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AMERICAN BEER COLUMN #26 -「日本のスーパーがアメリカの品揃え?! キーワードは「種類」だ!」編-

TRANSPORTER BEER MAGAZINE No.33(2022)

2022年 11月 14日 10時 03分 投稿 488 Views
 2021 年。コロナ禍で人々の価値観や行動は大きく、いろんな意味でドラマティックに変わった。私個人の感想として、その変化の一つが、クラフトビールの認知度アップ。某社の商品が発端で「クラフトビールの定義が云々」と言いたくなるのもわかるけれど(笑)、そもそも「クラフトビール」という言葉自体の認知度があがり、街中で話題を振りまいている事実。これほどまでに簡単に「クラフトビール」という言葉をより浸透させたことには、心から称賛を送るべきだろう。そういった効果もあってか、今までお伝えしてきたアメリカのクラフトビールのマーケットでの立ち位置が、知らない間に日本でも「クラフトビールが市民権を得た!」と言ってもいいそれに近づいているのかも、と思える日がやってきていた!

 「アメリカのスーパー」と言えば?様々な色や大きさがずらりと並ぶ野菜コーナー?「一体何人前?」と思うような大きな塊肉がごろごろ並ぶ肉コーナー。そして本誌ご愛読の皆さんにはお馴染みの国産大手や海外大手ビールとは別に並ぶ「クラフトビールコーナー」だろう。

 ずらりと長い大きな冷蔵庫。上から下、右から左まで目移りしそうなほどの個性豊なクラフトビールたち。アメリカでは基本的には日本のように1本ずつでの販売は少なく、同一種類のパック販売。通常は上段や中段に4 本パックや6 本パック。パックは、同一種類で4 本パック= 2 本×2列、または6 本パック=2 本×3列で陳列。1面で2 本あるのでそれが棚に並ぶと1商品が2 本ずつ並んでいるように見える。そこで垣間見られるのは、ブリュワリーのマーケティングセンス。360 度デザインのできる缶の特性を活かしたデザイン。表面と裏面でパッケージデザインが並ぶようにしたり、全く違う商品のように見えるデザインにしたり。昨今、需要増の缶に注目が集まりがちだがボトルも同様。ボトルの場合は6パック(4パック)ケースと呼ばれるケースに入れられ、そのケースデザインもマーケティングの大事な要素であることには変わりなし。一方、陳列冷蔵庫の下の段には大きめの箱が並ぶ。12 本や24 本の同一単品のケースや、ブリュワリーの人気ラインナップ3−4種類商品が入る、いわゆる「ブリュワリーミックスケース」も並ぶ。ちなみにミックスケースは、この数年急上昇アイテムとして種類も数も増加傾向。ブリュワリーの看板商品でもあるコア商品を数種取り揃えたものや、4 本や6 本パックでは販売していないミックスケースのみの限定商品を含めたスペシャルセットなど、年々ブリュワリーのセンスも研ぎ澄まされ多彩になってきている「ビール好き」には嬉しい宝石箱のようなバラエティパックだ。

 アメリカでのクラフトビール成功事例のキーワードでもある「大きな冷蔵庫にズラリ」「種類多く多彩な品揃え」「ミックスケース」といったところからも顕著であるように、消費者が魅力を感じるのが「種類」、つまり「消費者が選ぶ権利」とでも言えるだろうか。多種多様な商品を店舗の担当者がビールスタイルやブリュワリーなどで分類して陳列、消費者自身の(いい意味での)悩む楽しみを演出。そこに安定するいつもの味とその時々の新しい商材が混在し、それを「どれにしようかなー」とニタニタしながら選ぶ(悩む)楽しみ。それをさらに盛り上げるのが冷蔵庫の上部に並ぶブリュワリーや商品のネオンサイン。アメリカでは、「クラフトビール」は「個性的」とか「こだわり」とかはすでに周知の事実であり、それを超えて「ワクワク・ドキドキ」させるという役割を担っているものだと思う。だからこそ「種類」が重要であり、そのことによって消費者・ビールファンは「悩むほど楽しい」食文化の喜びを享受する。そんなアメリカ的クラフトビールの波が、ようやく日本にも到達!このコロナ禍に大きく変わった日本の「クラフトビールシーン」をぜひ体験していただきたい。

