In craft beer, reproducibility and creativity are not mutually exclusive.

先日ちょうどBENDに行った際に訪れたUPPのブルワーTonyaにも会う機会がありましたが確かにどれもこれもが正解のビールばかりでした!是非聴いてみてください。 内容の一部は以下↓ 同じBrew systemから、違う答え。

Tonya Cornett × Ian Larkinが教えてくれる、クラフトビールの「正解」

ビールを造るという仕事は、どこまでいっても「答え合わせ」なのかもしれない。

ビールを造るという仕事は、どこまでいっても「答え合わせ」なのかもしれない。

レシピを書き、仕込んで、発酵させる。

狙った味になったのか。

それとも、思っていた以上の何かが生まれたのか。

そして、もう一度造る。

同じように造ったはずなのに、少し違う。

その違いを修正するのか。

あるいは、その違いこそを個性として育てるのか。

オレゴン州ベンドのUPP Liquidsで醸造を続けるTonya CornettとIan Larkinの仕事を追っていると、そんな「醸造の本質」が見えてくる。

二人は過去15年以上、同じブルワリーで働き、別々の場所へ行き、そしてまた一緒にビールを造ってきた。

数えきれないほどのメダル。

そして、現在も互いに刺激しながら続く醸造。

ただし、この二人の面白さは「二人とも優秀なブルワー」という話だけではない。

むしろ逆だ。

二人とも優秀だからこそ、同じ答えを出さない。

「同じブルワリーなのに?」

その象徴的な出来事が、2024年のWorld Beer Cupだった。

10 BarrelでGerman-Style Sour Aleカテゴリーを担当した二人は、まったく異なる方向性のビールを造った。

同じブルワリー。

同じカテゴリー。

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それなのに、飲んでみるとまるで別のブルワリーのビール。

審査員が「本当に同じ醸造所で造ったのか?」と疑ったというエピソードは、かなり象徴的だ。

普通なら、ブランドとしての統一感がないと考えるかもしれない。

でも、クラフトビールの面白さは、本当にそこなのだろうか。

同じ答えを出すことが、良いブルワリーなのか。

それとも、違う答えを出せるブルワリーこそ、強いのか。

「正しいレシピ」の持つ意味?

「正しいレシピ」なんて、本当にあるのか

日本のビール業界でも、よく「正しいレシピ」という言葉を耳にする。

このスタイルなら、このモルト。

このホップなら、このIBU。

この酵母なら、この温度。

もちろん、醸造は科学だ。

再現性も必要だ。

商品として販売する以上、「昨日と今日で味が違う」では困る。

でも、その先にクラフトビールがある。

CornettとLarkinの仕事を見ていると、

再現性と創造性は、対立するものではない

ということがわかる。

基礎を知っているからこそ、そこから外れることができる。

Imperial Stoutを「足す」のではなく「引く」

Imperial Stoutを「足す」のではなく「引く」

例えばImperial Stout。

普通なら、もっと濃く。

もっとロースト。

もっと苦く。

もっとアルコールを。

そんな方向へ行きやすい。

ところが二人が考えているのは、むしろ逆だ。

pHを上げる。

Finishing Gravityを高くする

Finishing Gravity

発酵が完全に終わった時点での液体(麦汁など)の比重(密度)のことです。日本語では「最終比重」や「終始比重」とも呼ばれます。

ローストの尖った部分を丸くする。

Crystal MaltやChocolate Ryeでボディをつくる。

Golden Promiseをベースモルトにする。

そして、Thomas FawcettのPale ChocolateやAmber Maltのような難しいモルトについては、「入れるかどうか」ではなく、

「どこで、どれだけ、何のために使うのか」を考える。

これは料理にも似ている。

材料を増やせば美味しくなるわけではない。

むしろ、引き算によって輪郭が見えることがある。

IBUを下げるという、ちょっと意外な答え

さらに面白いのがImperial StoutのIBU。

苦味を強くすれば、強いビールになる。

そう思いがちだ。

しかし、IBUを下げることでコンディショニングに必要な時間を短くする。

ここには「レシピ」ではなく「商品としてのビール」を考える視点がある。

ビールはタンクの中で完成するわけではない。

樽や缶に入り、輸送され、店に届き、誰かがグラスに注ぐ。

その瞬間までが醸造なのだ。

「最高のレシピ」を考えるだけでは足りない。

最高の状態で飲んでもらうにはどうするか」

そこまで考えて、初めてビールは完成する。

17年間生き続ける微生物

そして、もう一つ驚かされる。

二人は17年間にわたってmixed lactic bacteria cultureを維持している

二人は17年間にわたってmixed lactic bacteria cultureを維持している。

mixed lactic bacteria culture

mixed lactic bacteria culture/混合乳酸菌培養物とは? 2種類以上の乳酸菌を組み合わせて一緒に育てたものや、その培養液のこと)

