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クラフトビールの世界では、常に新しいホップや酵母が注目を集める。

しかし近年、一部のアメリカのブルワーたちは別の方向を見始めている。 それは、「この土地にしかない原料」を使ったビール造りだ。

その象徴ともいえるのが、アメリカ中西部のラガー専門ブルワリー、Goldfinger Brewingが手掛けた「Wild Rice Lager」である。

©︎Goldfinger
 
ALL-GRAIN
Batch size: 5 gallons/19 liters
Brewhouse efficiency: 72%
OG: 1.044 (11°P)
FG: 1.010 (2.5°P)
IBUs: 28
ABV: 4.5%
 

ワイルドライスとは何者なのか ワイルドライスは一般的な米とは異なる植物であり、北米固有の穀物として知られている。 特に五大湖周辺地域では古くから先住民族の重要な食料であり、ミネソタ州では現在も「州の公式穀物」に指定されている。

見た目は黒褐色で、炊き上げると独特の歯ごたえを持つ。 味わいはナッツのように香ばしく、土を思わせるアーシーな風味(earthy/コーヒーの香りを表す用語で「Earth=地球」という言葉の通り、感じられる大地の土っぽさや、自然を感じられる時に使用されます)が特徴だ。 レストランではスープやピラフの材料として親しまれているが、ビール原料として使われることはまだ少ない。

しかし一部のブルワーたちは、この穀物に大きな可能性を見出している。 Goldfinger Brewingの挑戦 イリノイ州ダウナーズグローブ(Downers Grove)にあるGoldfinger Brewingは、アメリカでも屈指のラガー専門ブルワリーとして知られている。

伝統的なドイツ醸造技術をベースにしながらも、常に新しい挑戦を続けている彼らが目を付けたのがワイルドライスだった。 今回のWild Rice Lagerは、同じイリノイ州のTriptych Brewingとのコラボレーションによって誕生した。 テーマはシンプルだった。

「アメリカ中西部を表現するラガーを造ること」 そのため彼らは、 * ミネソタ( Minnesota 産ワイルドライス * ウィスコンシン産ホップ *(Wisconsine)中西部由来の復活ラガー酵母 を採用した。

ワイルドライスの歴史は驚くほど古く、約12,000年前の地層からも発見されている.ワイルドライスは、その名前に「ライス」とついていますが、実はイネ科マコモ属の水生植物の種子です。”マコモダケ”といえば日本でも食べられている

まさに「Midwest Terroir Lager」 (“Terroir”とは、フランス語で「土地」を表す。地域色豊かなラガービールとも呼べる一杯である。 実際にどうやって造ったのか? ワイルドライスは通常の麦芽のようにそのまま糖化できるわけではない。 そのためGoldfingerは仕込みのスタートでシリアルマッシュを行った。 まずワイルドライスとベースモルトを混ぜ合わせ、 95〜100℃で約20分間加熱。 十分に糊化させた後、その混合物をステップマッシュへ投入している。

事前には、 「ワイルドライスはセメントのように固まる」 という話も聞いていたという。 しかし実際には適切な仕込み水の比率を確保したことで問題は発生しなかった。 念のためライスハルを加えたものの、その量は通常の副原料仕込みよりもはるかに少量だったという。 ラガーブルワーとして、 * シリアルマッシュ * ステップマッシュ * デコクション に慣れているGoldfingerにとって、ワイルドライスは決して扱いにくい原料ではなかった。

味わいは予想以上に個性的だった 多くのブルワーが米やコーンを使用する理由は、味を薄くしてドライな飲み口を作るためだ。

しかしワイルドライスは違う。

GoldfingerのTom Beckmannは、 「普通のライスやコーンとは違い、ワイルドライスは本当にワイルドライスの味がする」 と語っている。 完成したビールには、 * アーシーな香り * ナッツのような香ばしさ * ダークフルーツを思わせるアロマ が現れた。 それは副原料というより、まるでスペシャルティモルトのような存在感だったという。

ワイルドライスはボディを軽くするための原料ではなく、味わいを構築するための原料なのである。 なぜ今ワイルドライスなのか

キーワードは「LOCAL」しかし、その「LOCAL」の真意とは?

近年のクラフトビール業界では「ローカル」がキーワードになっている。

しかしローカルとは何だろうか

地元で造ることなのか? Should it be built locally?

地元で売ることなのか Is it meant to be sold locally?

それとも、その土地の歴史や文化を一杯のビールで表現することなのか? 

Is it about expressing the history and culture of the land in a single glass of beer?

ワイルドライスには、その答えがあるように思える。

それはアメリカ先住民族が何世紀にもわたり収穫してきた穀物であり、五大湖地域の歴史そのものだからだ。 ドイツには大麦(Graupenがある。 チェコにはザーツホップ(Saaz hopsがある。 ベルギーには伝統酵母がある。

ではアメリカには何があるのか。

その問いに対する答えの一つが、ワイルドライスなのかもしれない。

これからのブルワーは「どれだけ自分達の土地を語れるか?」

TRANSPORTER的視点

クラフトビールは長らく「ホップの競争」を続けてきた。

しかし次の時代に求められるのは、 「どれだけホップを入れたか」ではなく、

「どれだけ土地を語れるか」 なのではないだろうか。

Goldfinger BrewingのWild Rice Lagerは、その可能性を示している。 ワイルドライスを使うことは単なるレシピ上の工夫ではない。 それは地域の歴史を継承し、文化をビールとして表現する行為である。 もしアメリカに本当の意味でのテロワールビールが存在するなら、その未来はホップ畑だけでなく、ミネソタの湖畔に揺れるワイルドライスの中にあるのかもしれない。

この「TAJI JARNAL」とマークされているテキストは 本誌編集長田嶋伸浩が執筆しております。


【略歴】 Nobuhiro Tajima

2013年よりクラフトビール専門誌『TRANSPORTER BEER MAGAZINE』発行人となる。
2017年ベルギー発修道院ビール『CHIMAY』と契約、ジャパンマーケテングを担当。その後もクラフトビール業界において幅広く活動、会社顧問商品開発、店舗開発,コンサルティング、ブランドプロデユース、デザイン、広告、関連の仕事を数多く行なっている。
2018年伊勢角屋麦酒顧問就任


2019年FAR YEAST BREWINGアドバイザリー就任
2021年鎌倉ビール顧問就任
FAR YEAST BREWING TOKYO 店舗開発
伊勢角屋麦酒 八重洲店・新宿店・新橋店 店舗開発
株式会社なんつね飲食部門オリジナルビール企画店舗監修
BLACK TIDE BREWING 合同会社 代表社員
株式会社FUKUOKA CRAFT 代表取締役
株式会社ライフコーポレーションでのオリジナルビール企画、デザイン。
スーパーマッケット オオゼキでのオリジナルビール企画
株式会社RETTY でのクラフトビールイベント企画。
株式会社日テレ7でのオリジナルビール企画、アドバイザリー。

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