Why can't Japanese breweries break free from Excel-based management? They can't survive the next 30 years if they remain "brewing professionals, management amateurs." Let's craft the management itself.

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営業が把握している〈数字〉と 醸造チームが持っている〈数字〉が違うのはなぜ?全ては社長の頭の中だけにあるから。 

  


日本のクラフトビール業界には、妙な光景がある。

醸造設備は最新なのに、在庫管理はExcel。

最新のホップを使っているのに、原価計算は手入力。

クラウドPOSを導入しているのに、最終的な売上集計はExcel。

営業が持っている数字と、醸造が持っている数字が違う。

そして月末になると、誰かが必死になって数字を合わせている。

これは特定のブルワリーの話ではない。

日本のクラフトビール業界全体に、かなり広く存在する風景だ。

では、なぜ日本のブルワリーはExcelから抜け出せないのか。

単純に「ITに弱いから」ではない。

もっと根深い理由がある。

ブルワリーが増えた。しかし「会社」は進化したのか?

日本のクラフトビールの歴史を振り返ると、1994年の規制緩和が大きな転換点だった。

年間最低製造数量が2,000KLから60KLへ引き下げられ、小規模な醸造所が参入できるようになった。

その後、2000〜2017年は200〜300カ所程度で推移したが、2018年以降に増加。

きた産業の調査では、2025年末時点で998カ所に達している。(出典:きた産業⁠)

つまり日本のクラフトビールは、「醸造所を増やす」という30年間を走ってきた。

しかし、ここで一度立ち止まる必要がある。

醸造所は増えた。

ビールの種類も増えた。

タップルームも増えた。

醸造技術も格段に上がった。

では、ブルワリーを経営する技術は、同じスピードで進化したのか?

ここには、まだ大きな差がある。

会社が大きくなっても、創業当時の管理方法から卒業できないことが問題

Excelは悪者ではない

最初に言っておきたい。「Excelが悪いわけではない。」

むしろ、Excelは最高に優秀だ。

安い。

自由。 

誰でも使える。

計算できる。

表を作れる。

グラフも作れる。

だから、創業したばかりのブルワリーならExcelで十分だ。

ここにある。

100万円の売上ならExcelでいい。

1,000万円でもなんとかなる。

5,000万円になると少し苦しくなる。

1億円を超えて、複数の商品、複数の販売チャネル、複数のスタッフ、複数の倉庫、卸売、直販、EC、タップルーム……。

それでもExcelを使い続ける。すると何が起きるか。

Excelが「経営システム」になってしまう。

日本の小規模ブルワリーの最大の強みは〈人〉であると、同時に最大の弱点も〈人〉だと言う事実。

日本のブルワリーは「人」で回っている

日本の小規模ブルワリーの最大の強みは〈人〉で、そして最大の弱点も、人だ。

「社長しか原価が分からない」

「ブルワーしか仕込みの詳細を知らない」

「営業担当しか取引先の状況を把握していない」

経理担当しか入出金を分からない」

「店長しか店舗の本当の数字を知らない」

これでは、会社の中に情報が存在していても、会社の資産にはなっていない。

会社の情報が資産化できていない

その人が休めば止まる。

辞めれば消える、引き継ぎができない。そして、社長がすべてを確認する。

「俺が見れば分かる」という状態になる。

これは創業期には強い。  

しかし、会社が成長すると一気に弱点になる。

「社長の頭の中」が最大のERP

日本のブルワリーには、しばしば最強のシステムが存在する。

それは、社長の頭の中だ。

「このビールは去年より売れている」

「この取引先は支払いが遅れがち」

「あのホップは最近高くなった」

「この商品は粗利が低い」

「このスタッフは来月忙しくなる」

全部知っている。

だから、Excelが多少バラバラでも経営できてしまう。

しかし、それは会社が「仕組み」で動いているのではない。

一人の人間の記憶で動いているだけだ。 

これが、クラフトビール業界の大きな問題だと思う。

売上はあるのに利益が見えていない。

そして「売上」は見えても「利益」が見えない

ブルワリー経営で怖いのは、売上があることと、儲かっていることは違うという当たり前の事実だ。

例えば、1本売れた。1,000円売上が増えた。

しかし、麦芽。ホップ。酵母。缶。ラベル。箱。物流。人件費。電気。水。酒税。販売手数料。卸マージン。タップルームの経費。

こうしたコストを全部引いたら、「思ったほど利益が残っていない」ということが起こる。

さらに怖いのは、商品別の利益が見えていないこと。

商品別の売上も把握できてない

IPAは売れている。

でも原価が高い。 

限定ビールは人気がある。

でも小ロットで効率が悪い。

樽生は回転がいい。

でも物流コストが高い。

缶は売れる。でも包材が高騰している。

つまり、「売れるビール」と「会社を儲けさせるビール」は同じとは限らない。

Excel経営の最大の問題は「数字が遅い」ことExcelそのものが悪いのではない。

問題は、意思決定までに時間がかかること。

例えば、「今月、どのビールが一番利益を出している?」と聞かれたとする。

理想なら数秒で答えたい。

しかし現実には、販売データを出す。

その頃には月が終わっている。

つまり、データはあるのに、意思決定に使えない。

これがExcel経営の最大の問題だ。

「データ経営」は大企業のものだと思っていませんか?

