2025 is a Record Year for the No and Low Beer Market With 200 Million Pints Sold, New BBPA Figures Reveal

14 September 2026 vol.293
「酒を飲む人・酒を飲まない人」が完全に分かれているわけではない。 その間にある巨大なグラデーションが存在している

クラフトビールメーカーは、これからも5%前後のビールを増やしていくのだろうか。 IPA、Hazy IPA、West Coast IPA、Pilsner、Saison、Stout。 新しいスタイルを開発し、新しいホップを使い、新しい限定商品を発売する。
これまでのクラフトビール市場は、基本的に「次は何を造るか」という競争だった。 しかし、2026年のビール市場を見ていると、少し違う景色が見えてくる。 キーワードは、「何を飲むか」ではなく、「今日は何%を飲むか」だ。 5%。 3%。 そして0.0%。 これらを別々のブランドとして考えるのではなく、ひとつのブランドが複数のアルコール度数を持つ。 そんな時代が始まろうとしている。
⸻ 英国で起きている、静かな変化 その変化を象徴しているのが英国だ。 BBPAの数字によれば、2025年、英国ではノン/ローアルコールビールが2億パイント販売された。 これは英国のビール市場全体の約3%にあたる。 3%と聞くと、まだ小さく感じるかもしれない。 しかし重要なのは、その数字の大きさだけではない。 「ノンアルコールビール」という商品が、すでに英国のビール市場の中で無視できないカテゴリーになったこと。 そして、それを飲んでいる人たちの行動が変わっていることだ。 さらにDrinkawareの2026年Monitorでは、飲酒者の91%がアルコール摂取量をコントロールしているという結果が出ている。 前年の87%から上昇した。 つまり、「酒を飲む人」と「酒を飲まない人」が完全に分かれているわけではない。 その間に、巨大なグラデーションが生まれている。

「飲まない」ではなく「切り替える」Zebra-strippingとは?

こんなPODCASTを見つけました。(画像をクリックしてみてください)
⸻ 「飲まない」ではなく、「切り替える」 ここで出てくるのが、Zebra-strippingという言葉だ。 フルアルコールのビールと、ノン/ローアルコール飲料を同じ機会の中で交互に飲む。 5%を飲んだあと、0.0%。 また5%。 そして0.0%。 つまり、 「今日は飲む」 「今日は飲まない」 という二択ではない。 「今日はどのくらい飲む?」 という選択に変わっている。 これはビールメーカーにとって、非常に大きな意味を持つ。 なぜなら、消費者がアルコール度数を自由に切り替えるようになれば、ブランド側もその選択肢を用意する必要が出てくるからだ。
Zebra Striping
ゼブラストライピング(Zebra Striping/ゼブラ飲み)とは、お酒とノンアルコール飲料や水を1杯ずつ交互に飲むことで、酔いすぎや飲みすぎを防ぐ飲酒スタイルのことです
消費者の飲み方が「occasion」へ変化している

