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出典:日本財団ジャーナル

ヨーロッパで広がるフードロスビールの取り組みは、日本のクラフトビール業界にとっても決して他人事ではない。

むしろ今の日本だからこそ、大きな可能性を秘めていると言える。

日本では年間約470万トン以上の食品ロスが発生している。その中にはコンビニやスーパーの売れ残りパン、製麺工場の余剰麺、規格外農産物、菓子メーカーの端材など、まだ十分活用できる食材が数多く含まれている。

一方でクラフトビール業界は、麦芽価格の高騰、円安による輸入コスト増加、エネルギーコスト上昇という厳しい現実に直面している。

ヨーロッパの事例を見ると、フードロスビールの価値は単なる原料コスト削減ではない。むしろ、

「地域とつながること」にこそ本質がある。

Toast brewing
2016年 ロンドンで創業 売れ残りのパンからビールを醸造。パンを利用した酒の醸造は古代から存在する方法だ。メソポタミアやエジプトの人々が焼いた小麦のパンから「神聖な飲み物」と表現されるビールを作った紀元前4000年頃の方式に基づいたレシピを使用しており、パンに大麦麦芽、ホップ、酵母、水を組み合わせてラガーやエールビールを作っている。
TOASTによると、現在世界では食べられる食料のうち実に40%もの量が廃棄処理されており、その筆頭がパンだという。
Lowlander 
廃棄予定のクリスマスツリー(フードじゃないけど)を集めてビールを醸造する取り組みを行っている。通常、ヨーロッパではクリスマスに本物のモミの木を使っているので、毎年5,000万本のモミの木が伐採され、1月中旬から下旬ごろには廃棄されてしまう。本取り組みでは、オランダのバーやレストランで飾られ、捨てられるクリスマスツリツリーの葉を使って、ビールに微妙な味わいを加えている
Beer the First
様々な企業とタイアップし、廃棄間近の食材を生かしたクラフトビールを通じて、自然環境と人間の生活文化がより良く循環する社会を目指しています。
参考例:【日本航空×UTAGE BREWING】成田空港JAL国際線ラウンジのお米をアップサイクルしたサステナブルなクラフトビール「Japan Arigato Lager」2024年3月1日発売
佐賀アームストロング醸造所
佐賀アームストロング醸造所と福田製パンが連携し、廃棄されるパンの耳を活用したクラフトビール「Sagan Toast」を開発。
JUNGLE BREWERY
主役になりきれなかった食材たちのアナザーストーリーをつくる「YORIMICHI」がコンセプト。北海道の廃棄野菜を使って作られたクラフトビール『FULL MOON RABBIT』を販売

例えば地方都市を見渡せば、人気ベーカリーは数多く存在する。

毎日発生する売れ残りパンや製造ロス。

これらを廃棄物として処理するのではなく、地域ブルワリーが回収してビールへと生まれ変わらせる。

すると、パン屋は廃棄コストを削減できる。

ブルワリーは新たな原料を得られる。

消費者は地域ストーリーのあるビールを楽しめる。

まさに三方良しの循環が生まれる。

欧州で成功したブルワリーの多くも、最初はこうした小さな地域連携からスタートしている。

Better life with upcycle(日本)
パン屋としての創業は1923年。創業100年を超える老舗。パンのミミを原料につくられたアップサイクルクラフトビールの反響は上々で、自分たちのものづくりへの思いは間違っていなかったんだと思うととても勇気をもらいました。これは自社でしっかり取り組むべき事業ではないかという思いは次第に強くなり、2024年2月にアップサイクルがコンセプトのブルワリー「Better life with upcycle」をオープンさせました。
bricolage bread & co.
ミシュラン3つ星レストラン「L’effervecence(レフェルヴェソンス)」のシェフである生江さんのベーカリー「bricolage bread & co.」とのコラボしてつくられたのが「BREAD」という名のビール

日本の強みはパンだけではない。

例えば、

  • 酒米の規格外品
  • 余剰うどん
  • そうめん
  • ラーメン麺
  • せんべい
  • カステラ
  • バウムクーヘン
  • あんこ
  • 規格外果実→こんな専用サイトあります。
「食べチョク」

など、海外にはない独自の原料が数多く存在する。

クラフトビールが得意とする「地域性」を活かせば、

北海道なら余剰小麦。

香川ならうどん。

長崎ならカステラ。

山梨なら規格外ぶどう。

地域ごとに全く違うフードロスビールが生まれる可能性がある。

欧州の研究で最も興味深かったのは、成功したブルワリーが「設備」や「技術」を重視していなかったことだ。

成功要因は、

  • 共感できるパートナー
  • 地域との関係性
  • 継続する意思
  • サステナビリティへの理解

だった。

つまり、

「パンを入れたから成功する」わけではない。

「なぜそのパンを使うのか」

「誰と一緒に取り組むのか」

というストーリーが重要なのである。

大手ビールメーカーは何百万本という規模で製造する。

しかしクラフトブルワリーは違う。

1回限りの実験醸造もできる。

地域のパン屋1軒とでも取り組める。

小ロットだからこそ挑戦できる。

これはクラフトビールが持つ最大の武器だ。

クラフトビール業界では近年、「次の成長戦略は何か」が議論されている。

タップルーム。
観光。

輸出。
ノンアルコール。

様々な可能性が語られているが、「フードロスビール」はそれらとは少し文脈が違う。

これは新しいビアスタイルではない。

新しい醸造哲学である。

捨てられるはずだった食材を、地域の価値へ変える。

ビールを通じて人と人をつなぐ。

そんな取り組みこそ、クラフトビールが本来持っていた地域文化の再発見なのかもしれない。

欧州の先進事例が示しているのは、フードロスビールの成功は設備投資ではなく「地域との共創」から始まるということだ。

そしてそれは、日本のクラフトビール業界が最も得意としてきた分野でもある。

※このテキストは編集部が原稿を構成しています。写真や資料の引用についてはその引用先を明確にして、細心の注意を持って情報を取り扱っていますが、不備な点等 ございましたら何なりとご一報ください。訂正、又は削除致します。

この「TAJI JARNAL」とマークされているテキストは 本誌編集長田嶋伸浩が執筆しております。


【略歴】

2013年よりクラフトビール専門誌『TRANSPORTER BEER MAGAZINE』発行人となる。
2017年ベルギー発修道院ビール『CHIMAY』と契約、ジャパンマーケテングを担当。その後もクラフトビール業界において幅広く活動、会社顧問商品開発、店舗開発,コンサルティング、ブランドプロデユース、デザイン、広告、関連の仕事を数多く行なっている。
2018年伊勢角屋麦酒顧問就任


2019年FAR YEAST BREWINGアドバイザリー就任
2021年鎌倉ビール顧問就任
FAR YEAST BREWING TOKYO 店舗開発
伊勢角屋麦酒 八重洲店・新宿店・新橋店 店舗開発
株式会社なんつね飲食部門オリジナルビール企画店舗監修
BLACK TIDE BREWING 合同会社 代表社員
株式会社FUKUOKA CRAFT 代表取締役
株式会社ライフコーポレーションでのオリジナルビール企画、デザイン。
スーパーマッケット オオゼキでのオリジナルビール企画
株式会社RETTY でのクラフトビールイベント企画。
株式会社日テレ7でのオリジナルビール企画、アドバイザリー。

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