17年。

これは、もはや「原料」と呼ぶには長すぎる時間だ。

そこには、何世代もの微生物と、それを扱ってきたブルワーの経験が蓄積されている。

サワービールは、毎回教科書通りにはいかない。

だからこそ、観察する。

記録する。

理解する。

そして、また使う。

クラフトビールの世界では、「新しいこと」が評価されがちだ。

しかし本当の革新は、17年間同じものを観察し続けることから生まれることもある。

「コンペで勝つビール」と、「飲みたいビール」。そして バーで「もう一杯」と言わせるビールには、また別の価値がある。

コンペで勝つビールと、飲みたいビール

もう一つ、考えさせられるのがコンペティションとの向き合い方だ。

スタイル。

レシピ。

発酵。

熟成。

パッケージング。

そして審査員がどう評価するか。

そこまで考えてビールを最適化する。

ここで、以前からクラフトビール業界で語られてきた、

「良いビール」と「売れるビール」は違う。という話につながってくる。

そしてもう一つ、

「良いビール」と「コンペで勝つビール」も、必ずしも同じではない。

コンペでは、審査基準がある。

スタイルにはスタイルのルールがある。

だから、そのルールの中で最高点を取るための技術が必要になる。

一方で、バーで「もう一杯」と言せるビールには、また別の価値がある。

どちらが正しいのか。

もちろん、答えは一つではない。

Pinball Wizard(ピンボールの魔術師という「偶然」

Oatmeal Stout「Pinball Wizard」の進化も興味深い。

https://uppliquids.com/

ビールは、最初に考えた通りに進むとは限らない。

予想していなかった成功。

思っていた以上の反応。

そして、そこからレシピが進化していく。

ここで大切なのは、偶然を偶然で終わらせないことだ。

「なぜ、このビールが支持されたのか?」と考える。

そして次の仕込みに反映する。

醸造とは、実験の繰り返しでもある。

二人いるから、違う答えが出る

CornettとLarkinの関係が面白いのは、二人が同じものを目指していないからかもしれない。

互いに刺激する。

互いに疑う。

互いに刺激し合い、そして、互いに疑う。

互いに疑う。

時には反対方向へ行く。

それでも、どちらも良いビールを造る。

これこそ、クラフトビールの「クラフト」なのではないだろうか。

マニュアル通りに造ることではない。

「正解」を覚えることでもない。

正解を知った上で、自分の答えを出すこと。

日本のブルワーに、この話を伝えたい

日本のクラフトビールは、ここ数年で驚くほど成熟した。

設備も良くなった。

原料も増えた。

醸造技術も上がった。

海外の情報も簡単に手に入る。

だからこそ、次に必要なのは「正しい答えを探すこと」ではないのかもしれない。

海外で評価されたレシピをコピーする。

有名ブルワリーの味を再現する。

それも技術の一つだ。

しかし、その先には、

「自分たちは、どういうビールを造りたいのか」という問いがある。

CornettとLarkinは、その問いに対して同じ答えを出さない。

だから面白い。

ビールは、完成しない。

ビールに完成形はある。

でも、醸造に完成形はない。

昨日うまくいったレシピを、今日もう一度疑ってみる。

17年間育てた微生物を、さらに観察する。

IBUを下げてみる。

pHを変えてみる。

モルトを一つ外してみる。

あるいは、まったく逆のことをやってみる。

そして、また飲む。

「これでいいのか?」と考える。

その繰り返しが、ブルワーを成長させ、ブルワリーを進化させる。

Tonya CornettとIan Larkinが教えてくれるのは、テクニックだけではない。

クラフトビールに、たった一つの正解など存在しない。

クラフトビールに、たった一つの正解など存在しない。

同じ釜から、違う答えが生まれていい。

いや。

違う答えが生まれるからこそ、クラフトビールは面白い。

そして、今日もまた新しい仕込みが始まる。