藤田こういちのベルギービール新書 10 -ビール と 人-
TRANSPORTER BEER MAGAZINE No.24(2019)
造り手の顔が見えるというのもクラフトビールの一つの楽しい要素ですよね。少なからずビールには造り手の想いやキャラクターが出るものだと思うので、今回はブラッセルズが輸入している醸造所に寄ってしまいますが、その人となりを少しご紹介できたらと思います。
” ファントム醸造所 ダニー プリニョン”
海外からはカリスマブリュワーのダニー、初めはちょっと人見知り、でも慣れてくると訪問もとても喜んでくれます。ところ狭しと動き回り、ビールや お菓子を出してくれたり、醸造設備の説明をしてく れます。が、自分のビールに関してはほとんど教え てくれません、質問してもうまくごまかされちゃい ます。でも仲良くなるとちょっとだけ教えてくれま す、笑。さながらお化け醸造所の魔法使いといった 感じですかね。。。
” ヴァプール醸造所 ジャン=ルイ”
輸入はしていませんが、水蒸気を使用した昔ながらの設備で醸造を続けるヴァプール醸造所のジャンルイ。僕が訪問した際は、俺は20 年以上この仕事をやっているが、(マッシングの最中)こうしてビールと向き合っている時が一番幸せなんだと言っていま した。彼が作るビールは唯一無二、絶対に真似でき ないでしょう。
” グラゼントールン醸造所 ジェフ&ディルク”
ジェフの見た目はもはや仙人。醸造学校の講師や書 籍の執筆など博識で、ビールに関する知識、こだわ りは相当なものです。そしてよく喋る。反対にディ ルクはジェフがいることもあってか、黙々と作業を します。あるブリュワーに聞いた話ですが、ジェフ は人のビールのことを悪く言わないそうです。これ は素晴らしいビールだ!でもねとその後にひと言、 改善点や意見など言うらしいのですが、なんともジェ フっぽいなあと。
” ブラッセルズビアプロジェクト オリビエ& セバスチャン”
はじめはガレージでホームブリューから始めた 彼ら。知識もそうですが、そのクリエイティブで 前向きな仕事の仕方にいつも刺激をもらっています。 何よりオープンマインド。気は優しくて力持ちどち らかというと「静」なタイプのオリビエ、どんどん 前に出て行く「動」なセバスチャン、今後の展開も 楽しみです。
” デュポン醸造所 オリビエ デュデケール”
非常にストレートな真面目な性格のオリビエ、ほぼ 毎年訪れている自分にも丁寧にブリュワリーやビー ルのことを説明してくれます。最近は行く度に醸造 所が大きくなっています。印象に残っている言葉、 生産量が増えてもクオリティが第一、それができな くなるようなことは決してしない。セラーの中のビー ルはどんなに急ぎの注文が入っても、ビールがちゃ んと「できる」までは決して出荷しない。他にもいくつも彼のこだわりがありますが、全て美味しいビー ルを作るためのもの。
“ドクトルヴァンドゥコールナール醸造所 ロナルド メンゲリンク”
彼のビールの味はもちろんですが、そのネーミング センスにも惹かれます。たとえばLa Renaissance (ラルネッサンス)とか、Noblesse( 気高さ) とか。 ロナルドさん曰く、寝る前にふと思いつくんだよと のこと。また長い醸造所の名前は訳すと、「麦の穂 の娘」の意味。その昔カール皇帝がワインよりもビー ルが好きだと言ったという伝説に基づいた名前なの ですが、彼曰く、なんてことはないただの「ビール」 という意味だよと。あまり多くを語らないのも彼の 美学なのかもしれません。
” グーズリーティルカン ピエール ティルカン”
はじめて訪問した時には、ブレンダリーがとても綺 麗で、清潔で驚きました。生産量が追いつかずどん どん拡大していますが、それでもバレルやタンクが 理路整然と並べられその清潔さは変わりません。そ んなところからもわかるようにピエールはとても几 帳面。書類やメール一つとってもその丁寧さがわか ります。一緒に食事をした際に骨が多いうさぎのグー ズ煮込みを上手に丁寧に食べていてすごいと思いま した。あとはベルギーなのにEnglish beer Festival を自ら主催しちゃうくらいなので、ちょっと変わっ ている?のかな、笑。