<国内最大級のクラフトビールのユートピア誕生!/ロピア京都ヨドバシ店>

 2021 年11 月クラフトビール界に激震!京都駅から徒歩5分のヨドバシカメラ京都店の地下2 階「ヨドチカ」にオープンしたロピア。激震の理由は、何と言っても東京首都圏より先陣を切っての日本最大級のクラフトビールの品揃えだ。売り場は、国内外300 種類というまさに「クラフトビールのユートピア」と呼べるほどの超ド級な圧巻の売り場。アメリカンな雰囲気を意識したウッド調に整えられた壁面と冷蔵庫装飾のクラフトビールコーナーは、アメリカの酒屋さんを思い起こさせるような雰囲気。もちろん、冷蔵庫の上部にはブリュワリーのネオンやサインなどが所狭しと並び、まさに気分はアメリカ!並ぶ商品はもちろんアメリカでのパック売りのように同一種類2列に陳列されたデザイン個性も光る色とりどりなビールたち。ロピアはもともと関東で「お肉の安いスーパー」というイメージで親しまれている正直クラフトビールの品揃えはなかったチェーンスーパー。それが関西初出店でイメージを一新した店作りは、一瞬で全国のクラフトビールファンを虜にしたに違いない。関西の地元のファンにはもちろんのこと、東京やそのほか地域からの旅行、出張の方にも、新幹線に乗る前にはぜひチェックを。

<心機一転クラフトビールに本気になった!/ ドン・キホーテ>

ドンドンドン!ドン・キホーテ♪でおなじみのドン・キホーテも 2021 年、クラフトビールに舵を切ってきた。それも今まで常 温の商品のみで展開していたが、このクラフトビールの導入に あたり、冷蔵庫がなかった店舗に冷蔵庫を新たに増設するなど、 本気の本気だ。今までの「安いもの」「常温置き」という方針を 取りやめ、種類豊富な高品質なクラフトビールを品質重視の観 点から冷蔵スペースでの販売を開始。最初は数店舗からの開始 だったが、その反響の強さに驚きも隠せず、瞬く間の店舗拡大 もさることながら、その品揃え、種類の多さも大きな魅力(店 舗により状況は異なります)。アメリカでの人気の商材が定番か ら限定商品まで多彩に並ぶクラフトビールコーナーも、ドンキ ホーテらしい「宝探し感覚」で体験できるのは嬉しい。八重洲店の「お酒ドンキ」はその骨頂としても注目。新幹線乗り場からも、長距離バス乗り場からも近いのでこちらも旅行、出張のお供にぜひお勧めしたい。

展開店舗:お酒ドンキ店、ドン・キホーテ中目黒本店、錦糸町店、
稲毛長沼、合志店など。

<身近なスーパーのバイヤーの心を動かしたクラフ トビール!/イトーヨーカドー>

今年から本格的展開が始まったばかりというのに現場も驚く需 要の高さで、順調にお客様の心にクラフトビールの火をつける ことに成功したのがイトーヨーカドー(現在の展開は首都圏中 心)。なんといっても店長がクラフトビールの魅力に心を奪われ、 従来の概念からビール売り場を一新する「クラフトビールの品 揃えで唸らせる店舗展開」を熱望。その情熱は、日頃からクラ フトビールに接している私たちを凌駕するほどの思い。それに お応えできるように、今まで常温置きで種類も少なかったビー ル売り場を、「アメリカといえば!」というラインナップで種類 も豊富にずらっと取り揃え、まるでアメリカのスーパー並み!日 常のお買い物をしながら 同じカゴに自分の好きな クラフトビールを入れる 喜びは、アメリカでの日 常のお買い物スタイルそ のもの。 展開店舗:川崎港町店、 大和鶴間店、湘南台店、 アリオ葛西店、藤沢店、 能見台店、アリオ北砂店、 食品館瀬谷店など

 今回の掲載はほんの一部。他にももちろん「種類を取り揃えること」に注目した取り組みをしている店舗がたくさん。ここではすべては伝え切れないけれど、クラフトビールの楽しみの一つはそのバラエティさにあり、ビールを愛する消費者としては、そのバラエティ豊かな品揃えから「今日は何にしようかな」と迷う楽しみだと思う。手前味噌だけれど、弊社直営店舗Antenna America でも、唯一50 種程度しか展開できなかった品川店(アトレ品川内)でも冷蔵庫を増設。これで皆様を毎日悩ませ、迷わせることができるはず。

 2022 年。皆様のご健康と、楽しいクラフトビール生活を送ることができますよう祈念して。

大平 朱美 akemi ohira
( 株) ナガノトレーディング 代表取締役 アメリカンクラフトビール冷蔵管 理のパイオニア。
アメリカ食文化 発信基地Antenna America(品 川・横浜・関内)を展開。夫は 創業者 Andrew Balmuth。
     

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