昼からBeer Talk!! #2 Edited by Europe -From issue 04-
TRANSPORTER BEER MAGAZINE No.4(2014)
>>> ベルギービールとは?
【 沖 】 ベルギービールとは何かというと世界的なクラフトビールの流 れから言うと、ベルギーで造っているからベルギービールで すよ。はっきり言ってしまって。 ベルギーの伝統的なスタイ ルだとか、特殊なスタイルだけではなくて、ホッピーなもの= ベルギーで造っている IPA もいっぱいありますし、インペリ アルスタウトもあるわけで、ベルギーだからどうこうとか、アメ リカだからどうこうっていうのは、もはや僕はナンセンスだと 思います。基本的にはクラフトビールの流れの中でベルギー のテロワールで出来ることっていうのを考えるべき。
【菅原】ベルギービール自体は歴史があるもので、クラフトビールと違 う部分は歴史があるってことでバックグラウンドが凄くあるの で、一概に小さい所が造ったどうこうよりも逆に大きくなってるけど歴史がある。250 年やってるとか、日本酒と同じで すね。日本酒にマイクロ酒蔵でどこが何とかっていう話が無 いのと同じだと思っています。
【杉山】ベルギービールの与える影響っていうのが、アメリカだけで はなくてヨーロッパにも凄くありまして、イタリアのビールもそ うですしスイスのビールもそうなんですけども、ベルギービー ルがあってから、その影響を受けてからこそ造れるビールとい うのがたくさんあるので、ヨーロッパに与える影響が一番大きいビールだと思います。
【橋本】やっぱり他の国と違って、ベルギービールは菅原さんも仰っ ていたとおり歴史が長い。 伝統的なビールもありつつも、それに基づいて前衛的な新しいアプローチで造るビールもあ るっていうところが凄いなと思います。 他の国に無い横広が り、味の広がりじゃなくて時間という軸があるのが、ちょっと変わったところというか、ベルギービールらしいところだなと 考えています。
>>> 世界のクラフトビールのトレンド
【菅原】僕がベルギーでビールを造る一つの理由は醸造所が自分の 酵母を持っているからですね。日本の醸造所ってのは多分、 ワイイーストとかホワイトラボとか入手できる酵母が本当に限られていて、その中でビールを造るとなると自分のブルワリー の味、自分で造っているビールの差を他と違うように見せる ためにはホップしか無くなってくる。そうすると、結局最初は IPA とかになっちゃうんですよね。その中で目立つホップと なると新種とか出てくるアメリカのフルーティーなホップとか、 わかりやすいホップというのをどうしても使わざるを得ない。 IPA が流行ってくると、それを売るためにセッションが増えて くるんですよね。量を売るために軽いビールを、そういうホッ プを使って造ろうという流れになってくるので、セッションが 増えてくる。その中で今度はサワーエールでもベルギーの ローデンバッハとかみたいにちゃんと樽で寝かせないけども、 ワイイーストとかでも普通にブレタノマイセスとかレッドエール 用の酵母ってのがあるので、それを使って乳酸醗酵とかさ せることでサワーエールが出来ちゃうので、それで次はそうい うことをやって他の醸造所と違うことをしようっていう流れが 一つ一つ出てきて、それに追従者が出てきてトレンドが出来 ていくのかなと思います。
【杉山】やはり酸味っていうのは、なかなかビールでも出せないところ でもあるんですよね。イタリアビールってやっぱりイタリアっ てワインのイメージがあるのでワインって考える方がほとんど だと思うのですけども、ワインの酸味もあるし美味しいもの が多いので、食べ物を合わせてどう上手くビールを造るのか というのが皆さん上手に造られているので、その酸味の出し方もワインの国であるからこそ出来るワイ ン樽でビールを寝かしたりだとか、そういう面白い造り方をして酸味を出すっていうことをやっている醸 造所が最近多々出てますね。
