Part 2: LA FOLIE — More than just mass-market products. The technical acclaim earned through sour beers; how New Belgium established a connection with the general consumer via "Fat Tire."

このブルワリーがアメリカのクラフトビール業界で特別な存在として評価される理由の もう一つの大きな柱が、『La Folie』にある

https://www.newbelgium.com/beer/la-folie/

このブルワリーがアメリカのクラフトビール業界で特別な存在として評価される理由は、それだけではない。 もう一つの大きな柱が、サワービールと木樽熟成のプログラムだ。

Peter Bouckaert/https://www.brewerspublications.com/blogs/author/peter-bouckaert

一般消費者に向けたFat Tireがブランドの認知度を広げる一方で、ビール愛好家や醸造関係者からの評価を高めたのが、La Folieをはじめとする個性的なビールだった。 この二つの方向性を同じブルワリーの中で成立させたことは、New Belgiumの大きな特徴である。 Peter Bouckaertの参加が転機になった New Belgiumのサワービールを語るうえで欠かせない人物が、Peter Bouckaertだ。 彼はベルギーの伝統的な醸造文化を背景に持ち、1996年にNew Belgiumへ加わった。それ以前は、ベルギーのロデンバッハ(Rodenbach)などで醸造に携わっていた人物である。 ロデンバッハといえば、フランダース地方の伝統的なサワーエールで知られるブルワリーだ。木樽での熟成や微生物による複雑な発酵を通じて、酸味と果実味、熟成由来の風味をつくり出す。 PeterがNew Belgiumにもたらしたものは、単なるレシピではなかった。 ビールを木樽で熟成させ、時間をかけて味わいを育てるという考え方。そして、酵母や乳酸菌などの微生物を理解し、コントロールしながら、通常のビールとは異なる複雑な味を生み出す技術だった。 1997年ごろから本格的に始まったサワービールの取り組みは、New Belgiumの醸造哲学を広げることになる。 La Folieが示した、もう一つのクラフトビールの可能性 その象徴がLa Folieだ。 La Folieは、フランダーススタイルのサワーブラウンエール。木樽で長期間熟成させることで、酸味と果実味、モルトの複雑さが重なり合う。 熟成期間は製品や仕込みによって異なるが、代表的な説明では1年から3年ほど大きなオーク樽で熟成される。 グラスに注ぐと、深いマホガニー色。味わいには青リンゴやチェリー、プラムの皮を思わせる酸味と果実感があり、単純に「酸っぱいビール」と表現するには複雑すぎる。 ここで重要なのは、酸味を加えること自体が目的ではないという点だ。 木樽の中では、ビールの熟成、微生物の働き、酸素との接触など、複数の要素が時間をかけて味わいに影響する。樽ごとに状態が異なるため、醸造家には経験と判断力が求められる。

設備を導入すればすぐに再現できるカテゴリーではないのがサワービール

通常のビールのように、仕込みから出荷までを一定の期間で管理するのとは異なり、熟成中のビールを評価し、ブレンドや仕上げを判断する工程が重要になる。 つまりサワービールは、設備を導入すればすぐに再現できるカテゴリーではない。 微生物の管理、木樽の状態、熟成期間、ブレンド技術。これらを長期的に積み重ねて初めて、ブルワリー独自の味をつくることができる。 木樽熟成は、設備投資だけでは成立しない New Belgiumはサワービールの生産を拡大するため、専用の木樽熟成エリアを整備していった。 初期にはワイン樽などを使った小規模な取り組みから始まり、その後、大型のオーク製フォーダーを導入する。 フォーダーとは、大容量の木製熟成容器のこと。ワインやビールの熟成に用いられ、一般的な小型樽とは異なる環境をつくることができる。 2014年には32基のオーク製フォーダーを追加し、木樽熟成ビールの生産能力を倍増させたと発表している。

長期的な商品開発に資本を投じることができるか?

この設備投資は、単にサワービールの生産量を増やすためだけのものではない。 熟成に時間がかかるビールは、設備を占有する期間が長い。通常のタンクであれば、発酵・貯酒・出荷というサイクルを比較的短期間で回せるが、木樽熟成では数か月から数年単位で容器を使用することになる。 つまり、熟成用の設備を増やすことは、長期的な商品開発に資本を投じることでもある。 すぐに売上につながる商品だけでなく、時間をかけてブランド価値を高める商品にも投資する。これは、New Belgiumが単なる生産効率だけで経営を考えていなかったことを示している。 一般向けとマニア向け。二つの市場を持つ強さ ここで、New Belgiumの事業構造を整理してみたい。 Fat Tireは、クラフトビールに詳しくない消費者にも届く商品だった。 一方、La Folieのようなサワービールは、ビールのスタイルや発酵、熟成に関心を持つ愛好家に強く訴求する商品だった。

