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AMERICAN BEER COLUMN #4 「アメリカ式クラフトビールイベント事情」

TRANSPORTER BEER MAGAZINE No.11(2016)

2022年 11月 14日 10時 03分 投稿 343 Views
 クラフトビールのイベントといえば、日本では屋内外スペースでたくさんのブリュワリーが並ぶ屋台式ブースから好みの味を選んで堪能する、まさに日本での「ビールイベント」の風景。もちろんアメリカでもそういったブリュワリーがたくさん並ぶイベントもあるが、今回は最近注目されているブリュワリーが独自の視点で独特の感性で開催する他のカルチャー、ブリュワリーを巻き込むアメリカ式ビールイベントをご紹介。

>>Sierra Nevada Beer Camp Across America

 Sierra Nevada が2 年に一度開催するのが「Beer Camp Across America」。数多くのクラフトブリュワリーを巻き込み、アメリカ国内各都市で大規模なビアフェスティバルを開催。2016 年はアメリカにある全てのクラフトブリュワリーに招待状を送り、結果的に全体の15% 以上、ゆうに600 を超えるブリュワリーが参加。6 月の1 ヵ月間でフロリダ州タンパ(6/4)、シアトル(6/11)、ミルウォーキー(6/11)、サンフランシスコ(6/18)、ボストン(6/18)、ロサンゼルス(6/25)の各都市で実施され、規模も最大級。このイベントの注目すべきポイントはアメリカ全土のブリュワリー達とコラボレーションした限定ビールが醸造されること。今年は31 のブリュワリーがコラボレーションに参加し、地域ごとに5 ブリュワリー+Sierra Nevada で1 チームを組み、合計6 チームが6種類のビールを醸造した。ビアスタイルもImperial Session IPA、Session Rye with Hibiscus、Robust Stout など非常に独創的。実力のあるブリュワリーが手を組んでビールの枠を押し広げるような作品を生み出している。600 以上のブリュワリーが参加して、アメリカ全土でコラボレーションビールを醸造するといった大規模なイベントを実施できるのは、業界のパイオニアとしてクラフトビールシーンを牽引し続けているSierra Nevada だからこそ。

>>New Belgium Tour de Fat

 

 New Belgium が毎年アメリカ各都市で開催する一大自転車イベント。環境に優しいサスティナブルな移動手段として自転車の認知度を高め、より多くの人に自転車のある生活を楽しんでもらおうという目的で始められた。「Tour de Fat」は日本ではまず見られない程ユニークなお祭りで、何千人もの参加者が様々なコスチュームを着て自転車パレードを行ったり、全国ツアーをしている劇団の演劇を見たり、自転車の景品を賭けたダンスコンテストを開催したりと自転車の素晴らしさをお祝いするための楽しい催しの数々。中でもビールの名前がついた「Slow Ride コンペティション」は、自転車に乗ってどれだけ遅く進めるかを競うといった笑いあふれる競技でもある。アメリカ東海岸から西海岸まで各主要都市で開催され、2016 年はワシントンDC に始まりシカゴ、デンバー、サンディエゴなどを巡りアリゾナ州でフィナーレ。ブリュワリーの本拠地フォートコリンズで始まったこのフェスティバルは自転車の啓蒙運動としてだけでなく、とびきり楽しいアミューズメントとして全国的に楽しまれている。New Belgium らしいブリュワリーの独特な個性を感じ取れるフェスティバル。

 

