transporter

Ryo’s EYE -From issue 17-

TRANSPORTER BEER MAGAZINE No.17(2018)

2022年 11月 14日 10時 02分 投稿 210 Views

どうもこんにちは。今回は今年一年の総括をして いきたいと思います。

まずは個人的なことについて。今年うちで製造し たビールは、約95バッチ、量にして55KL程度です (12月末までの予想値を含む)。作り始めて2年半ほ どになりますが、昨年度と比べると3割くらいアッ プしています。かなり作るペースが上がりました。 もうぼちぼち現設備での稼働率がいっぱいになりそ うです。

その中で、自分でイチからレシピを組んだものが 3つ、主導で調整したものが2、3。こうしてみると、 もっと主張してかなきゃなと思います。月イチくらいでなんかやれればなー。なんて。

製造の技術に関しても、だいぶ変わってきた部分 もあります。やはり、数々のコラボレーション、国 内外のブルワーとの情報交換、CBCなどの遠征に よって得る情報はとても貴重ですし、取り込めるも のはどんどん取り込んでいます。いままで使用して いなかった機材を入れてみたり、作業の方法を変え てみたり。実際、クオリティにも反映されてきてい るのではないでしょうか。

また、今年ははじめて助手というか、研修生がつきました。いままでほぼ一人で作業していたことも あり、自分ひとりでは気づかなかったことや、人に 説明することで改めて考えるきっかけにもなりました。うまく説明できず自分の未熟さを再認識する、 なんていうこともあったり。学校で基礎から勉強しているわけではないということもあり、しっかりイ チから理解していることによってのちの人材育成に 響いてくるんだなと実感しました。それが造りにもより一層影響するのはいわずもがな。ルーティーン ワークがゆえに作業がマンネリ化しやすい仕事なので、こういう機会を与えてもらって非常にいい刺激 になりました。

さて、次はここ1年の世界のビール業界の流れを振り返ってみようと思います。

今年は何といってもNew England IPAの日本上 陸、席巻が著しかったですね。これをどう定義付けるか、濁ってればいいんでしょ、とかいう話はそれ で長くなるし、私よりもよっぽど詳しい方が多いと思いますのでここでは割愛させていただきます。  思えば2年前の11月にかのNew England地方 (①)を訪れ、それこそこのタイプのビールが現地 でかなり盛り上がっている時期だったのでとても多 くの種類のものを飲みました。

マサチューセッツ州にある Tree house brewing

正直に言うと、私はクリア&クリーンなビールのほうが好みなので、言うほど刺さらなかったです。 贅沢な話ですね。もちろんたくさん飲んだ中で群を 抜いているものもいくつかありました。そこまで突 き抜けたものは好きです。美味しいものは得意じゃ ないスタイルでもおいしいのです。

今世界中を席巻しているのは、そのさらに上を行 くMilk Shake IPAになるんでしょうかね。NE IPA にラクトース(乳糖)を加えることで甘味をつけ、 より一層濃厚な、名前の通りミルクシェイクのよ うな味わいを表現するものです。さらにここにココ ナッツやマンゴー、パッションフルーツなどのトロ ピカル系のフルーツを加えることによって究極に濃 厚な大人のミックスジュースを造るブルワリーが最近非常に多くあります。ミルクシェイクの生みの親 とも称されるスウェーデンのOmnipolloやフィラデ ルフィアのTired Hands(②)がとても有名ではあ りますが、そこを起点にアメリカ、ヨーロッパ各国 でこぞって作っているところが多いようです。先日 うちに訪問したブルガリアのビール関係者もすごく 流行っているといっていました。これから日本でも 飲める機会が増えるかもしれませんね。

さて、こういった小規模、ローカルでの販売を軸 に生産されているものとは対照的に、クラシックな スタイルに注目が集まっているところもあります。 そう、私の大好きなピルスナーですね。日本は4大 メーカーをはじめドイツのビールを基礎としている ブルワリーが多いこともあり良質なピルスナーがと ても多いのですが、アメリカの場合はキレのある爽 快なラガーが多く、大手メーカーがピルスナーを 造っている場合は少ないです。そうした背景もあり、 クラフトビール会社がIPA、ペールエールだけでな く、ピルスナーでもそれぞれの個性を十二分に発揮 することができるのです。

非常に繊細で造るのが難しいこの系統のビール を、古典的な作り方を踏襲しつつも現代風にアレン ジしたピルスナー。キャラクターも立っていて、そ れでいて何杯でも飲めてしまう軽快さ、何も考え ることなく気が付いたらグラスが空になっている不 思議。非常にクオリティが高いです。また、ピルス ナーに限らず、ケルシュやヴィエナラガー、メルツェ ンなんかも人気です。これらも尋常じゃないクオリ ティのところが多い。

日本に輸入されているブルワリーでも、最近よく ピルスナー(③)とかクラシックなスタイルのビールが入ってきていますね。たまにはこういったものも騙されたと思って買ってみてください。きっとまたいつもとは違った出会いがあるかもしれませんよ。

②その名の通りミルクシェイクのような味わいの 甘くて苦いIPA ③カリフォルニア州Firestone Walker BrewingのPIVOピルスナー

ちなみにこの流れに関しては、前述したとおり日 本においてはまったく状況が異なるためそうはならないのかなとは思います。

少規模・フレッシュな味わいの特別なビールと、 大規模・クリーンでドリンカブルなビール。クラフ トビール会社が乱立し、それ自体の規模にかなりの 差がある現状において、この2極化が表面化してき たのも不思議ではないのかもしれません。  あとはサワーエールとか、新種のホップ、クラフ トビール新興国などいろいろと話すことは尽きない ですがページの関係で今回はここまで。 お付き合いいただきありがとうございました。 DevilCraft Brewery 鈴木 諒

鈴木 諒 suzuki ryo
DevilCraft brewery brewer
http://www.devilcraft.jp/

     

その他の記事