連続3回でお届けする田嶋編集長の連載「Taji Jarnal」を深堀する「Dig It」その3回目です。美味しいビールを楽しみながらお読み頂けたら幸いです。
Enjoy! CraftBeer

きっかけはリーマンショック
アメリカ西海岸のオレゴン州に属する、ポートランドに注目が集まり始めたのが サブプライム金融危機に端を発した2008年の「リーマンショック」(financial crisis of 2007–2008)以降です。

Part.3
金融危機が人々の価値観や行動様式に長期的な影響を与え、質素で共有・体験重視の傾向が強まりました。
空前の不景気の中で芽生えた新しい価値観が変わったんだと思います。
生活様式の変化がもたらしたクラフトビールへの影響?
自分用に作っていたビールが いつの間にか 販売するビール、クラフトビールの原型になっていきました。ポートランドでは1930年頃からネイバーフッド・アソシエーション(Neighborhood Association)という自治体のような組織が存在しています。
日本にも町内会という組織がありますが、大きな違いは、都市計画や予算策定に直接関与する法的権限を持ち、自治体から年間3000~5000ドルの資金支援を受けながら、環境維持や政策提言を行うボランタリーな団体であり、そこで地域の課題について話し合い、住民同士で解決方法を探ります。根底にあるのは「自分たちの住む街は、自分たちでつくっていく」という考え方。住民一人ひとりが、街のことを自分のこととして捉え、地域の未来をよくするために、街づくりに積極的に参加してます。

ポートランドツアーに行きませんか?
ポートランドの6日間 計画中
info@craftbeertransporter.com
ポートランドが注目される4つの“キーワード” by 田嶋編集長
- ❶「DIY(do it yourself)の街」、ホームブリューイングの背景
- 1960〜70年代に起きたヒッピームーブメントが、ポートランドの歴史に深く関わっています。カリフォルニアの退廃した空気から 避けるようにオオレゴン州に移住してきたヒッピー達の多くは平和主義で、身の回りの物は何でも手作りで生活を始めました。リサイクルやDIYを始め、オーガニック食品へのこだわり、そしてアートやクラフトなどの作品を制作し、当時はそれを売って生活していたそう。その流れが、ポートランダーの「自分達で作る」というDIYへのルーツになっていると言う背景があるようです。

- ❷世界屈指の名産地で、「ポップの聖地」(A mecca for pop)
- カスケード(Cascade)は、1956年にUSDA(米国農務省)がオレゴン州立大学と共同で交配を開始し、1972年に正式リリースされたホップ品種です。1980年、ケン・グロスマンが創業した Sierra Nevada Brewing Co. は、フラッグシップの Pale Ale にカスケードを全面的に採用しました。このビールの爆発的なヒットが、アメリカンクラフトビール・ムーブメントの方向性を決定づけたと言われています。
Sierra Nevada Brewing Co. https://sierranevada.com/

- ❸消費税(salestax)がない
- 全米で数少ない「消費税(Sales Tax)が0%」しかし 住人には違うその分、勤労者ならびに企業からの所得税(Income Tax)と不動産にかかる固定資産税(Property Tax)が消費税分を負担しているという側面があるようです。消費税以外の税金が高くなってるのですね。以前 ポートランドに住む友人が嘆いていました。

- ❹ホール・フーズ・マーケットの後押し
- ポートランドでは、大手チェーン店をほとんど見かけません。
ローカルファースト(LOCAL FIRST)の意識を大きく推進したのが1980年にできたスーパーマーケット ホール・フーズ・マーケット(Whole Foods Market/https://media.wholefoodsmarket.com/)がアメリカ全土に広がったことです。このこともクラフトビールが盛り上がった要因だと思います。ポートランドで製造されたビールがホール・フーズ・マーケットの流通網に乗り、全米に拡がっていきました。ホール・フーズ・マーケットは地産地消を推奨していて、大手の商品ではなくクラフトビールをたくさん扱っていました。それまで クラフトビールは価格が高いと敬遠していた人にも、味の向上と共に それまでの大手のビールとは別物ということが理解されだしてからは、価格に合った質を求めた結果、おいしいビールが飲めるなら抵抗なく支払う層が増えていったのです。

2010年頃からはタップルームやブルーパブも多くなり、クラフトビールに対するお客さんのリテラシーも向上。ホッピーなIPAだけでなく、フルーティなヴァイツェンや、濃厚でチョコレートのようなポーターなど、自分に合ったスタイルを見つける力がついたのだと思います。
ポートランドの街を歩いてみると 目につくのが 歩く人や自転車の多さです車社会どっぷりのアメリカで この光景は不思議な景色に映ります。もちろん 車も走っていますが 他の地域に見られるフルサイズのアメ車やアメリカ人が大好きな大型のピックアップは明らかに少なくなりました。
またポートランドは街のサイズがコンパクトなので歩くのに適しています。
次のコーナーまでが延々と続いているロスに比べ、ポートランドのブロックは距離が短く設計されているので、歩いていて飽きません。
1つの街区の1辺を通常の半分である60mになっています。
余談ですが、“Think different.” 1997年 Apple Computerの広告スローガンである。ポートランドにはAppleの創業者 故Steve Jobsの在籍したリードカレッジがあります。
“Think different.” のDNAが息づく街
友人は ニューヨークからポートランドへ移住し、ワイン作りを始めました。
日本でもありますよね。農園の一部を借り、野菜作りを楽しむ。週末農業のような体験、そんな感じです。
「ワインは葡萄の木を栽培して、収穫してと、手間がかかるんだけど、その手間を楽しむ、しかし、ビールは簡単で、1週間とかで発酵するから、自分の飲むビールは 最近じゃあ 自分で作っているよ」 とサラッと話していました。
自宅でワインもビールもDIYしている友人は「ワインというのは、ブドウ畑の横で飲む酒なんだよ。ブドウの出来栄えに左右される農産物だしね。
でもビールは、原料の麦もホップも乾燥していてどこにでも運べる。
冷やせて、水を用意できればどこでもつくれるという装置産業だから 産業革命が大きく影響したんだ。」と持論を語ります。
友人が続けます。
「ポートランドは手作りの街だからね、大量生産ではなく手づくり、ローカルの時代になってきた。すると 次な誰が作るかが、大切になってきた。農業的な価値観が見直され、消費者は商品に物語を求め始めたってわけさ。そんな物語がここポートランドにはたくさんあるよ。」
3回に分けての「ポートランドとクラフトビールとの関係」いかがでしたか? 感想など お寄せ頂けたら嬉しいです。