>>Lagunitas Beer Circus

 Lagunitas はカリフォルニア州ペタルーマ、イリノイ州シカゴに生産拠点を構える。その2 ヵ所のブリュワリー施設内で年に1 度開催されるのが「Lagunitas Beer Circus」だ。「Lagunitas Beer Circus」の様子を一度でも見れば、このイベントが「ビアフェスティバル」でなく「サーカス」と呼ばれる理由が分かるだろう。本当にサーカスのような大規模なステージがセットされ、ビール好きの大人だけでなく、子供たちも歓迎され、音楽ライブやコスプレをしたパフォーマーが雑技団のようなパフォーマンスをしたり、妖艶なポールダンスを踊ったり。またステージに限らず会場内の至る所で様々な仕掛けが楽しめ、ピエロが機械仕掛けのユニークな自転車に乗りながらビールを注いで回っていたり、クレーンで吊った足場の上でドラム演奏を行っていたかと思えば、最後にさりげなくブリュワリー創業者のTony Magee がステージに立って気持ち良さそうにギターを演奏していたりと、ホップの効いたビールを片手に最高の非日常体験を味わえるのだ。チケットは毎年、発売と同時に即完売というほど入手困難。参加に勝るものはないが、YouTube で「Lagunitas Beer Circus」の動画を見て頂きたい。あらためてLagunitas のやんちゃ具合とマッチするビールに納得だろう。

 

 

>>Firestone Walker Invitational Beer Fest

 世界各国の50 ものトップブリュワリーを、Firestone Walker の本拠地パソロブレスに招待して開催されている通称「FWIBF」。世界最高峰のブリュワーだけでなく、クラフトビールシーンの先頭に立っているブリュワー達にもスポットライトを当てたワールドクラスのビアフェスティバルを開催するという夢のもとに誕生。音楽ライブと共に総勢100 種類以上ものビールが楽しめるだけでなく、トップブリュワーたちによるパネルディスカッションなども観覧することが出来る。毎年Firestone Walker の独断で招待されるブリュワリーは、アメリカだけでなく、イギリスやドイツ、イタリアなど、過去には日本からヤッホーブルーイングも招待されたこともある。2016年の3,000 人分のチケットは発売から30 分経たないうちに完売するなど、開始からまだわずか5 年のイベントながら全米最高峰ビアフェスティバルとして高い評価を受けている。

>>Stone Hop-Con

 Stone が2013 年より毎年限定醸造するコラボレーションビール「w00tstout」。このビールはコラボレーションの相手がブリュワーでなく俳優(Will Wheaton)と起業家(Drew Curtis)というユニークな側面を持つが、パッケージラベルもさらにユニーク。毎年アメコミの作者やカバーイラストレーターが描くラベルにはコミック調のWill Wheaton、Drew Curtis、Greg Koch がデザインされる。そしてこの「w00tstout」のリリースに合わせて開催されるのが「Hop-Con: The w00tstout Festival」。サンディエゴで行われるコミックイベントComic Con をもじったHop-Con は、w00tstout やStoneのホッピーなビールが味わえる他、レトロなアーケードゲームも楽しめるなど、異文化体験に近い異色なフェスティバル。開催されるStone Brewing Liberty Station は、サンディエゴの飲食店として66,000 平方フィート(約6,000㎡)という最大級の広さを誇り、その広大な敷地はStone のビールと美味しい食事を楽しむ人だけでなく、コスプレをして盛り上がる人達で溢れかえるほどの盛況。

>>Modern Times Festival of Funk

 「Modern Times Festival of Funk」はセゾン、サワービールなど「Funk」な要素を持つビールに特化したフェスティバル。「Funk」とはサワービール、野生酵母を使用したビールに良くみられるアロマで、農家や馬小屋を連想させるような独特なアロマを指す。イベントではアメリカ国内からAlmanac、The Bruery、Allagash、Firestone Walker Barrelworks などに加え、アメリカ国外からCantillon、Mikkeller など様々なブリュワリーが50 社近く集まり、ファンキーなビールでビアギーク達を歓喜させるマニアックなフェスティバルだ。ちなみにこのイベントはチャリティーの側面としてサンディエゴのより良い自転車文化の発展に尽力するBikeSD や、南カリフォルニアの自然保護を行うCleveland National Forest Foundation に売上の一部を寄付している。

「いつかはアメリカビール旅を」とお考えの方は、日本では味わえないような非日常体験のフェスティバルもアリ。ただしチケット手配はお早めに!!!
(資料協力/ アンテナアメリカ: 柳瀬)

大平朱美akemiohira
( 株) ナガノトレーディング代表取締役
アメリカビール冷蔵管理輸入のパイオニア。アメリカ食文化情報発信基地として横浜関内に直営店Antenna America を運営。カリフォルニア在住。
     

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