Insights from a survey of 6,000 beer consumers on the future of craft beer: "Great taste alone is no longer enough to sell." (Part 1)

「美味しいビールを造れば売れる。」はクラフトビール業界の前提だった。

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――6,000人のビール消費者調査から見えた、これからのクラフトビール

「美味しいビールを造れば売れる。」クラフトビール業界では、長い間この言葉がある種の前提として語られてきた。

もちろん、美味しいことは重要だ。しかし、今の消費者はそれだけを見てビールを選んでいるのだろうか。今回、Kalsecのホップ関連ブランド「KalHops」が12カ国、6,000人のビール消費者を対象に行った調査は、そんな業界の常識に少し違った角度から問いを投げかけている。

調査では、味だけではなく、原材料、ラベルに書かれた言葉、自然由来であること、ホップの種類、そして製造方法に関する情報まで、消費者が購入判断の材料として見ていることが示された。

もちろん、この調査はKalsecがスポンサーとなって実施した自社調査であり、すべての市場や消費者にそのまま当てはめることはできない。

それでも、6,000人という規模で見えてくる消費者の意識には、ブルワリーが無視できないヒントがある。 

「美味しい」は、あくまでもスタートラインだ。

クラフトビールの世界では、味へのこだわりが非常に強い。

どんな麦芽を使うのか?どのホップを選ぶのか?発酵温度は何度なのか?IBUはいくつなのか?どんな酵母を使うのか?ブルワーはそこに膨大な時間を費やしている。しかし、消費者がそのすべてを理解してからビールを買っているわけではない。

スーパーで缶を手に取る。タップリストを見る。SNSで写真が流れてくる。店員におすすめを聞く。

そこで最初に判断されるのは、「これは自分が飲んでみたいビールなのか?」ということだ。

つまり、味を評価してもらう前に、まず「選んでもらう」必要がある。

ここが、これからのクラフトビールにとって重要なポイントになる。

今回の調査で目を引くのが、「natural」という言葉だ。

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86%が「Natural Flavors」をポジティブに評価

調査では、回答者の86%がビールにおける自然由来のフレーバーをポジティブに捉えているという。

ここで重要なのは、消費者はビールを飲む前から、「ラベルを通して味を想像している」ということだ。

原材料は何なのか?どこから来たものなのか?自然なのか?伝統的なのか?サステナブルなのか?

そうした言葉が、飲む前の期待値を作っている。つまり、缶の表面に書かれた一言が、味覚体験の入り口になっている。

いまさら聞けないNatural Flavorsの定義

ナチュラルフレーバー(Natural Flavors、天然香料)とは、植物、動物、微生物などの自然界に存在する素材から抽出・由来した、食品の風味をつけるための成分の総称です。

「ホップエキス=クラフトではない」は、本当に正しいのか?

今回、特に興味深いのがホップエキスだ。

クラフトビールの世界では、「ホップはペレット」「ホールホップこそ本格的」「エキスは工業的」というイメージを持っている人もいる。

ところが今回の調査では、回答者の約4分の3がホップエキスは味にポジティブな影響を与えると回答。

さらに63.5%が、ホップエキスを使用していることがパッケージに明記されたビールを、より購入したいと回答したという。

ここは、ブルワーにとって考えさせられる。もしかすると、業界の常識と消費者の認識は、すでにズレ始めているのではないか。もちろん、ホップエキスを使えば必ず美味しくなるという話ではない。重要なのは、「何を使ったか」ではなく、「それによって、どんなビールになったのか」ということだ。

「クラフトらしさ」と「美味しさ」は同じではない。ここの混同は危険。

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クラフトビールには、独特の価値観がある。

「小規模であること」。

「手作業であること」。

「伝統的な原料を使うこと」。

「珍しい原料を使うこと」。 

「大量生産ではないこと」。

それらは確かにクラフトビールの魅力になってきた。しかし、「クラフトらしい製法」と「消費者が美味しいと感じる製法」は、必ずしも同じではない。ここを混同してはいけない。

ホップエキスでも、ペレットでも、ホールホップでもいい。重要なのは、それを使って消費者にどんな体験を提供するか。

もし新しい技術によって、香りが安定する。酸化を抑えられる。ロスが減る。品質が安定する。同じ商品をいつ飲んでも美味しい。そうなるのであれば、クラフトビールは積極的に使っていいはずだ。

「クラフトだから昔ながら」ではなく、「クラフトだから自由」。この考え方が、これから必要になるのではないか。

味のトレンドも、ただの「IPA人気」では終わらない。重要なのは、消費者が「味のイメージ」を求めている。ということではないだろうか。

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調査では、シトラス、 トロピカルフルーツ、ホッピーなフレーバーへの関心も高かっ た。ここだけを見れば、「やっぱりIPAだ」という話になりそうだ。しかし、それだけでは面白くない。重要なのは、消費者が「味のイメージ」を求めている。ということではないだろうか。

「Cascade使用」(アメリカを代表するアロマホップ品種)と書かれていても、そのホップを知らない人には味が想像できない。 

しかし、「グレープフルーツのような香り」「マンゴーやパッションフルーツを思わせる香り」と書かれていれば、飲む前から商品を想像できる。つまり、ブルワーが使いたい言葉と、消費者が理解できる言葉は違う。

ここにもマーケティングの余地がある。

「ホップ品種」がブランドになる時代。「Citra」「Mosaic」「Simcoe」「Nelson Sauvin」など、ホップの名前そのものが消費者に認識され始めている。

