

価値(プレミアム化)である。

消費者は「たくさん飲む」より「良いものを飲む」へ変化している。

そのため世界中の大手メーカーは

プレミアム化

ノンアル

クラフト

RTD へ投資を集中させている。

つまり、

これからは「量を売る時代ではなく、ブランドを売る時代」になる。

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Transporter視点

今回の提携で最も重要なのは、

サッポロがビールを売ろうとしていることではない。

ブランドを輸出しようとしていることだ。

クラフトビール業界でも、「良いビールを造れば売れる」時代は終わりつつある。

これから必要なのは、

誰と組み、どこで売り、どうブランドを育てるか。

サッポロとカールスバーグの提携は、その象徴的な一歩と言えるだろう。

日本市場の縮小を悲観するのではなく、成長するアジア市場で日本のビールブランドの価値を高める——。その挑戦が成功すれば、サッポロだけでなく、日本のビール業界全体の海外戦略にも大きな影響を与えるはずだ。

カールスバーグは1992年にリヴァプール(Liverpool Football Club/2022年に創設130周年を迎えた)とのパートナーシップ契約を結んで以来、“YOU’LL NEVER WALK ALONE”の応援歌の通り、長年に渡りスポンサー活動を続けています。カールスバーグがスポンサーとなってから、チームは数々のタイトルを獲得し、2019年マドリードでは European Cup 6度目の優勝を達成しました。「カールスバーグといえばリバプール」と言う方も多いはず。20年に渡りサッカーイングランド代表の公式スポンサーも務めています。

YOU’LL NEVER WALK ALONE”の動画もぜひ。

この「TAJI JARNAL」とマークされているテキストは 本誌編集長田嶋伸浩が執筆しております。


【略歴】

2013年よりクラフトビール専門誌『TRANSPORTER BEER MAGAZINE』発行人となる。
2017年ベルギー発修道院ビール『CHIMAY』と契約、ジャパンマーケテングを担当。その後もクラフトビール業界において幅広く活動、会社顧問商品開発、店舗開発,コンサルティング、ブランドプロデユース、デザイン、広告、関連の仕事を数多く行なっている。
2018年伊勢角屋麦酒顧問就任

2019年FAR YEAST BREWINGアドバイザリー就任
2021年鎌倉ビール顧問就任
FAR YEAST BREWING TOKYO 店舗開発
伊勢角屋麦酒 八重洲店・新宿店・新橋店 店舗開発
株式会社なんつね飲食部門オリジナルビール企画店舗監修
BLACK TIDE BREWING 合同会社 代表社員
株式会社FUKUOKA CRAFT 代表取締役
株式会社ライフコーポレーションでのオリジナルビール企画、デザイン。
スーパーマッケット オオゼキでのオリジナルビール企画
株式会社RETTY でのクラフトビールイベント企画。
株式会社日テレ7でのオリジナルビール企画、アドバイザリー。

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