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【橋本】ビールって自由度が凄い高い。 何使ってもいい。 世界的に は副原料を大量に使ってもいいっていうので、ベルギービー ルでは当たり前にサクランボとか使ってたりとか、ぶどうを 使っているワインを使っているものとかもあると思うのですけ ど、この前ちょっと飲んでていて考えていたことが、杉山さ んが今入れているイタリアのビールで麦汁にぶどうを漬け込 んで、ぶどうの菌で醗酵させたっていうビールがあるのです よね。それって、ワインとビールの境はどこなのかとか、たと え ば ア ッ プ ル な ん と か ビ ー ル っ て あ っ た と き に 、 麦 汁入りシ ードルっていうニュアンスだとどうなのかとか、ビールとその境 目っていうのをカテゴライズ的にどういうふうに。。。
【 沖 】それって非常に面白くて、ブルワーズアソシエーションとかい ろんなとろこが今言っているのだけど、ビールという言い方を してなくて、もうちょっと広く捉える概念として FMB って言う。 FMB って知ってますか?ファーメンテッド・モルト・ビバレッジっ て こ と な の ね 。 ビ ー ル じ ゃ な い フ ァ ー メ ン テ ッド ・ モ ル ト ・ ビ バ レッジっていう言い方をするのね。
【橋本】面白いですね。
【 沖 】そう。これで捉えると基本的にはフルーツエールとかスパイス が入っていたりとかハーブが入っていてもいいわけさ。 基本 モルトで醗酵させているからっていう。そういうぐらいクラフト ビールってのはゆるく考えていいんじゃないですか?
【橋本】ビールっぽいですよね。自由度があって、気軽であって、 ひとつのビールの側面っぽいな。自由さっていうか、もっ とフォーカスさせてムーブメントになっていけばいいかな という気がします。
>>> ビールの輸入方法と劣化
【杉山】必ず自分で醸造所に行って飲んで決めるっていうやり方で やってます。ビールって凄い人柄が出るものだと私は思って いるので、醸造責任者のかたとかを見ると、この人だからこういうビールを造っているのだとわかるので、なるべく人柄で あったり、もちろん造っている場所もそうなんですけど、そう いうところを見てから輸入を決めるというやりかたでやってい ます。
【 沖 】 僕は基本的に劣化の大きな要因は 3 つだと思っていて「揺れ 」「 ひかり 」「 温度 」 で す ね 。一 番 、大 卸 使 っ て 酒 販 店使って流通させて出るのが「温度」ですね。 最近高い ワインが流通するようになって冷蔵設備を持っている酒販店 さん、大卸が多いんですけども、ビールは基本的に単価が 安くて重くて安いものなのでビールは冷蔵庫に入れない。ものすごく熱劣化を受ける。あと業務用の酒販店さんがトラックで運ぶときに光劣化を受ける。 今、輸入物のクラフトビー ルをこれから流行らそうと思ったら、大卸と酒販店さんに頑張ってもらわないとダメだと 。 ハブ 機能 を 持 つ で あろう酒販店さんと大卸が頑張れば、もっと爆発的に増えるはずです。
【菅原】沖さんが言われる輸入元としての劣化の方法はその 3 つで すね。 揺れとかは輸入は無理で、距離が長いってのと、あ と皆さん信じられないかもしれないけどマラッカ海峡らへんと か普通に海賊が現れるので、船を揺らして波を立てて海賊 の小さな船が寄れないようにするんですよ。そういうことをし ていると、めっちゃ傾くんですよね。 揺れるなってほうが無 理なので、結局そこは防げないなと思ってます。あと 2 つ の理由は沖さんが言われていたことと、造ってる側の中では よく言うオキシデーションとインフェクションってやつで、酸化 と雑菌が繁殖して酸っぱくなったりとか、あきらかにそういう ものは造る側の問題と輸入元の問題とがいくつかあるの かなと思っています。
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