『クラフトビールを学ぶ旅』 -From issue 24-
全国の気になるクラフトビール醸造所を巡り、その魅力や驚きをリポートします TRANSPORTER BEER MAGAZINE No.24(2019)
「訪れた場所」
奈良醸造株式会社
奈良県奈良市に2017 年7 月よりビール販売を開始した醸造所。
奈良県奈良市北之庄西町1-8-14
☎ 0742-64-0108
タップルームは土日のみの 13:00 ~ 18:00(冬期は12:00 ~ 17:00)
「ビールを造っている人、 経営をしている人」
浪岡 安則 ( なみおか やすのり)
1997 年奈良県立奈良高校卒業をし、2002 年京都大学工学部地球工学科卒。同年に奈良県庁に技術吏員( 土木) として就職。主に道路行政に従事したあと、2015 年京 都醸造株式会社に入社、アシスタ ントブルワーとして修行をする事に。2017 年奈良醸造株式会社を設立し、代表取締役兼醸造責任者 となり現在に至る。
古都奈良。かつて人々はこの地より現代へと続く日本の礎を築いたとされる。ひとたび街を歩けばふっと目に留まる暮らし の痕跡からは、ゆっくりと運ばれてきた時の流れを感じずには 居られない。まるで今を嘲笑うかの様に、慌ただしさとは無縁 の落ち着いた空気感に満ちている。海外からの移住者が多い のはその馴染みやすさに魅力を感じているからなのかも知れな い。
悠久の時が溢れるこの街に突如現れたブルワリー『奈良醸造』。オーナー兼ヘッドブルワーの浪岡氏は、自身の地元で ある奈良県庁に就職したものの『ビールを造る』という思いだけを胸に、飛び出し向かった京都醸造での二年間の修行を経て 独立を果たしたという異例の経歴を持つ。安定した職業からの 転職に相当の不安もあったと想像するが、休みを見つけてはひ たすらに自転車を漕いで県内を走り回り、遂には約束の地をも 探し当てたのだった。 落ち着いた見た目とは裏腹に、ひとたび 話を始めると何とも情熱的なお人柄。なぜ奈良に醸造所を?と 気になる所だが氏の故郷でスタートしたいという強い思いに加 え、当時奈良県内にはたった一軒の醸造所しかなかった事が背 中を押す理由として十分だった様だ。
『ローカル( 地元)』を意 識する事は世界中のビールシーンにおいても重要なキーワード の一つ。『選ぶ楽しさを感じられる多種多様なビールを造る事』 をコンセプトに、定番よりもむしろ新しいレシピのビール造り にフォーカスしているのは、受け手としてのローカルを活性化 させる氏のビール哲学に寄与する部分が大きい。ダイレクトな 反応を直ぐに反映させられる利点もある。仕込みの工程から微 細な変化もデータとしてアーカイブしておくことでロジカルに調整も可能だという。
「ビール会社を始めて色々な事も分かっ た。当たり前かもしれないが夏は暑く、冬の仕込みは寒い( 笑)。 重労働でいて休みが余りないといった事もありますが凄く楽し いです!」と言い切る氏。地元で必要とされるブルワリーの存 在感にも手応えを感じている様子だが、自分たちの未来につい ての最後の問いには「神のみぞ知る…ですかね」と。ビール造りにはサラリとした側面も楽しめる要因の一つなのかも知れな い。静かなる中にギラギラとした視点がとても印象に残った素 晴らしき醸造情熱家。
□ 恒例イベントは?
この7月に1周年記念のイベントを開催しました。醸造所見学ツアーなど好評をいただけたので、来年も周年イベントをやりたいと考えています。
□これからブリュワリーを立ち上げる人にアドバイスをするとしたら?
たくさん(量ではなく、種類を)飲んで見聞を広めてください!お願いします!
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