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藤田こういちのベルギービール新書 4 -地味なビールの話 Forward to the Basic-

TRANSPORTER BEER MAGAZINE No.18(2018)

2022年 11月 14日 10時 03分 投稿 21 Views

 ベルギーに行く一つの醍醐味は、やはり現地のビアカフェです。ベルギー国内には人口約1,100 万人に対して、約30,000 件ものビアカフェがあると言われています。雰囲気、集まる人、提供されるビール、現地の空気感を感じることは何より楽しいですし、また戻ってきたいと思わせてくれます。そこには美味しいビールはもちろん、たくさんの笑顔があります。すごくリラックスした感じで、ビールが日常に溶け込んでいるのを肌で感じます。ベルギーは他にも魅力的なものや場所はたくさんありますが、ビールを飲む事だけの目的で行っても絶対に損はしませんよ、それは断言しておきます。

 ブリュッセル、アントワープ等の大きな街だけではなく小さな街にも大小様々なビアカフェがあり、それぞれに特徴があります。ブリュッセルだけでも、ランビックや小規模醸造所の素晴らしいビールが揃う❶ MoederLambic、私はベルギー滞在中は毎日のように行きます。アールヌーボーの建築が残り文化遺産にもなっている❷ A La Mort Subite、ここは何も考えずにただ雰囲気に浸りに行きます、ただ店名はフランス語で「即死」 。シュルレアリスムの代表画家、ルネマグリットが通ったという❸ La Fleur en Papier Doré、昔にタイムスリップしたかのような感覚になります、大きな犬がカウンターから出て来たのにはびっくり。マニア必見のヴィンテージビール等もストックしている❹ Bier Circus、初めてベルギーに行った時に勉強だと思ってヴィンテージのウェストフレテレンを大金叩いて飲みました、状態がよくなかったのか、当時の未熟な味覚のせいなのか、あまり美味しくなかった。

 ブラッセルズビアプロジェクトのセバスチャンと初めて会った際に行った❺ Monk Bar、大手のビールに支配されるビアカフェが多い中、独自の品揃えでいつも混雑していて、奥で食べられる柔らか〜いスパゲッティは日本では特盛を超えそうな大きさ、慣れると何故かハマります。この柔らか〜いパスタ、初めはまずいと感じます。地元の人が多くこじんまりとした居心地最高な❻ Le Coq は猫がずっーと寝ていて席を譲ってくれなかった思い出があります。ビアカフェというよりはレストラン要素の強い❼Nüetnigenough はデュポンのラガーRedorPils が常設だったり、とにかくビールのラインナップがずば抜けて素晴らしい、ビールと食事ならばここです。小便小僧の前の❽ Poechenellekelder はランチも美味しく店員さんの知識も豊富、人形の飾りは圧巻です。甘いランビックが有名な❾ À la Bécasse はちょっと疲れたら行きます、まだまだ好きなビアカフェはたくさんあるので、キリがありません。世界遺産グランプラスのテラスで飲むビールもまた良いものです、ピンクの象で有名なデリリウムカフェは若者や観光客も多くいつも混雑しています。

 

 ビアカフェとは少し違いますが虹色のフラッグのかかっているお店、結構ブリュッセル中心に数があるんですが、路面店にふらっと知らずに入った事があります。一人で行くと同性にモテます、笑。もちろん普通に入って飲むこともできるのですが、そういう場所ですのでちょっとご注意を。そういうことにオープンで進んでいるのもベルギーの一面なのです。

 話を戻しますが、特にいいなと思うのは少し都市部から離れたビアカフェです。私が世界一好きなデュポン醸造所の目の前にあるLa forge とランビックの聖地とも言われるIn de Verzekering tegen de Grote Dorst この二つは普通の田舎のビアパブを超越したものがありますが、通常田舎のそこには老若男女いろいろな人がくるわけで、イギリスのパブ文化と同じように地域の社交場のような意味合いもあります。

 そこで飲まれているビール達がなんとも言えず美味しい時があるんですね、その雰囲気などにバイアスがかかりさらに美味しくさせている可能性もありますが、ブロンドエールだったりアンバーエールだったり一見特徴の捉えにくいビール、銘柄はいろいろあると思うのであげませんが、その地域ごとにわりと地域色の強いビールがあったりして、ラガービールもありますが、ブロンドエールが多く、少し甘さがあったり、比較的モルティなものも多い気がします。

