The first craft beer in a can: How Oskar Blues changed the way Americans carry their beer.

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クラフトビールは、どこで飲むものだったのだろう。

写真はイメージ/https://www.rhombusconnexion.com/tap-room

ブルワリーのタップルーム。


街のビアバー。
レストラン。
あるいは、冷蔵庫から取り出して、家でゆっくり飲むもの。

2000年代初頭まで、アメリカのクラフトビールには、そんなイメージがあった。

そして、もうひとつ。

クラフトビールは、基本的に「瓶」に入っていた。

そんな常識に、コロラドの小さなブルワリーが疑問を投げかけた。

名前は、Oskar Blues。

彼らが選んだのは、瓶ではなく――缶だった。

そのビールの名前は、Dale’s Pale Ale。

Dale’s Pale Ale

現在では「クラフトビールを缶で飲む」ということは、当たり前になった。

しかし、その当たり前が当たり前ではなかった時代がある。

そして、その扉を開いたビールのひとつが、Dale’s Pale Aleだった。

1997年、ビールをつくるための店ではなかった

Oskar Bluesがコロラド州ライオンズの303 Main Streetでスタートしたのは1997年。

創業者dale katechisが始めたのは、最初から大規模なブルワリーだったわけではない。

Dale Katechis hoists a pint at his Oskar Blues Grill & Brew location in Lower Downtown Denver on Oct. 5, 2022.
Ed Sealover | Denver Business Journal

南部料理とブルースを楽しめる、小さなレストランだった。

Daleにはホームブルーイングの経験があった。

そして、「この店には、この店でしか飲めないビールが必要なんじゃないか」

そんな発想から、自分たちのビールをつくり始める。

そこで生まれたのがDale’s Pale Aleだった。

当時のアメリカは、クラフトビールの大きな変化が始まっていた時代だ。

がホップの効いたPale Aleの可能性を広げ、

RogueやStoneなどが「クラフトビールとは何か?」を次々に塗り替えていた

Oskar Bluesも、その流れの中にいた。

ただし、彼らが後に変えることになるのは、ビールの味だけではなかった。

ビールの“運び方”だった。

2002年、一本のファックスから始まった

2002年。

その中にあったのが、ハンド・キャン・シーマー(手動缶シーラー/巻締機)。

写真はイメージhttps://www.amazon.co.jp/-/en/Vituord/dp/B0DGGM2237

普通なら、捨てられていてもおかしくない一枚のファックス。

しかしDaleは、そこに可能性を見た。

当時、Oskar Bluesが活動していたコロラドは、ロッキー山脈を中心にハイキング、マウンテンバイク、スキーなどのアウトドア文化が盛んな場所だった。

そこで問題になったのが、瓶だった。

重い。

割れる。

そして、場所によってはアウトドアでの使用そのものが難しい。

ならば、「クラフトビールを缶に入れたらどうなる?」

Oskar Bluesは、その答えを試した。

2002年、Dale’s Pale Aleを手作業で缶詰めし始める。

Oskar Blues自身が現在も「Original Craft Beer in a Can」と呼ぶ挑戦の始まりだった。

「クラフトビールを缶に入れるなんて」

当時の反応は、当然ながら簡単なものではなかった。

クラフトビールといえば瓶。

ラベルのデザインも含めて、瓶そのものが「クラフトビールらしさ」をつくっていた。

方、缶は大量生産される大手ビールの象徴だった。

つまり、瓶=クラフト 缶=マスビール

んなイメージが強かった。

そこにOskar Bluesは、ホップの効いた6.5%のPale Aleを入れた。


では、どんなビールなのか?

