Drinking "hand-pumped" ale in the Kanto region—it’s not a case of "if it’s poured via a hand pump, it’s real ale"; rather, the hand pump exists specifically to ensure that real ale is served at its best.

25 Oct 2026 vol.379
関東でハンドポンプを飲む。オールドスクールは、まだ死んでいない。
クラフトビールといえば、IPA。Hazy IPA、West Coast IPA、DDH IPA。強烈なホップの香り、苦味、ジューシーさ。グラスに注がれた瞬間から「すごい」と感じるビールが、今のクラフトビールシーンを引っ張っている。でも、その一方で。昔から変わらず、ゆっくりとビールを飲ませている店がある。それが、ハンドポンプで注ぐリアルエールの店だ。派手ではない。炭酸も強くない。キンキンに冷えているわけでもない。
それでも、一度ハマると忘れられない。
今回は、関東で今もハンドポンプを使い続けている店、そして新たにその文化を始めた店を訪ねたい。
まず、ここは外せない。HIGHBURY -THE HOME OF BEER-|東京・新宿御苑
HIGHBURY -THE HOME OF BEER-|東京・新宿御苑

ハンドポンプの話をするなら、ここを外すことはできない。というより、ちょっと狂っている。もちろん、いい意味で。HIGHBURYの凄さは、「ハンドポンプがあります」という話ではない。ビールをどう造るか。どう運ぶか。どう保管するか。どう熟成させるか。そして、どう注ぐか。そこまで全部を「ビールの味」と考えている。
店内では、オリジナルブランド「GUNNERS BREWING」のカスクエールなど、カスクコンディションで仕上げるビールを楽しむことができる。カスクに入ったビールをセラーで管理し、飲み頃を見極める。そして最後に、ハンドポンプで一杯を注ぐ。ここまでやる店は、日本では決して多くない。しかも、店主の安藤耕平氏は英国のThornbridge Breweryなどで醸造を経験している。つまりHIGHBURYは、「イギリスっぽい店を日本につくった」のではない。
英国のビール文化を実際に経験した人間が、「日本で、このビール文化をどう伝えるか」を本気で考えている店なのだ。だから、ここはハンドポンプの店というより、「ビールに対して、ちょっと狂っている店」と呼びたい。
そして、横浜にも“狂った”HIGHBURYがある

HIGHBURY -THE CAVE OF BEER-|神奈川・桜木町
HIGHBURYにはもう一つの場所がある。横浜・桜木町の「HIGHBURY -THE CAVE OF BEER-」。こちらもカスクエールをハンドポンプで楽しめる。その名前の通り、少し秘密基地のような空間。ここで飲むカスクエールは、単なる「珍しいビール」ではない。樽の中で仕上げられたビールを、セラーで管理し、ハンドポンプからゆっくりと引き出す。グラスに注がれるスピードも、泡の立ち方も、温度も、普段飲んでいるドラフトビールとは違う。そして面白いのは、「ビールを飲みに来た人間が、自然とビールの話を始めてしまう」こと。
ハンドポンプは、ビールを注ぐ道具であると同時に、会話を生む装置なのかもしれない。
5本のハンドポンプが並ぶ異常事態。Beer Engine。|東京・高円寺

そして、もう一軒。高円寺のBeer Engine。ここは分かりやすい。ハンドポンプが5本。国内最多クラスのハンドポンプを並べ、国産クラフトビールをリアルエールとして提供している。普通のクラフトビール店なら、タップが何本あるかが話題になる。しかし、ここでは違う。「何本のハンドポンプがあるのか」が話題になる。しかも、ただ置いているだけではない。ビールのコンディション、温度、サービングまで管理して、リアルエールとして提供する。つまり、「ハンドポンプで注げばリアルエール」ではなく、リアルエールを美味しく飲ませるためにハンドポンプがある。

ここは、ハンドポンプ初心者にもぜひ行ってほしい。なぜなら、普段飲んでいるクラフトビールが、「注ぎ方を変えるだけで、こんなに変わるのか」という体験ができるからだ。
2026年、浦和で新しい動きが始まった。BEER HUNTING URAWA|埼玉・北浦和

ここは今回の企画で、ぜひ紹介したい。なぜなら、「昔からある店」ではないから。2026年、北浦和のBEER HUNTING URAWAに英国式ハンドポンプが導入された。しかも2台。自社醸造の「URAWA CITY ALE」をリアルエールとして提供するなど、2026年になってから本格的にハンドポンプ文化を取り入れている。
これは非常に面白い。ハンドポンプは「昔のもの」ではない。2026年に新しく導入する店がある。つまり、オールドスクールは復活しているのではなく、もう一度、新しいものとして発見され始めている。そう考えることもできる。
日本のクラフトビールを、英国の方法で飲む。馬車道タップルーム|神奈川・横浜

ベアードビールの直営店、馬車道タップルームも外せない。
ここでは「馬車道エール」をリアルエールとして楽しむことができる。面白いのは、英国のビールを輸入して飲むのではなく、日本のブルワリーが造ったビールを、リアルエールという英国の伝統的な提供方法で飲むということ。これは、これからの日本のクラフトビールを考える上でも重要だと思う。日本のクラフトビールは、何も海外のスタイルをそのままコピーする必要はない。日本で造り、日本の料理と合わせ、日本の店で、日本人が新しい飲み方をつくっていく。その一つが、リアルエールなのかもしれない。
千葉にも残っている。PUBLIC ARROW’S|千葉・市川

市川にも、ハンドポンプでリアルエールを提供している店がある。PUBLIC ARROW’S。
クラフトビールを楽しめる英国系パブとして、ハンドポンプからリアルエールを提供している。派手なクラフトビールブームの中心から少し離れた場所で、こうした店が長く文化を支えている。こういう店があるからこそ、「ハンドポンプは消えなかった」とも言える。
ハンドポンプは、古いのか?ここが今回、一番考えたいところだ。ハンドポンプを見て、「昔のビールだね」と思う人もいるかもしれない。でも、本当にそうだろうか。
IPAが進化し、Hazy IPAが進化し、ビールの香りや味わいがどんどん派手になった今だからこそ、低炭酸。穏やかな温度。麦芽の味。酵母の存在感。そして、ゆっくり飲めること。こうした価値が、逆に新鮮に感じられる可能性がある。一杯飲んで、「うわ、すごい!」ではなく、「もう一杯飲もうかな」と思わせる。それも、クラフトビールの大きな魅力だ。
オールドスクールは、死んでいない。むしろ今、もう一度、新しくなろうとしている。HIGHBURYのように、ビールを徹底的に突き詰める店がある。Beer Engineのように、5本ものハンドポンプを並べる店がある。そしてBEER HUNTING URAWAのように、2026年になって新しくハンドポンプを導入する店もある。つまり、これは懐古ではない。「昔は良かった」という話でもない。今のクラフトビールを飲んでいる人が、「そういえば、こういうビールって面白いよね」と、もう一度発見する可能性の話だ。
IPAの次に、何が来るのか。Hazyの次に、何を飲むのか。もしかしたら、その答えの一つが、ハンドポンプなのかもしれない。関東には、まだその答えを飲ませてくれる店がある。だったら、まずは一杯。シュポシュポとハンドルを引いてもらおう。
そして、その一杯を飲んでから考えたい。「オールドスクールって、本当に古いのか?」


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