 デュポン醸造所のそばのLa Forge に初めて行った時に、みんなセゾンデュポンではなくモアネットブロンドを飲んでいたのを目の当たりにして驚きました、今でこそ輸出のおかげでセゾンデュポンの生産量が増えているそうですが、数年前まではモアネットブロンドのほうが生産量が多く今でも地元ではおそらく一番人気だと思います。セゾンよりもボディがあってゆっくり飲めるビール、かつ飲みあきない。それぞれが思い思いに時間を過ごすビアカフェの理にかなっているなとすごく腑に落ちるものがありました。ベルギーには1 杯1 時間という言葉があるそう、文化というとかたく聞こえますが、日常の中のビールがそこにはあります。

 「スペシャルベルジュ」というジャンルのビール、ご存知の方はあまりいないと思いますが、ベルギーのブリュワリーの間では比較的名の知れたビールです。セゾンのように世界中で造られていたりは全くしません、笑。 有名なところでいうとデコーニンクやパルムといった銘柄でしょうか、デュポン醸造所も限定で造っていたことがあります。今残っているものはさほど多くはないと思います。アルコールは5%程度のアンバー(琥珀)カラー、軽いけどややボディもある、比較的ドライです。とかく派手さのないビール。もともとはラガービールに対抗するために作られたのが最初だとのこと。

 しかしこういった一見地味で特徴の捉えにくいビールではあるかもしれないのですが、毎日飲めるんです。地味というのはあまり良くないですね、「シンプル」と言ったほうがいいですね。

 ある何代も続くブリュワリーの友人から、おじいちゃんから教わった美味しいビールを造る秘訣は「よいモルトを使う事と掃除!と代々教えられているんだ」という話を聞いたことがあります。ホップじゃないのが何ともベルギーらしいです。バランスが大事というのもよく耳にします。

 ブラッセルズはお店の運営と輸入卸販売とありますので、インポーターとしての目線でビールを見ていると、どうしても売れる売れないを考えないといけない側面もあります、わかりやすい特徴を持ったビールは説明やおすすめがしやすくお店も売りやすい。ブリュワリーと良い関係を保つことは、継続的に輸入をして彼らのビールをたくさんの人に飲んでもらう、当たり前ですがビジネスとして成り立たせることがマストです。そんな売りやすい、売りにくい目線が出て来たときは自分に嫌気がさすこともあります、流行を捉えることもとても大事です、ですが、田舎のカフェで飲まれている地味でシンプルなブロンドビールでも、いいビールはたくさんあるので、そういったものもつくづく飲んでもらいたいなとベルギーに行くと思うのです。

 最近クラフトビールの先端の国では、クラシックなスタイルに寄っていく傾向もあるようです。これは果たしてBack to the Basic なのでしょうか?おそらく色々なビアスタイルを造り、飲み、だからこそもう一度クラシックなスタイルにたどり着く、美味しさに気づく、それは単純な原点回帰ではなくてむしろ前に進んでいるように思えるのです。昔のレシピを復活させたとしても、今なりの解釈になっていたり、何か新しいエッセンスが加えられているかもしれません。

 Back ではなくて、あえていうならGo forward to the basic なのではないかと。それともBack to the future ?なんだかわからなくなってきました。。。

 ベルギーのビアカフェでは自分が飲みたいビールはある程度決まっていてそれを飲み続ける人も多く見かけます。そろそろ日本でも地味かもしれないけど、毎日飲みたいビールがある、自分の好きなビールを飲む、そういう風な楽しみかたをもっとされてもいいですよね。限定ばかり追いかけるのではなくてその醸造所のスタンダードこそぜひ飲んでみましょう。地味なビールかもしれませんが、気取らずに毎日飲みたいビールに出会えたら嬉しいですよね。

 

藤田 孝一
Koichi Fujita
セゾンデュポンなど数多くのベルギー ビールを輸入するブラッセルズ株式会社 取締役
【Facebook】 https://www.facebook.com/brussels.jp/
【Beer Bar BRUSSELS】 http://www.brussels.co.jp/
【輸入部オンラインカタログ】 http://www.brussels.co.jp/import-c/
     

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