⸻ 老舗エールまで0.0%になる その象徴的なニュースが、Old Speckled Hen ZEROだ。 英国の老舗プレミアムエールブランド、Old Speckled Henが0.0% ABVの商品を発売した。 2026年にDamm UKが買収した同ブランドにとって、今回のZEROは大きな新展開となる。 しかも単なる「ノンアル商品」ではない。 Old Speckled Henらしいモルティーな味わいに、キャラメルやフルーツのニュアンスを残しながら、0.0%にする。 100mlあたり12kcalという低カロリーも特徴だ。 Damm UKは、この商品について、消費者の飲み方が「occasion」、つまり飲む場面に合わせて変化していることを背景に挙げている。 そして明確に「zebra-stripping」という消費行動にも言及している。 (MorningAdvertiser.co.uk) これは非常に象徴的だ。
Old Speckled Henは、1979年に登場した英国を代表するエールブランド。 そんな歴史あるブランドですら、 「ビールとはアルコール5%前後の飲み物である」 という考え方から離れ始めている。 DammがOld Speckled Henを買収したのは2026年5月。 そのわずか数カ月後に0.0%を投入したことも、偶然ではないだろう。 (Damm Corporate) ⸻ 0.0%は「ビールの代用品」ではない ここで、日本のクラフトビール業界が考えるべきことがある。
もはや、ノンアルコールビールは5%ビールの代用品ではない
ノンアルコールビールを、 「アルコールを飲めない人向けの商品」 として考えてはいけない。 それでは市場が小さすぎる。 むしろ考えるべきなのは、 「同じ人が、違う場面で選ぶ商品」 ということだ。 夜の食事では5%。 昼なら3%。 仕事がある日は0.0%。 キャンプでは5%。 運転がある日は0.0%。 休肝日は0.0%。 今日は少しだけ飲みたいなら3%。 そして週末の夜は5%。 消費者は一人のまま。 変わるのは、その日の状況だ。 だから、5%、3%、0.0%は競合商品ではない。 同じ消費者の中に共存する商品なのだ。
クラフトビールメーカーのブランド設計そのものが変わってくる。
⸻ これからのブランドは「何%」まで持つのか ここで、クラフトビールメーカーのブランド設計そのものが変わってくる。 例えば、ひとつのIPAブランドがあるとする。 オリジナルは5%。 そこに3%のSession IPAを加える。 さらに0.0%のIPAを加える。 これは単純にSKUが3つになるという話ではない。 ひとつのブランドが、 「5%を飲む人」 だけではなく、 「3%を飲む人」 そして、 「今日は0.0%を選ぶ人」 まで取り込めるということだ。 ブランドの寿命が長くなる。 ブランドと消費者が接触する回数も増える。 そして何より、消費者の生活の中にブランドが入っていく。 ⸻ 「アルコールを増やす」から「飲めるシーンを増やす」へ クラフトビール業界では、これまでアルコール度数が商品の個性として語られることが多かった。 6%のIPA。 8%のDouble IPA。 10%のImperial Stout。 アルコール度数が高いことそのものが、商品の魅力になることもあった。 しかし、これからは逆方向の価値も生まれる。 3%。 0.0%。 低いことそのものが商品の弱点ではなくなる。 むしろ、 「この場面なら3%」 「この場面なら0.0%」 という価値になる。 つまり競争軸が、 「どれだけ強いビールを造れるか」 から、 「どれだけ多くの飲む場面を取れるか」 へ移っていく。
「どれだけ強いビールを造れるか」 から、 「どれだけ多くの飲む場面を取れるか」 へ移っていく。
⸻ クラフトビールメーカーにとって最大の問題は「味」 もちろん、簡単な話ではない。
5%のビールを3%にすればいいわけではない。 5%のビールからアルコールを抜けば、0.0%として美味しくなるわけでもない。 アルコールは、ビールのボディや香り、口当たりにも影響する。 そのため、3%には3%の設計が必要になる。 0.0%には0.0%の設計が必要になる。 ここに、これからの醸造技術の競争がある。 「アルコールを抜いたビール」ではなく、「最初から0.0%として美味しいビール」をどう設計するか。 これはブルワーにとって、かなり面白いテーマになる。
⸻ そして、クラフトビールの定義も揺らぐ ここで一つの疑問が出てくる。 0.0%はクラフトビールなのか? これまでなら、少し違和感を持つ人もいるだろう。 しかし、クラフトビールの価値を「アルコール度数」で決める必要があるのだろうか。 原料を選ぶ。 ホップを選ぶ。 酵母を選ぶ。 醸造方法を選ぶ。 味を設計する。 地域性を表現する。 ブランドを作る。 それがクラフトの価値だとするなら、0.0%になった瞬間にクラフトではなくなる理由はない。 むしろ、 「アルコールがなくても、そのブルワリーらしい味がする」 ことのほうが、難しい。
ひとつのブランドをどこまで強くできるか?

