クラフトビール業界で、また一つ大きな動きが起きた。

https://bottlelogic.com/blog/bottle-logic-the-bruery-group

2026年9月、カリフォルニア・オレンジカウンティのBottle Logic Brewingが、The BrueryとOffshoot Beer Co.に加わり、新たに「The Bruery Group」というグループを形成すると発表した。 一見すると、単純な買収や統合に見える。 しかし、今回の発表で注目したいのは、3つのブランドを一つにするのではないということだ。 Bottle LogicはBottle Logicのまま。 The BrueryはThe Brueryのまま。 OffshootもOffshootのまま。 それぞれのブランド、商品、タップルーム、コミュニティを維持しながら、その「裏側」を一つのグループとして強くしていく。 これは、これからのクラフトビール経営を考えるうえで非常に興味深いモデルだ。

Bottle Logic The Bruery

https://bottlelogic.com/blog/bottle-logic-the-bruery-group

⸻ 1.6マイルしか離れていなかった二つのブルワリー Bottle LogicとThe Brueryは、ともにオレンジカウンティで成長してきたブルワリーだ。 Bottle Logicは2013年にAnaheimで創業。 一方、The Brueryは2008年に創業している。 両社は約1.6マイル、約2.6kmしか離れていない場所で、それぞれ独自のブランドを築いてきた。 Bottle Logicは、バレルエイジドビールの「Stasis Project」やFundamental Observationをはじめ、IPA、ラガー、セルツァー、実験的なビールまで幅広く展開してきた。 The Brueryは、バレルエイジドや実験的なビールを中心に、会員制のSocietyなども展開している。 そしてOffshoot Beer Co.は、The Brueryから派生したホップフォワードなブランドとして成長してきた。 つまり今回集まるのは、単純に「3つのブルワリー」ではない。 3つのブランドと、それぞれが持つ顧客、商品、歴史、販売網、コミュニティだ。

「一緒になる=ブランドを統合する」 ではない。

⸻ ブランドは、一つにしなくていい。 今回の動きで最も重要なのはここだ。 「一緒になる=ブランドを統合する」 ではない。 むしろ、 ブランドは分けたまま、経営資源を共有する。 Bottle LogicのファンはBottle Logicを買えばいい。 The BrueryのファンはThe Brueryを選べばいい。 OffshootはOffshootとして存在する。 しかし、その背後にはより大きな販売網、物流、DTC、イベント、マーケティングなどのプラットフォームが存在する。 Bottle Logic側も公式発表で、The Bruery Groupに加わることで、より多くのリソースと機会を得ながらBottle Logicを成長させていく考えを示している。 これは、ブランドを殺さずにスケールさせる方法の一つだ。

「一つの会社=一つのブランド」という時代ではない

日本のクラフトビール業界では、 「自社ブランド」 という考え方が非常に強い。 もちろん、それはクラフトビールの文化として重要だ。 しかし経営という視点から見ると、 一つの会社が一つのブランドだけを持つ必要はない。 例えば、 Aブランド=IPA中心 Bブランド=ラガー中心 Cブランド=バレルエイジド Dブランド=低アルコール Eブランド=ノンアルコール というように、顧客や飲用シーンごとにブランドを分けることもできる。 製造、物流、営業、経理、EC、マーケティングなど、共有できる部分は共有する。 そしてブランドの世界観だけは守る。 今回のThe Bruery Groupは、まさにその考え方に近い。

「ブルワリー」から「プラットフォーム」へ

ここで、クラフトビール経営の考え方が変わってくる。

これまでは、 ブルワリー ▶︎ ビールを造る ▶︎ 販売する だった。

しかし、複数ブランドを束ねると、 グループ ▶︎ 複数ブランド ▶︎ 複数商品 ▶︎ 複数市場 という構造になる。

これは製造業として非常に大きな意味を持つ。 一つの醸造所、一つの営業チーム、一つの物流システム、一つのECシステム。 そこに複数のブランドを乗せることができれば、ブランドごとにすべての機能を持つ必要がなくなる。 結果として、規模のメリットを生み出しやすくなる。

⸻ そして「DTC」(「Direct to Consumer(消費者直接取引)」が重要になる。

今回、Bottle LogicがThe Bruery GroupのDTCプラットフォームを利用し、Bottle Logicのビールをより広い地域の消費者へ届ける計画も発表されている。 これは非常に重要だ。 ブルワリーが卸売だけに依存すると、どうしても販売地域と取引先に限界がある。 しかし、自社ECや会員制度などのDTCを持てば、消費者との直接的な関係を構築できる。 The Brueryは以前からSocietyという会員制度を展開しており、限定ビール、先行販売、イベントなどを組み合わせたコミュニティ型の販売モデルを構築している。(The Bruery⁠) つまり今回Bottle Logicが得るのは、単なる「販売先」ではない。 顧客との直接的な接点そのものだ。

いまさら聞けない「DTC」

卸売業者やECモールなどの仲介を介さず、自社の販売チャネルで消費者に直接商品を届けるビジネスモデルです。従来の販売は、メーカーが卸や小売、ECモールを経由して消費者に届く多段階構造でした。DTCではこの中間を省き、自社サイトや公式アプリ、LINEなどを通じて消費者と直接取引します。その結果、価格や在庫だけでなく、ブランド体験そのものを企業が主導できるようになります。

