
17 July 2026 vol.165
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アメリカでは2019年からハードセルツァー市場が爆発的に成長しました。
White ClawやTrulyが市場を席巻し、ビールメーカー各社も次々と参入。わずか数年でハードセルツァーはビール市場の約10%を占めるまでに成長しました。

しかし2023年頃から市場は成熟期に入り、消費者の嗜好は少しずつ変化し始めます。
次に伸び始めたのは、「スピリッツベースRTD」です。
つまり、モルト(麦芽)を発酵させたハードセルツァーではなく、ウォッカやジン、テキーラなどをベースにした、本格的な缶カクテルへのシフトです。(Reuters)
日本は20年前からRTD先進国だった
日本では2001年にキリンが「氷結」を発売し、その後サントリーが「-196」、宝酒造が「焼酎ハイボール」などを展開。RTD市場は20年以上かけて成熟してきました。
アメリカで「新しいカテゴリー」として受け入れられたハードセルツァーも、日本の消費者から見れば、「缶チューハイの延長線上」にある存在です。
そのため、日本ではハードセルツァーそのものは大ヒットしませんでした。
しかし逆に言えば、日本企業は世界で最も成熟したRTD市場で商品開発を続けてきた経験を持っています。
サントリーが輸出したのは「商品」ではなく「ノウハウ」
2024年、サントリーは「-196」のグローバル展開を加速し、アメリカ21州を皮切りに、イギリス、ドイツ、東南アジアへも展開を開始しました。サントリーは、日本で培ったRTD開発力を世界へ広げることを明確に掲げています。
注目すべきなのは、アメリカへそのまま「ストロングゼロ」を輸出したわけではないことです。
アメリカ向けの「-196」は、現地の嗜好に合わせてアルコール度数やフレーバーを調整し、ウォッカベースの「Vodka Seltzer」として展開されています。また、日本独自の「-196℃製法(Freeze Crush Infusion)」を前面に打ち出し、「日本の技術で果実の風味を最大限に引き出したプレミアムRTD」として差別化を図っています。
アメリカ市場は”セルツァー”から”プレミアムRTD”へ
現在、アメリカでは「低カロリー」だけでは商品が売れる時代ではありません。
消費者が求めているのは、
・本物の果実感
・スピリッツ由来の満足感
・クラフト感
・品質の高さ
です。
これは、日本で長年培われてきたRTD文化と非常に相性が良い価値観です。
サントリーは「ハードセルツァー市場」に参入したというよりも、「次のRTD市場」を見据えて勝負を始めたと言えるでしょう。
クラフトブルワリーが学ぶべきこと
この流れは、日本のクラフトブルワリーにとっても重要なヒントになります。
アメリカのクラフトブルワリーは、ハードセルツァーを造ることでビールを飲まない人を取り込みました。
日本のクラフトブルワリーは、さらに一歩先を考える必要があります。
競争相手はクラフトビールだけではありません。
氷結や-196のような巨大ブランドとも同じRTD市場で勝負する時代です。
だからこそ、「クラフトだからできること」が重要になります。
例えば、地元産の柑橘やハーブ、茶葉、山椒、柚子などを使った地域性のあるRTD、蒸留所とのコラボレーションによるジンソーダや焼酎ソーダなど、大手には真似できないストーリー性のある商品が武器になります。
Transporter的視点 「日本らしいRTD」という新しいカテゴリーこそ、世界市場で戦える次の武器になる。」
アメリカでは、ハードセルツァーがビール業界を変えました。
しかし、次に世界を変えるのは「クラフトRTD」かもしれません。
日本はハードセルツァーでは後発ですが、RTDでは世界でも数少ない成熟市場です。
今後、日本のクラフトブルワリーが輸出すべきなのはビールだけではありません。
「日本らしいRTD」という新しいカテゴリーこそ、世界市場で戦える次の武器になる可能性があります。
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