日本はまだ「5%のビール」を増やそうとしている。
日本のクラフトビール市場を見ていると、まだまだ「新しいビールを作る」ことに重点が置かれている。 新しいホップ。 新しいスタイル。 新しいコラボ。 新しい限定商品。 もちろん、それはクラフトビールの楽しさだ。 しかし、これから市場が成熟していくと、問題は変わってくる。 「新しい商品を何種類作れるか」ではなく、「ひとつのブランドをどこまで強くできるか」。 その答えのひとつが、5%、3%、0.0%なのかもしれない。
⸻ 「今日は何%?」という新しいブランド戦略 例えば、日本のブルワリーが自社の代表的なIPAを持っているとする。
★そのブランドの5%版は、王道として存在する。
★3%版は、食事や昼飲みを狙う。
★0.0%版は、運転、仕事、休肝日、スポーツなどを狙う。
ビールは「夜の飲料」から「一日の飲料」へ変わる
すると、同じブランドが一日の中で何度も登場できる。 朝から5%を飲む必要はない。 昼なら0.0%。 夕方なら3%。 夜なら5%。 そんな選択ができる。 ブランドは「夜の酒」から、「一日の飲料」へ変わる。
⸻ これはクラフトビールの「成長戦略」でもある 市場が成熟すると、消費者一人あたりの飲酒量を増やすことだけでは成長できない。 ならば、同じ消費者に違う場面で選んでもらう。 これは非常に合理的だ。 5%の商品をもっと飲んでもらう。 だけではなく、 3%も飲んでもらう。 0.0%も飲んでもらう。 結果として、ブランドとの接点を増やす。 つまり、 「アルコール消費量を増やす」ことと「ブランドの消費機会を増やす」ことは、別の話なのだ。 ここを理解すると、0.0%商品の意味が大きく変わってくる。
⸻ そして、これはブルワリー経営そのものを変える 5%、3%、0.0%を同じブランドで展開するなら、当然SKUは増える。 在庫管理も複雑になる。 賞味期限管理も必要になる。 製造計画も変わる。 営業先も変わる。 スーパー、コンビニ、レストラン、バー、ビアパブ、スポーツ施設など、売り場も変わる。 つまり、0.0%は単なる新商品ではない。 ブランド、醸造、営業、物流、在庫、トレーサビリティまで含めた経営戦略になる。 これは、これからのクラフトビールメーカーにとってかなり重要なポイントだ。
「ビールを売る会社」から「飲むシーンを売る会社」

⸻ 「ビールを売る会社」から「飲むシーンを売る会社」へ 2026年の英国で起きていることを見ていると、クラフトビール業界が考えるべき問いは、 「ノンアルコール市場が伸びるのか?」 だけではない。 もっと本質的な問いがある。 「消費者は、これから一つのアルコール度数だけを選ぶのか?」 おそらく、そうではない。 5%の日もある。 3%の日もある。 0.0%の日もある。 そして同じ日に、それらを切り替えることもある。 だから、これからの強いブランドは、 「5%の美味しいビールを造るブランド」 だけではない。 「5%でも、3%でも、0.0%でも、そのブランドだと分かるブランド」 になっていく。
「何%のビールを造るか?」ではなく、「同じブランドで、何%まで消費者の一日をカバーできるか?」が勝負の分かれ目
⸻ クラフトビールは、アルコールを捨てるのではない。 むしろ逆だ。 アルコールを持つ商品と、持たない商品を両方持つことで、ブランドが消費者の生活に入っていく。 5%を捨てる必要はない。 3%を加えればいい。 0.0%を加えればいい。 そして消費者自身に選んでもらう。
今日は5%なのか。 今日は3%なのか。 今日は0.0%なのか。 その選択肢を持っていること自体が、これからのブランド価値になる。 英国では、すでに老舗エールブランドまでその方向へ動き始めた。 2億パイント、約3%。 飲酒者の91%が飲酒量をコントロールする。 そして「飲む/飲まない」ではなく、「飲み分ける」という行動が生まれている。 これは、ノンアルコールビールの話ではない。 ビールそのものの定義が変わり始めている、という話だ。 そして日本のクラフトビールメーカーが次に考えるべきなのは、 「次は何%のビールを造るか?」ではなく、 「同じブランドで、何%まで消費者の一日をカバーできるか?」 なのかもしれない。

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