この二つは、同じビールでありながら、購入する人の動機が異なる。 Fat Tireを選ぶ人は、飲みやすさやブランドの知名度、食事との相性を重視するかもしれない。 La Folieを選ぶ人は、酸味の構成、熟成による変化、木樽由来の香り、醸造技術そのものに関心を持っているかもしれない。 もちろん、New Belgiumがこの二つを公式に「一般向け」「マニア向け」と分けて経営していたと断定することはできない。しかし、商品ポートフォリオを分析すると、異なる消費者層に異なる価値を届けていたことが分かる。 これはブルワリーにとって非常に大きな意味を持つ。 一般向けの商品は、販売量と認知度を支える。専門性の高い商品は、ブランドの技術力や独自性を伝える。 売上規模の大きい商品だけを追いかければ、他社との価格競争に巻き込まれる可能性がある。一方、マニア向けの商品だけでは市場規模に限界がある。 両方を持つことで、ブランドの広がりと深さを同時に追求できる。 技術的な評価が、ブランドの信頼につながる サワービールの存在は、New Belgiumを単なるFat Tireのメーカーではない存在にした。 醸造技術にこだわるブルワリーとして、専門家や愛好家からも注目されるようになった。 さらに、サワービールの開発は、醸造チームの技術的な蓄積にもつながる。発酵管理、酵母や微生物の扱い、熟成、ブレンドといった知識は、他のビールの商品開発にも応用できる。 また、New Belgiumの木樽熟成プログラムは、後年も継続的に進化していく。

2019年には、Brewers AssociationのRussell Schehrer Award for Innovation in Craft Brewingを受賞した。

https://www.newbelgium.com/beer/laurens-last-word/ 

2019年には、同社の木樽熟成部門を率いたLauren Limbachが、Brewers AssociationのRussell Schehrer Award for Innovation in Craft Brewingを受賞した。 これは、サワービールが一時的な話題づくりではなく、長年にわたって同社の技術的な柱であり続けたことを示している。 第2部の結論 New Belgiumの強さは、Fat Tireのような飲みやすいビールを大量に販売できたことだけではない。 一方で、La Folieのような時間と技術を必要とするビールをつくり続け、醸造家としての評価を積み重ねてきた。 市場を広げる商品と、ブランドの深みをつくる商品。 この両方を持つことによって、New Belgiumは一般消費者にも、ビールを深く知る愛好家にも存在感を示すことができた。 しかし、企業が大きくなれば、次の課題が生まれる。 生産設備、販売網、人材、資本。成長を続けるためには、これまでの経営モデルを見直す必要も出てくる。

そして2019年、New Belgiumは大きな転換点を迎える。 次回は、Lionによる買収、従業員所有の終焉、Fat Tireのレシピ変更、そしてVoodoo Rangerの成長を追う。

【WEB媒体】

 発行:毎日更新

 主な内容: BREWERY・PUB・EVENT・GUEST COLUMN・TAJI JARNAL(編集長日記)

【編集長・田嶋伸浩略歴】

1975年 埼玉生まれ

カナダ、バンクーバーに1年留学、帰国後(株)ファーストリテイリングを経て2003年ファッションブランド『ALIAS(エイリアス)』を立ち上げ、2008年メガネブランド『ALIAS EYE WEAR』を立ち上げる。2012年合同会社エイリアス設立、グラフィックデザイン、WEBデザイン
なども手がけ,同時期にタレント/俳優/ミュージシャンのTV,CM,ドラマ、コンサートなど幅広く衣装を手がける。
2013年より日本初のクラフトビール専門誌『TRANSPORTER BEER MAGAZINE』発行人となる。私は世界中の醸造現場を歩き、その熱狂を伝えてきました。それと同時に、自分自身も国内2拠点(Black Tide Brewing / Fukuoka Craft Brewing)でブルワリーの立ち上げ・運営に携わり、現場の苦労と喜びを肌身で感じてきました。2017年ベルギー発修道院ビール『CHIMAY』と契約、ジャパンマーケテングを担当。その後もクラフトビール業界において幅広く活動、会社顧問商品開発、店舗開発,コンサルティング、ブランドプロデユース、デザイン、広告、関連の仕事を数多く行なっている。


【実績】

2018年伊勢角屋麦酒アドバイザリー就任
2019年FAR YEAST BREWINGアドバイザリー就任
2021年鎌倉ビール顧問就任
FAR YEAST BREWING TOKYO 店舗開発
伊勢角屋麦酒 八重洲店・新宿店・新橋店 店舗開発
株式会社なんつね飲食部門オリジナルビール企画店舗監修
BLACK TIDE BREWING 合同会社 代表社員
株式会社FUKUOKA CRAFT 代表取締役
株式会社ライフコーポレーションでのオリジナルビール企画、デザイン。
スーパーマッケット オオゼキでのオリジナルビール企画 
株式会社RETTY でのクラフトビールイベント企画。
株式会社日テレ7でのオリジナルビール企画、アドバイザリー。