みなさま、様々な理由でクラフトビールをお飲みになっているか と思うのですが、クラフトビールを飲む理由ってなんでしょうか? 作り手の顔が見えることや、酒場で生まれるコミュニケーション、 単に味わいが好きだから、などなど色々な理由があってクラフト ビールを飲んでいることでしょう。個人的には理由というほど大仰 なことではないのですが、クラフトビールの1番の魅力は味わいの 幅がとにかく広く、シチュエーションや一緒に味わうお料理によっ て合わせるビールを選べることだと思っています。大手ビールメー カーさんが作るようなスッキリとしたラガーから、口が窄まるよう な酸っぱいビール、真っ黒でアルコール度数がものすごく高いビー ル、まるでウィスキーのようなビールなどなど、とにかく味わいの 幅が広く、それは自由に選べるという魅力に直結しているのではな いでしょうか。
もちろんビール以外のお酒にもある程度の味わいの幅があること は否定しません。ちょっと調べてみたら真っ黒な日本酒も限定では あるものの発売されたことがあるようで、びっくりしました。とは いえ、ビールほどの味わいや見た目の幅は持ち得ていないと思いま す。ではなぜビールはそれほどの味わいの多様性を持ち合わせてい るのでしょうか。
そもそも原料の加工方法が多彩なのです

ビールの4大原料は麦芽、ホップ、水、そして酵母です。ここ一 年間くらいこれら4大原料についてトランスポーターの記事で解説 してきましたので、もしバックナンバーがお手元にございましたら ぜひ読み返してみてください。
例えば麦芽について少しお話させていただくと、大麦(あるいは 小麦やオーツ麦も)を発芽させ乾燥させるという製造工程がありま す。このとき乾燥させる温度によって色の薄い麦芽から濃い麦芽ま で作り分けることができます。さらに一度出来上がった麦芽を再度 水に浸して高温で乾燥させることで糖質をカラメル化させたカラメ ル麦芽や、高温で焙煎した黒麦芽、麦芽を燻製したラオホ麦芽な ど、さらに多彩な加工によって様々な麦芽を生み出しています。
ビール醸造においては、これらの麦芽を1種類だけ使うのではなく 複数種類組み合わせることでビールの土台となる味わいを作りま す。加えてホップにも様々な種類、そして加工方法があります。収 穫されたままのホップをそのまま使用するフレッシュホップ、乾燥 させただけのホールホップ、乾燥させたホップを細かく粉砕しペ レット状に固めたペレットホップ、ビールに必要な成分だけを超臨 界帯抽出したホップエキストラクトなどなど。ホップの種類が多様、そして加工方法も多様で、すべての製品を数えるといったいい くつになるか想像もできません。
このように他のお酒と違い様々な原料の加工方法があるというの がビールの特徴であり、多様性を生み出す大きな要因の一つになっているのです。
HIROMI UETAKE 植竹 大海
埼玉県出身。東京の専門学校(バイオテクノロジー科)で、微生物や発酵について学ぶ。ビール会社に就職後、道内・国内でビール醸造所の立ち上げに関わる。2021年、家族で鶴居村に移住。2022年、茂雪裡小学校跡に『Brasserie Knot(ブラッスリー ノット)』を開業する。