さらに興味深いのが、ホップ品種そのものへの関心だ。

昔は、「このビールはIPAです」で十分だった。しかし現在は、「Citra」「Mosaic」「Simcoe」「Nelson Sauvin」など、ホップの名前そのものが消費者に認識され始めている。

これはワインの「品種」に近い。

ワインを飲む人が、「ピノ・ノワール(Pinot noir)だから」「ソーヴィニヨン・ブラン(Sauvignon blanc)だから」と選ぶように、ビールでも、「このホップだから飲みたい」という消費行動が生まれる可能性がある。

ホップは単なる原材料ではなく、ブランドになる。その理由は消費者が「そのビールを選ぶ理由」になるからだ。

これからは「原材料を売る」ことも必要になる

ブルワリーは、これまでビールそのものを売ってきた。

しかし、これからは、ビールに使われているもの自体を価値として伝えることも重要になる。

どこのホップなのか?どの品種なのか?なぜそのホップを使ったのか?どんな香りを狙ったのか?どんな農家・生産者と関係しているのか?どんな工程でビールになったのか。

こうした情報は、単なるスペックではない。消費者が「そのビールを選ぶ理由」になる。

若い世代は「ビール」だけを見ていない

今回の調査で注目したいもう一つのポイントが、若い世代や地域による違いだ。すべての消費者が同じビールを求めているわけではない。

ある地域では自然由来という言葉が響く。

別の地域ではフレーバーが重要になる。

若い消費者には別のラベル表現が刺さる。

そして、ビールだけではなく、ノンアルコールビールやホップウォーターなど、「ビールの周辺カテゴリー」にもホップの可能性が広がっている。

これはクラフトブルワリーにとって大きなヒントになる。「アルコールを飲まない人には売れない」ではなく、「ホップという自分たちの強みを、アルコール以外に展開できないか」という発想だ。

日本のクラフトビールは「造る」から「選ばれる」へ

日本のクラフトビール業界を見ていると、まだまだ「造ること」に力が集中しているように感じる。

新しいレシピを作る。新しいホップを探す。新しいスタイルを造る。コラボする。もちろん、それは必要だ。

しかし、商品数が増えれば増えるほど、「なぜ、このビールを選ぶのか」が重要になる。同じようなIPAが何百種類もある。

同じようなラベルが並ぶ。SNSには似たような写真が流れる。その中で、どうやって選ばれるのか。「美味しいです」だけでは、伝わらない。

美味しさを「言語化」できるブルワリーが強くなる。

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これからのブルワリーには、醸造技術だけではなく、味を言葉にする能力が求められるのかもしれない。

「美味しい」ではなく、「なぜ美味しいのか」。

「香りがいい」ではなく、「何の香りなのか」。

「このホップがすごい」ではなく、「このホップを使うことで、何が変わるのか」。

それを消費者が理解できる言葉にする。ここまでできれば、ビールは単なる飲料ではなくなる。

「クラフト」という言葉だけでは、もう差別化できない

クラフトビール市場が大きくなればなるほど、「クラフト」という言葉そのものの希少性は下がっていく。クラフトだから美味しい。クラフトだから高品質。クラフトだから面白い。それだけでは差別化できなくなる。

だからこそ、「このブルワリーだから飲む」という理由が必要になる。

味なのか?原材料なのか?技術なのか?地域なのか?ブランドなのか?ストーリーなのか。あるいは、その全部なのか?

日本のブルワリーは、「自分たちが造りたいビール」だけを見ていないか?

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6,000人の回答から、日本のブルワリーが考えるべきこと

今回の調査結果を、そのまま日本市場に当てはめることはできない。しかし、重要な問いは残る。

消費者は何を見ているのか?缶を手に取った瞬間、何を判断しているのか?

ラベルのどの言葉に反応するのか?原材料を見ているのか?味を想像しているのか?ブランドを見ているのか?価格を見ているのか?

そして、一度飲んだ後に、「もう一度買いたい」と思う理由は何なのか?これを知ることが、これからのブルワリー経営には必要になる。

「美味しい」はゴールではない。結局、今回の調査から見えてくるのは、「美味しいビールを造ることと、売れるビールを造ることは、同じではない」という当たり前の事実なのかもしれない。

「美味しい」。それは大前提。その上で、「何を使っているのか?」「どんな味なのか?」「なぜこの味なのか?」「どんな価値があるのか?」「それをどう伝えるのか?」そして、消費者が「自分も飲んでみたい」と思えるのか?

これからのクラフトビールは、「造る」だけではなく、「伝える」ことまで含めて商品になる。

ホップエキスを使うかどうか?Naturalという言葉を使うかどうか?ホップ品種を前面に出すかどうか?NAやホップウォーターに挑戦するかどうか?答えは一つではない。しかし、少なくとも、「ブルワーが良いと思っているから、消費者も良いと思うはず」という考え方からは、そろそろ卒業する必要がある。

6,000人の消費者が教えてくれたのは、単純な「人気フレーバー」の話ではない。消費者は、ビールを飲む前から、そのビールの価値を判断している。だからこそ、美味しいだけでは、もう売れない。これからのクラフトビールに必要なのは、「何を造るか」だけではない。「なぜ、それを選んでもらえるのか」を設計すること。

そこに、ヒントが隠されている。

 

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