Dale’s Pale Ale

現在のDale’s Pale Aleは、

American Pale Ale
ABV 6.5%
Cascade / Centennial / Comet

という構成。

香りは、松、柑橘、ダンクなホップ。

味わいはしっかりしたモルトの甘みと、かなり明確な苦味。

現在のOskar Bluesの説明でも、piney citrus hop、caramel malt、bitterという表現が使われています。

つまり、今の感覚で飲むと、「これ、ほとんどWest Coast IPAじゃない?」と思う人もいるはずです。

でも、当時はこれがPale Aleだった。

ここが2000年代アメリカのクラフトビール

これを缶に入れた。

つまり彼らは、「缶でもクラフトビールは成立する」ということを、ビールそのもので証明しようとした。

缶は「妥協」ではなかった

ここがDale’s Pale Aleの面白いところだ。

缶に

した理由は、単純に安かったからではない。

むしろ、缶にはクラフトビールにとって大きなメリットがあった。

光を通さない。

酸素の侵入を抑えられる。

軽い。

割れない。

持ち運びやすい。

そしてリサイクルできる。

Oskar Bluesは、缶によってビールを「ブルワリーから家まで運ぶもの」から、「山へ持っていくもの」へと変えた。

ハイキング。

マウンテンバイク。

©︎Oskar Blues Brewery

キャンプ。

ロードトリップ。

川辺。

山の上。

それまで瓶では持っていきにくかった場所に、クラフトビールが入っていった。

これは、単なるパッケージ変更ではない。

ビールを飲む場所そのものを変えた。

2005年、Dale’s Pale Aleが証明したこと

そして2005年。

Dale’s Pale Aleに大きな転機が訪れる。

New York TimesがブラインドテイスティングでDale’s Pale Aleを「best pale ale in the country」と評価した。

れはOskar Bluesにとって決定的だった。

なぜなら、

「缶に入っているクラフトビールだから面白い」

ではなく、「缶に入っていても、いや、缶に入っていても最高のクラフトビールになれる」ことを証明したからだ。

Dale Katechisは、この評価によって「自分たちは変わったことをしているだけではない」と認められた感覚を持ったと振り返っている。

そして、ここからOskar Bluesの成長は加速する。

2003年にはFrontier Airlinesの機内でもDale’s Pale Aleが提供され、2005年の評価を経て、その後大きく成長していく。

https://www.flyfrontier.com/

ビールを持っていく」という発想

クラフトビールの歴史を振り返ると、私たちはつい「どんなビールをつくったか」に注目する。

IPA。

Pale Ale。

Stout。

Saison。

Hazy IPA。

Lager。

もちろん、それは重要だ。

しかし、Oskar Bluesが変えたのは、ビールのスタイルではない。

ビールと人との距離だった。

それまでクラフトビールは、「店で飲むもの」「家で飲むもの」だった。

それが、「自分が行く場所に持っていくもの」になった。

この違いは大きい。

山に登る。                                                                   

自転車で走る。

キャンプをする。

旅をする。

そして、その場所でビールを開ける。

クラフトビールが「場所に縛られた飲み物」から、「ライフスタイルと一緒に動く飲み物」へ変わっていった。

写真はイメージ/写真提供:Far Yeast Brewing

そして、アメリカ中のブルワリーが缶を使い始めた

Oskar Bluesの挑戦から時間が経つにつれて、クラフトビールの缶は珍しいものではなくなっていった。

現在では、IPAも。

Pilsnerも。

Stoutも。

Sourも。

Hazy IPAも。

ほとんどすべてのスタイルが缶に入る。

そして、クラフトビールの缶はデザインそのものが広告になった。

冷蔵庫を開ける。

そこに並ぶカラフルな缶。

店頭に並ぶ。

SNSに投稿される。

旅先で撮影される。

つまり缶は、単なる容器ではなくなった。

メディアになった。

この変化を考えると、2002年のOskar Bluesの決断はかなり大きい。

Dale’s Pale Aleは「缶のビール」ではない

現在、Oskar BluesはDale’s Pale Aleを「The Original Craft Beer in a Can」と位置づけている。(Oskar Blues Brewery⁠)

でも、Dale’s Pale Aleの本当の価値は、「最初に缶に入れたこと」だけではないと思う。

重要なのは、

クラフトビールに存在していた“こうあるべき”を壊したこと。

クラフトビールは瓶でなければならない。

クラフトビールは店で飲むもの。

クラフトビールは特別な場所で飲むもの。

そんな固定観念を、

「もっと自由でいいんじゃないか」と変えた。

2002年から、24年

2026年

Oskar BluesがDale’s Pale Aleを缶詰めし始めてから24年になる。

いま、私たちにとって缶は当たり前だ。

コンビニにもある。スーパーにもある。

ブルワリーにもある。

ビアバーにもある。そして、キャンプ場にもある。

だからこそ忘れてしまう。

昔は、それが当たり前ではなかった。

2002年、コロラドの小さなブルーパブが、一台の手動シーマーで始めた挑戦。

それは「瓶を缶に変える」という小さな変更だった。

しかし、その小さな変更が、クラフトビールを山へ連れていった。

自転車へ連れていった。

キャンプへ連れていった。

旅へ連れていった。

そして最終的には、世界中のクラフトビールを缶に入れる流れを後押しした。

Oskar Blues

ビールは、味だけでは進化しない

クラフトビールの歴史には、いくつもの革命がある。

Sierra Nevadaがホップの可能性を広げた。

Rogueがブランドと個性を結びつけた。

そしてOskar Bluesは、 「ビールをどう持ち運ぶか」 を変えた。

ビールは味だけで進化するわけではない。

容器。

流通。

飲む場所。

飲み方。

そして、そのビールを持ってどこへ行くのか。

そこまで含めて、ビール文化は進化していく。

2002年、Oskar Bluesは一台の小さな缶詰機を手に入れた。

そこから始まったのは、単なる缶ビールの製造ではなかった

クラフトビールは、もっと遠くまで行ける」という発想だった。

そして今、私たちは当たり前のように缶を手に取り、山へ向かう。

その缶の中には、2002年にコロラドで始まった、ひとつの挑戦の続きを飲んでいるのかもしれない。

クラフトビールを缶に入れた。

それは、ビールを小さくしたのではない。

ビールが行ける場所を、広げたのだ。 

この「TAJI JARNAL」とマークされているテキストは 本誌編集長田嶋伸浩が執筆しております。

【略歴】 田嶋伸浩

2013年よりクラフトビール専門誌『TRANSPORTER BEER MAGAZINE』発行人となる。
2017年ベルギー発修道院ビール『CHIMAY』と契約、ジャパンマーケテングを担当。その後もクラフトビール業界において幅広く活動、会社顧問商品開発、店舗開発,コンサルティング、ブランドプロデユース、デザイン、広告、関連の仕事を数多く行なっている。
2018年伊勢角屋麦酒顧問就任

2019年FAR YEAST BREWINGアドバイザリー就任
2021年鎌倉ビール顧問就任
FAR YEAST BREWING TOKYO 店舗開発
伊勢角屋麦酒 八重洲店・新宿店・新橋店 店舗開発
株式会社なんつね飲食部門オリジナルビール企画店舗監修
BLACK TIDE BREWING 合同会社 代表社員
株式会社FUKUOKA CRAFT 代表取締役
株式会社ライフコーポレーションでのオリジナルビール企画、デザイン。
スーパーマッケット オオゼキでのオリジナルビール企画
株式会社RETTY でのクラフトビールイベント企画。
株式会社日テレ7でのオリジナルビール企画、アドバイザリー。

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