” ブロウジ醸造所 ピエール=アレックス”
あるビアフェスであった時は「アイノウユー、わは は、わはは」と肩をポンポンと叩いてくれ、醸造所 へ訪問した時もとても喜んでくれました。コラボビー ルの話を聞いた時も、ヒルファームステッドのショー ンが来た時はたくさんホップを入れようとするから、 ノーノーそんなに入れないでよ!と言ったんだよ! ワハハと。今度はレストランで一緒にご飯を食べよ う!と、どこまでも優しい、田舎のお父さんのよう な感じ。でもメールは苦手なようで?全て奥様が対 応。だからこそ彼と話すのは貴重な体験です。
” ホフテンドルマール醸造所 ジェフ&ドリー兄弟”
もともと農家のホフテンドルマールは弟のジェフが ブリュワーでお兄さんのドリーがファーマーです。 兄弟で性格が違うのはよくありますが、ジェフはア メリカを中心に他の国のビールをとてもよく勉強し ていて、ミードなども作ったりしています。見た目 も結構イマドキな感じ。お兄ちゃんのドリーは素朴 な感じで、大きな馬を扱ったり、ホップを作ったり していますが、最近は醸造の手伝いもしているよう です。彼らを見ているとビールが農産物であることを感じます。
” サンフーヤン醸造所 アレクシ ブリオル”
ベルギーのベストブリュワーにも選ばれたこともあ るアレクシ。彼がビールについて話す時と、ビール を造っている時はいつもこちらがたじろいでしまう ほどの真剣な眼差し、でも一旦そこを離れるととて もチャーミングな性格で、一度ランチをご一緒した 時にすごい大きなステーキを食べていてびっくり! 笑
” アベイデロック醸造所 ナタリー・ジョージ”
いつもこの辺りはレストランがないからごめんねと ビールとパンと地元のチーズなどで迎えてくれるナ タリー、それが僕らにとってはご馳走です。ジョー ジはいつも側で静かにナタリーを優しく見守ってい る感じ。いつもにこやかで、ビールにもその優しさ が滲み出ているような柔らかさ。ビールにはナチュ ラルなものしか使わない、バランスも大切ね。アイ ライクビア!と、グラスを傾けます。
藤田 孝一
Koichi Fujita
セゾンデュポンなど数多くのベルギー ビールを輸入するブラッセルズ株式会社 取締役
【Facebook】 https://www.facebook.com/brussels.jp/
【Beer Bar BRUSSELS】 http://www.brussels.co.jp/
【輸入部オンラインカタログ】 https://www.brussels-import.com/
その他の記事
-
植竹的視点 – “コラボレーションの定義” –
-
植竹的視点 -“ホップの香味について再検証”-
-
植竹的視点 -“ポスト・ホップ”を探せ-
-
植竹的視点 – “クラフトビールの定義” –
-
植竹的視点 Season2 -麦酒と書いてビールと読む。ビールは麦のお酒。-
-
植竹的視点 Season2 -ホップ製品進化論-
-
植竹的視点 Season2 -ブルワーってどんな仕事?-
-
植竹的視点 Season2 -もうすぐ工事着工です-
-
植竹的視点 -“クラフト” はどこまでサイエンスに歩み寄れるか-
-
植竹的視点 -クラフトビールの価格について再検証-
-
植竹的視点 -「一年が経過してみて」-
-
植竹的視点 -「表現型としてのビール作り それに至る思想」-
-
植竹的視点 -「足るを知れば今日より明日は ちょっとイイ日になる」-
-
植竹的視点 -「試される大地からの挑戦」-
-
植竹的視点 -「綺麗なビールとはなんぞや? 再考クリアネス」-
-
植竹的視点 -「地ビールはクラフトビールへと進化し、 そして再び地ビールに回帰する、かも?」-
-
植竹的視点 – 「切っても切れない水とビールの関係性」-
-
植竹的視点 season2 -トロントからの現地リポート-
-
植竹的視点 season2 -改めて感じるブランディングの重要性-
-
植竹的視点 Season2 -もしかすると “ビールを作るのは難しい” という時代は終わったのかもしれない-
-
植竹的視点 Season2 -日本に帰ってきました-
-
植竹的視点 Season2 -醸造設備についてのアレコレ-
