Beer born from a crushed tank: Lagunitas teaches us about the "freedom to fail" in craft beer.

21 August 2026 vol.218
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ビールをつくることは、失敗しないことではない。
2026年6月18日、カリフォルニア州ペタルマのLagunitas Brewing Companyで、500バレル(約15,500ガロン)の巨大な発酵タンクが内側に向かって潰れた。

原因は、発酵タンクを空にする際の排気不足。内部が真空状態になり、外側からかかる大気圧によって、ステンレスの巨大なタンクがまるで空き缶のようにへこんだ。
幸いにもけが人はなく、醸造への影響も限定的だった。
しかし、Lagunitasにとってこの出来事は、単なる設備事故では終わらなかった。
彼らは、この“失敗”を一つのビールに変えた。
その名も、「Something’s Looking a Little Fuzzy」(何だか少しぼやけて見える)。

潰れたタンクをきっかけに生まれた、Petalumaのタップルーム限定Hazy IPAだ。
事故を隠すのではなく、笑いに変え、ビールに変え、そして飲み手と共有する。
そこには、クラフトビールが持っていた本来の精神がある。
失敗したからこそ生まれたBrown Shugga’

Lagunitasには、もう一つ象徴的な物語がある。
1997年、醸造チームはGnarly Wineの仕込みで、思うような味にならないバッチを抱えていた。
普通なら、そのビールは廃棄される。
しかし、彼らは捨てなかった。
大量のブラウンシュガーを投入し、もう一度、ビールとしての可能性を探った。
そして生まれたのが、後にLagunitasを代表するビールの一つとなるBrown Shugga’だった。
もちろん、すべての失敗がBrown Shugga’になるわけではない。
むしろ、多くの実験は失敗し、商品になることなく消えていく。
だからこそ、LagunitasのHead Brewer、“Brew Monster”ことJeremy Marshallの言葉が響く。
「大当たりをつくれる日もある。ビールすら残らないと分かっている日もある。」

「大当たりをつくれる日もある。ビールすら残らないと分かっている日もある。」
それでも、醸造家は次の仕込みをする。
技術が進歩したからこそ、失敗は難しくなった
現在の醸造は、30年前とは大きく違う。
ホップは品種改良によって、かつてないほど強烈な香りと個性を持つようになった。酵母の遺伝子解析によって、望ましくない特徴を取り除くことも容易になった。ホップエクストラクトや高度な温度管理、自動化された醸造設備も、ビールの品質を安定させている。
Marshallは、現在のホップについて、非常に強烈な品種を一つ使うだけでも、すぐに“ヒット”をつくれる時代になったと語る。
さらに、現在の醸造設備を「素晴らしいビールをつくるためのKeurig(全米シェアNo.1を誇るカプセル式のコーヒー&ティーマシンおよびシステムのようなもの)」と表現する。

つまり、現代のクラフトビールは、以前よりもはるかに失敗しにくい。
これは素晴らしい進歩だ。
しかし同時に、少しだけ危険な進歩でもある。
かつてクラフトビールには「失敗する自由」があった。その失敗が数々の新しいスタイルや商品を生んできた。

なぜなら、失敗しないことと、面白いことは、必ずしも同じではないからだ。
クラフトビールには「失敗する自由」があった。
クラフトビールの歴史を振り返れば、数え切れないほどの失敗が新しいスタイルや商品を生んできた。
予定していた味にならない。
酵母が思ったように働かない。
ホップを入れすぎる。
糖を入れすぎる。
熟成がうまくいかない。
それでも、醸造家は「では、ここから何ができるか」と考える。
それがクラフトビールだった。
大手ビール産業が、巨大な市場に向けて「同じ品質を、同じ味で、同じようにつくる」ことを追求してきた一方で、クラフトビールは、その反対側から始まった。

小さくつくる。
試してみる。
失敗する。
またつくる。
その繰り返しの中から、新しい味が生まれてきた。
それでもLagunitasは、未来をつくり続ける
Lagunitasは1993年に創業し、現在はHeineken Internationalの完全子会社となっている。

クラフトビール市場そのものが厳しい環境に置かれる中でも、Petalumaを拠点として事業を続け、Innovation Lab、通称「Disorderly House of Brewing」で新しいビールや飲料の開発を続けている。
IPAを中心としながら、ハードティーなど新しいカテゴリーにも挑戦する。
ここでも重要なのは、「市場が変わったから仕方なく新商品をつくる」のではなく、変化そのものを実験の場にしていることだ。
ビールだけに閉じない。
でも、ビールを捨てるわけでもない。
それは、クラフトビールがこれから生き残るための一つの方法なのかもしれない。
失敗を恐れないことが、クラフトビールだった。

失敗を恐れないことが、クラフトだった
潰れた500バレルのタンクは、Lagunitasにとっては設備上の損失だった。
しかし、その出来事を一つのビールに変えた瞬間、それはブランドの物語になった。
事故は消せない。
失敗も消せない。
だからこそ、それをどう次につなげるかが重要になる。
Rogueがブランドやレシピ、酵母、ドメインといった「IP」という形で、その40年の歴史を次の誰かに渡そうとしている一方で、Lagunitasは、失敗や実験の積み重ねそのものを現在進行形でブランドにしている。
クラフトビールの価値は、完成したビールだけではない。
そこに至るまでの試行錯誤、失敗、偶然、そして「もう一度やってみよう」という醸造家の意思にある。
だから、Jeremy Marshallの言葉は今のクラフトビールにこそ必要なのだと思う。

Photo by Lagunitas Brewing Company
Some days you make a hit. Some days you know you’ll end up without a beer.
「Some days you make a hit. Some days you know you’ll end up without a beer.」

大当たりの日もある。
何も残らない日もある。
それでも、また仕込む。
それこそが、クラフトビールの“失敗する自由”なのかもしれない。
That might well be the "freedom to fail" of craft beer.

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