
16 JUNE 2026 vol.119
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スコットランドのヘリオット・ワット大学(Heriot-Watt University)が「持続可能な醸造・蒸留」を専門に学ぶ修士課程を新設し、さらに約70億円規模の研究センター構想を打ち出したことは、世界のビール業界がサステナビリティを“技術”ではなく“人材育成”の課題として捉え始めていることを示している。
では、日本はどうだろうか。
結論から言えば、日本のクラフトビール業界でもサステナビリティへの取り組みは確実に進んでいる。しかし、それを体系的に学ぶ教育環境という点では、まだ欧州に比べて発展途上にあると言わざるを得ない。
ヘリオット・ワット大学:https://www.ballantines.ne.jp/scotchnote/50/index.html
日本のブルワー教育は「醸造技術中心」
日本でブルワーを目指す場合、多くは現場で経験を積みながら学ぶ。
- 醸造設備の運用
- 発酵管理
- 酵母管理
- 品質管理
- 衛生管理
といった実践的な技術教育は非常に充実している。
一方で、
- カーボンフットプリント(CFP/Carbon Footprint of Products) 商品やサービスの原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガスの排出量をCO2に換算して、商品やサービスに分かりやすく表示する仕組みです
- ライフサイクルアセスメント(LCA/Life Cycle Assessment 製品やサービスの「原材料調達から、製造、流通、使用、廃棄、リサイクル」に至るまでの全生涯における環境負荷を定量的・総合的に評価する手法です。
- ESG経営
- 再生可能エネルギー
- サーキュラーエコノミー
- Scope1・2・3排出量管理
などを専門的に学ぶ機会はまだ限られている。
特に小規模クラフトブルワリーでは、日々の醸造と販売に追われ、環境負荷の数値化や削減計画の策定まで手が回らないのが現実だ。
実践は進んでいる日本のブルワリー
しかし現場を見ると、日本のブルワリーは決して遅れているわけではない。
例えば、
- 規格外農産物を活用したビール
- 廃棄予定の果実を使用した限定醸造
- 地元農家との循環型連携
- ソーラーパネル導入
- 排熱回収システム
- 水使用量削減
などの取り組みは全国各地で増えている。
実際には「サステナビリティ」という言葉を使わなくても、地域との共生や資源循環を実践しているブルワリーは少なくない。
日本のクラフトビールはもともと地域密着型で発展してきたため、欧州でいうCircular Economy(サーキュラーエコノミー/循環型経済)の考え方と親和性が高いのである。

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info@craftbeertransporter.com
次に必要なのは「見える化」=「数値化」
今後求められるのは、取り組みそのものではなく、その効果を数値化することだろう。
例えば、
「地元産ホップを使っています」だけではなく、

「輸送によるCO₂排出を何%削減できた」
「水使用量を何%改善した」
といった形で示すことが重要になっていく。
欧州ではすでにビールの環境負荷を定量的に評価する動きが進んでいる。
今後、日本のクラフトビール業界も同じ流れに向かう可能性が高い。
若いブルワーに求められる新しいスキルとは?
10年前のブルワーに求められた能力は、「美味しいビールを造ること」だった。
しかしこれからは、
- 美味しいビールを造る
- 環境負荷を理解する
- 地域資源を活用する
- 持続可能な経営を考える
という複合的な能力が必要になるかもしれない。
言い換えれば、
ブルワーから“サステナビリティ・マネージャー”へ。
そんな変化が始まりつつある。
Transporter Beer Magazine的視点
クラフトビールは常に時代の変化とともに進化してきた。
ホップ革命があり、
IPAブームがあり、
ローカル志向が生まれた。
そして今、世界では「サステナビリティ」が次のテーマになろうとしている。
ヘリオット・ワット大学の挑戦は、単なる教育改革ではない。
それは、「未来のブルワーは何を学ぶべきか」という問いへのひとつの答えだ。
日本でも近い将来、醸造技術だけでなく環境や資源循環まで学ぶブルワー育成が当たり前になる日が来るかもしれない。
その時、日本のクラフトビールは単に美味しいだけではなく、地域と環境をつなぐ存在として、さらに大きな価値を持つことになるだろう。

この「TAJI JARNAL」とマークされているテキストは 本誌編集長田嶋伸浩が執筆しております。
【略歴】

2013年よりクラフトビール専門誌『TRANSPORTER BEER MAGAZINE』発行人となる。
2017年ベルギー発修道院ビール『CHIMAY』と契約、ジャパンマーケテングを担当。その後もクラフトビール業界において幅広く活動、会社顧問商品開発、店舗開発,コンサルティング、ブランドプロデユース、デザイン、広告、関連の仕事を数多く行なっている。
2018年伊勢角屋麦酒顧問就任
2019年FAR YEAST BREWINGアドバイザリー就任
2021年鎌倉ビール顧問就任
FAR YEAST BREWING TOKYO 店舗開発
伊勢角屋麦酒 八重洲店・新宿店・新橋店 店舗開発
株式会社なんつね飲食部門オリジナルビール企画店舗監修
BLACK TIDE BREWING 合同会社 代表社員
株式会社FUKUOKA CRAFT 代表取締役
株式会社ライフコーポレーションでのオリジナルビール企画、デザイン。
スーパーマッケット オオゼキでのオリジナルビール企画
株式会社RETTY でのクラフトビールイベント企画。