ここも日本では誤解されやすい。

ERPなんて大手の話でしょ」

「うちは10人だから必要ない」

「うちは年間数千万円だからまだ早い」

本当にそうだろうか。むしろ人が少ない会社ほど、仕組みが必要なのではないか。

10人しかいない会社で、一人が毎週10時間を集計作業に使っていたら、

それだけで年間500時間以上になる。

その500時間を、

営業。

商品開発。 

 品質管理。

顧客対応。

スタッフ教育。 

新規事業。

に使えるなら、意味は大きい。

(※)ERP(Enterprise Resource Planning)とは、企業の基幹業務を統合し、ヒト・モノ・カネ・情報といった経営資源を一元管理するためのシステム(統合基幹業務システム)をさす。

アメリカでは「成長」から「効率」へ

https://www.brewersassociation.org/insights/redefining-success-in-brewery-operations/ 

米国では、すでにその変化が数字に表れている。

Brewers Associationによれば、2026年上半期のクラフトビール生産量は前年同期比4%減。

稼働ブルワリー数も9,515軒から9,344軒へ1.8%減少した。

2025年も米国のクラフトブルワリー数は前年比2.9%減。

新規開業は518軒から300軒へ大きく減った。

これは日本とは市場規模が違うので、そのまま比較することはできない。

しかし、ひとつの方向性は見える。

「もっと造れば売れる」から「どう効率よく利益を残すか」へ。

日本も例外ではない。

クラフトビールは成熟産業になりつつある。必要なのはDX化?

日本のブルワリーに必要なのは「DX」ではない

ここで、「じゃあDXしましょう」という話にすると、つまらない。

必要なのはDXではない。

経営者が数字を見て意思決定する習慣だ。

例えば毎週、「どのビールが売れた?」だけではなく、「どのビールが利益を生んだ?」を見る。

何リットル造った?」ではなく、

「何リットル造って、何リットル売れて、何リットル残った?」を見る。

「売上が増えた」ではなく、「売上が増えた結果、利益率はどうなった?」を見る。

そして、「人気だから造る」ではなく、「ブランド価値と利益の両方を生むから造る」

という判断をする。

これがデータ経営のスタートだ。

データ経営の先にある未来のAI経営の姿

そして、その先にAIが来る

ここで初めてAIが意味を持ってくる。

AIに、「来月どのビールを造ればいい?」と聞けばいい。

ただし、そのためには、過去の販売量。在庫。原料価格。生産能力。卸売。店舗販売。季節変動。商品別粗利。うしたデータが整理されていなければならない。

AIがブルワリーを変えるのではない。

データを整理しているブルワリーが、AIによってさらに強くなる。

ここを間違えてはいけない。

では、日本のブルワリーは何から始めるべきか

いきなり高額なシステムを入れる必要はない。

まずは、

SKUごとの本当の原価を知る

麦芽だけではない。ホップ、酵母、缶、ラベル、箱、物流、酒税まで含める。

② 商品別の粗利を見る

「売れた」ではなく、「いくら残ったか」を見る。

③ 在庫をリアルタイムで把握する

原料だけではない。缶、瓶、ラベル、樽、段ボールまで含める

卸。

EC。

タップルーム。

飲食店。

イベント。

同じ1万円の売上でも、利益は全く違う。

⑤ 「社長しか分からない」をなくす

会社の情報を、人の頭からシステムへ移す。

ここが一番重要だ。

Excelを捨てる必要はない

最後に、誤解してほしくない。

Excelを捨てろと言っているわけではない。

Excelは今後も必要だ。

Excelを「唯一の真実」にしてはいけない

問題は、Excelが会社の「唯一の真実」になっていること。

会社の正しい数字が一つにまとまっていて、その数字を必要な人が必要なタイミングで見られる。

その上でExcelを使えばいい。

Excelは「道具」になる。Excelが「経営そのもの」になってはいけない。

日本のクラフトビールは、次の30年へ行けるのか?

2025年末、日本の醸造所数は約1,000カ所。

30年前とはまったく違う景色になった。

ここから先は、ただブルワリーを増やす時代ではない。

ブルワリーを続ける時代だ。

良いビールを造る。

良い店を作る。 

良いブランドを作る。

そして、利益を残す。

スタッフに給料を払う。

設備を更新する。

農家から原料を買い続ける。

新しいビールに投資する。

地域に貢献する。 そのためには、情熱だけでは足りない。

醸造技術だけでも足りない。

経営技術が必要になる。

自分たちの会社を自分たちの手で設計すること

「自分たちの会社を、自分たちの手で設計すること」。

「クラフト」の最後の仕事

クラフトビールという言葉は、これまでずっと「小さく造ること」「手仕事で造ること」

「個性的なビールを造ること」として語られてきた。

でも、これからのクラフトはもう一つ増えるかもしれない。

「自分たちの会社を、自分たちの手で設計すること」。

どの商品を造るのか

 誰に売るのか?

どこで利益を出すのか?  

何を残して、何をやめるのか

どこに人を使うのか

どこを自動化するのか?

その判断を、勘だけではなくデータでも支える。

それができて初めて、「良いビールを造る会社」から「良いビールを、10年、20年、30年造り続けられる会社」になれる。

Excelを捨てることが目的ではない。

Excelの向こう側へ行くこと。日本のクラフトビール業界が次の30年を迎えるために、今必要なのは、新しいホップでも新しいスタイルでもない。

もしかすると、「経営そのものをクラフトする」ことなのかもしれない。

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