-
植竹的視点 Season2 -絶対に忘れちゃいけないのは、ビールは酵母が作るということ-
-
AMERICAN BEER COLUMN #1 スーパーマーケット編
-
AMERICAN BEER COLUMN #6 -「どうなる?アメリカクラフトビール2017」-
-
AMERICAN BEER COLUMN #7 -「アメリカ西海岸ビールのススメ」-
-
AMERICAN BEER COLUMN #8 -ビールの入れ物の話-
-
AMERICAN BEER COLUMN #9 -アメリカビール片手にアメリカ式BBQのすすめ-
-
AMERICAN BEER COLUMN #10 -時代は缶ビール!<缶ビールの裏話編>-
-
AMERICAN BEER COLUMN #11 -クラフトなレストラン-
-
AMERICAN BEER COLUMN #12 -アメリカンフードトラック-
-
AMERICAN BEER COLUMN #13 -アメリカ式BBQ伝授編-
-
AMERICAN BEER COLUMN #14 -『Meet the Brewer』には参加してみよう!編-
-
AMERICAN BEER COLUMN #15 -アメリカのブリュワリーを日本から応援しよう!編-
-
AMERICAN BEER COLUMN #16 -アメリカで流行中!りんごのお酒「サイダー」に注目!編-
-
AMERICAN BEER COLUMN #17
-
AMERICAN BEER COLUMN #18 -年明けからHazy に埋もれよう!-
-
AMERICAN BEER COLUMN #19 -「アメリカ最先端を楽しむ」編-
-
AMERICAN BEER COLUMN #20 -「アメリカのブリュワリーの今」編-
-
AMERICAN BEER COLUMN #2 -クラフトの競争編-
-
AMERICAN BEER COLUMN #3 「アメリ『缶』クラフトビール」
-
AMERICAN BEER COLUMN #4 「アメリカ式クラフトビールイベント事情」
-
AMERICAN BEER COLUMN #5「休日スタイル」
-
藤田こういちのベルギービール新書1 -ベルギービール、トラディショナルとクラフトの波-
-
藤田こういちのベルギービール新書 2 -ALL AROUND SAISON セゾンビールのホント?のところ-
-
藤田こういちのベルギービール新書 3 -「BXL Beer festレビュー」新たな一歩-
-
藤田こういちのベルギービール新書 4 -地味なビールの話 Forward to the Basic-
-
藤田こういちのベルギービール新書 5 -(ベルギービールの)真骨頂ランビックとその未来-
-
藤田こういちのベルギービール新書 6 -今だから、トラピストビール-
-
藤田こういちのベルギービール新書 7 -ベルギー出張 珍道中? 【前編】-
-
藤田こういちのベルギービール新書 8 -ベルギー出張 珍道中? 【後編】-
-
AMERICAN BEER COLUMN #21 -「アメリカの今・どうなるコロナ禍での生活」編-
-
AMERICAN BEER COLUMN #22 -「アメリカビール好きはすごくポジティブ!」編-
-
AMERICAN BEER COLUMN #23 -「ビール界の女子パワー」編-
-
AMERICAN BEER COLUMN #24 -「気分はアメリカ★ 夏とハードセルツァーが楽しみすぎる」編-
-
AMERICAN BEER COLUMN #25 -「チーズ作りの隠し味がビール?!」編-
-
AMERICAN BEER COLUMN #26 -「日本のスーパーがアメリカの品揃え?! キーワードは「種類」だ!」編-
-
藤田こういちのベルギービール新書 11 -ローカルの行方-
-
藤田こういちのベルギービール新書 9 -ベルギービールの賞味期限〜ボトルの美味しさ〜-
-
藤田こういちのベルギービール新書 12 -意識して飲むということ-
-
藤田こういちのベルギービール新書 13 -ビールは死なない-
-
加地争論 KACHI SOURON!! -第一回「作り手と売り手」-
-