メリット①:収益性が高い

メリット②:自由度の高い販売ができる

メリット③:顧客データを直接収集できる

結果:リピート購入が増え、LTV(顧客生涯価値)の向上にもつながります。

「醸造量を増やす」だけが成長ではない

クラフトビール業界では、成長というとすぐに、 「タンクを増やす」 「醸造量を増やす」 「販売エリアを広げる」 という話になる。 もちろん、それも一つの方法だ。 しかし、今回のケースを見 ると別の方法が見えてくる。 ブランドを増やす。 顧客を共有する。 販売網を共有する。 物流を共有する。 ECを共有する。 人材やノウハウを共有する。 そして、それぞれのブランドは独自性を守る。 つまり、 「ビールを増やす」のではなく、「ビールを届ける仕組み」を大きくする。 ⸻ これは日本でも起こるのか? ここからが、日本のクラフトビール業界にとって重要な話になる。 日本には、地域ごとに魅力的なブルワリーが存在する。 しかし、その多くは、 製造 営業 物流 経理 EC SNS 商品開発 イベント すべてを自社で抱えている。 小さな会社が全部をやる。 もちろん、それがクラフトビールの魅力でもある。 しかし、会社が成長していくと、経営者やスタッフへの負担も大きくなる。 そこで、 「全部を自社で持つ必要があるのか?」 という問いが出てくる。 ⸻ 共同化できる仕事は、実は多い。 例えば、 物流。 EC。 受注。 経理。 営業。 海外輸出。 イベント運営。 デザイン。 マーケティング。 原材料調達。 場合によっては設備まで。 ブランドは別々でも、これらを共同化することは可能だ。 そうすれば、ブルワーはもっとビール造りに集中できる。 経営者もブランド戦略に集中できる。 そして、小さなブルワリーでも大きな市場へアクセスできる可能性が生まれる。

クラフトビールは「小さいからクラフト」なのか? ここで、もう一つ考えたい。

ただし、ここには大きなリスクもある。 「一緒になれば強くなる」 とは限らない。 ブランドの個性が失われる可能性もある。 経営判断が遅くなる可能性もある。 文化の違いが問題になる可能性もある。 そして、何よりクラフトビールが持つ「小ささ」「自由さ」「個性」が失われれば、本末転倒だ。 だからこそ今回のThe Bruery Groupで重要なのは、 ブランドを一つにしないこと。 それぞれのブランドが、それぞれの理由で存在し続ける。 その一方で、裏側では協力する。 このバランスがどこまで機能するのか。 今後、注目したいところだ。 ⸻ クラフトビールは「小さいからクラフト」なのか? ここで、もう一つ考えたい。 クラフトビールとは、 「小さい会社」 なのだろうか。 それとも、 「大きくなっても、独自の考え方とものづくりを維持すること」 なのだろうか。 もし後者なら、今回のThe Bruery Groupは非常に興味深い。 規模を大きくしながら、ブランドは小さなままに見せる。 一つのグループの中に、異なる個性を持ったブランドが存在する。 これは、クラフトビールの次の経営モデルになる可能性がある。 ⸻ 「クラフト」の意味が変わる。 クラフトビールの黎明期。 大手企業に対して、小さなブルワリーが存在した。 しかし、業界が成熟すればするほど、 「小さいこと」 だけでは差別化できなくなる。 これから重要になるのは、 誰が造るか。 何を造るか。 なぜ造るか。 そして、 どのような仕組みで、それを続けていくか。 なのではないだろうか。

「どのような会社の形で、クラフトビールを続けていくのか」 も問われるフェーズに入った。

⸻ 3ブランド、1グループ。 Bottle Logic、The Bruery、Offshoot。 3つのブランドは、それぞれの名前を残 す。 しかし、その背後には一つのグループが存在する。 これは「クラフトビールの終わり」ではない。 むしろ、 クラフトビールが次の経営フェーズへ入ったことを示す一つの事例 として見ることができる。 ビールの味を競う。 新しいスタイルを造る。 限定商品を発売する。 それだけではない。 これからは、 「どのような会社の形で、クラフトビールを続けていくのか」 も問われる。 一つのブルワリーが、すべてを背負う。 その時代から、 複数のブランドが、それぞれの個性を保ちながら、一つのプラットフォームで支え合う。 そんな時代へ。 Bottle LogicとThe Brueryの動きは、その可能性を示している。 そして、この動きが今後アメリカのクラフトビール業界全体にどう広がっていくのか。 日本のブルワリーは、そこから何を学ぶのか。 まだ答えは出ていない。 しかし一つだけ言えることがある。 クラフトビールの競争は、もう「誰が一番うまいビールを造るか」だけではない。 これからは、 「誰が、面白いビールを造り続けられる会社をつくれるか。」 その勝負になっていくのかもしれない。

 
 TRANSPORTERへの広告のご用命は直接メールにて

info@craftbeertransporter.com

※写真や資料の引用についてはその引用先を明確にして、細心の注意を持って情報を取り扱っていますが、不備な点等 ございましたら何なりとご一報ください。訂正、又は削除致します。

We exercise the utmost care in handling information when citing photographs or source materials, clearly indicating the original sources. However, should you notice any errors or issues, please do not hesitate to contact us; we will make the necessary corrections or remove the content.