Ryo’s EYE -From issue 15-
-
Ryo’s EYE -From issue 16-
-
加地争論 KACHI SOURON!! -第三回「IS THAT REAL JUDGEMENT?」-
-
加地争論 KACHI SOURON!! -第四回「Monster Beer Geeks」-
-
SUB CULTURE -思い立ったら旅にでよう-(From Issue14)
-
SUB CULTURE 思い立ったら旅にでよう -From issue 15-
-
SUB CULTURE 思い立ったら旅にでよう -From issue 16-
-
Ryo’s EYE -From issue 17-
-
SUB CULTURE 思い立ったら旅に出よう(海外編) -From issue 17-
-
SUB CULTURE 思い立ったら旅に出よう(国内編)-From issue 17-
-
Ryo’s EYE -From issue 18-
-
SUB CULTURE 思い立ったら旅に出よう -From issue 18-
-
Ryo’s EYE -From issue 19-
-
SUB CULTURE 思い立ったら旅に出よう -From issue 19-
-
SUB CULTURE 思い立ったら旅に出よう(海外編) -From issue 20-
-
SUB CULTURE 思い立ったら旅に出よう -From issue 21-
-
SUB CULTURE 思い立ったら旅に出よう -From issue 22-
-
SUB CULTURE 思い立ったら旅に出よう -From issue 23-
-
『クラフトビールを学ぶ旅』 -From issue 22-
-
ミッドナイトシャッフル -From issue 22-
-
『クラフトビールを学ぶ旅』 -From issue 23-
-
昼からBeer Talk!! #2 Edited by Europe -From issue 04-
-
『クラフトビールを学ぶ旅』 -From issue 24-
-
SUB CULTURE 思い立ったら旅に出よう -From issue 24-
-
昼からBEER TALK!! #3 Edited by Beer Pub -From issue 05-
-
『クラフトビールを学ぶ旅』-From issue 25-
-
B 〜美味しいビールが引き寄せる ローカルコミュニティとしての 大人の社交場〜 -From issue 28-
-
昼からBEER TALK!! -From issue 06-
-
“GO TO BRUSSEL” -ブリュッセルに行こう!-
-
New England Area Beer Trip -From issue 14-
-
BREWDOG HISTORY 10th Anniversary -クラフトビール界の革命児と言われたジェームズワットの10年の軌跡-
-
GO TO BELGIUM! -伝統と革新の国ベルギー!-
-
一人旅をしよう ソウル編
-
「そうだ!タンパに行こう」 -From issue 26-
-
北出食堂 -From issue 27-
-
「そうだ!ウエストコーストに行こう!」-From issue 27-
-
「そうだ!イギリスに行こう!」-From issue 28-
-
ヨーロッパ最前線
-
CBC & WBC -CRAFT BEER CONFERENCE & WORLD BEER CUP-
-
Beer Festival & BIJ Summary -From issue 13-
-
心赴くままにロンドンへ・・・前編
-
PORTLAND OREGON USA
-
PORTLAND OREGON USA -SOUR SOUR SOUR-
-
European NOW!! -“ヨーロッパの今”-
-
1 BEER × 1 FOOD
-
PORTLAND OREGON USA -DO YOU KNOW GROWLER?-
-
COEDO Craft Beer 1000 Labo
-
加地争論 KACHI SOURON!! -第二回「樽返却から見る常識・非常識」-
-
ベルギーに「インスパイア」されたビールとは?